碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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呼吸は奥深いものだった

2008年10月19日 | 本・新聞・雑誌・活字
北海道から戻る飛行機の中で読んだのは、『息の発見』(平凡社)。

『気の発見』をはじめとする五木寛之さんの「発見シリーズ」第4集だ。

人間の生命活動の基本である呼吸をめぐって、芥川賞作家であり禅僧でもある玄侑師と語り合っている。

まず、「息の力」を再確認する。生きることは肉体が息を吐いて吸ってという動作に他ならないからだ。その動作に意識を向けることで、たとえば風邪を撃退したり、上がったときにそれを抑える息の使い方が出来るようになったりする。

次にブッダが教える息に言及する。その教えは「息に気づきなさい、呼吸を大切にしなさい」という当たり前の教えなのだ。波が寄せてさっと引くとき、一瞬止まるようになる。そんな間合いで息を吸って吐くこと。

では、具体的にどんな呼吸法がいいのだろう。1日5分、自分が「息そのものになる」ように丁寧な息をすること。幼児のごとく、全身を柔軟にして空気を迎え入れることだという。

また、玄侑師が編み出した「喫水線呼吸法」も紹介される。自分の体を空っぽの容器とみなし、呼吸と共に水が入ってくるとイメージするのだ。面白い。

結局、「息の発見」とは、呼吸する楽しさを実感することであり、いのちへの気づきであることが分かる。それは、無理をせず、自然に生きることにも通じているようだ。

息の発見
五木 寛之,玄侑宗久
平凡社

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