碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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少し笑えて、すこし、しんみり

2008年10月08日 | 本・新聞・雑誌・活字
部屋を出たら、鈴虫の鳴き声がやけに近く、大きく聞こえる。なんと家の中、玄関にいた。靴と靴の間で、一生懸命鳴いている。まあ、そのままにしておこう。

それはともかく、タレントのアズマックスこと、東貴博さんが書いた小説『ニセ坊ちゃん』(幻冬舎)が出た。 

我が家では、中学生の息子が大ファンで、ニッポン放送「東貴博のヤンピース」もよく聴いている。

その息子にあげようと思って手にしたこの本だが、意外や、一気に読んでしまった。

ひとことで言えば、現在タレントとして活躍する著者が、コメディアンだった父・東八郎との思い出を小説にしたものだ。

この本で描かれている東八郎は、どんなに忙しくても必ず子どもたちの朝食を作る。そして、叱るときは真剣勝負だ。

しかし、「コメディアンの息子」にも辛いことはある。コメディアンなのだから当然なのに、周囲の子どもたちから「バカなことをやっているオヤジ」と言われてしまうのだ。アズマ少年には、それが悔しい。

「本当は、パパはすごいんだぞ」ということを、何とかみんなに分からせようとして、結構とんでもないことを次々と仕出かしてしまう。

アズマックス、まさか「ホームレス中学生」を狙ってはいないだろうな。それは無理(笑)。

気楽に読める、浅草を舞台にした少年の成長物語であり、昭和の家族小説だ。少し笑えて、すこし、しんみり。って、鈴虫か。

ニセ坊ちゃん
東 貴博
幻冬舎

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