碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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テレビになにが可能か

2008年10月10日 | テレビ・ラジオ・メディア
雑誌『日経エンタテインメント!』の取材を受ける。12月号(11月4日発売)の特集「エンタ界 数字の新常識55」だそうだ。

その中の「テレビ編」に入れる、「テレビ業界で押さえておくべき数字」というのがリクエスト。

うーん、数字かあ。思いつくまま、いくつか挙げてみた。

・関東エリアの視聴率サンプル家庭、600。
・民放の数、127。
・地方局の自主制作率、10%。
・キー局のゴールデンタイム(午後7~10時)における
 制作会社の関与、70%。
・デジタル化完全移行の2011年に
 残ると予想されているアナログテレビの数、5000万台 等々。

最後に、地上デジタル放送の話になったが、話せば話すほど、2011年7月にアナログ電波を止めるのは無理だよなあ、と思う。というか、「電波塔から電波を出す」という旧来の方法に固執すること自体に無理があるよなあ、と更に思った。

取材が終わって、早稲田大学へ。

早大キャリアセンター主催の就職講座で講演。職種研究としてディレクター・プロデューサーについて話した。

毎年この時期、早稲田に呼ばれるのだが、もう10年になる。この10年で、テレビを取り巻く環境も、テレビ界も、かなり変化してきた。そんな変化と、逆に変わらないもの、変わってはならないもの、その両方を話の中に織り込んだつもりだ。

早稲田の学生諸君は、いつも熱心に聴いてくれるので、話していて熱が入る。講演終了後も、会場ロビーで、学生たちに囲まれて、ミニ座談会となった。本気でテレビを目指す人にとって、何かしらヒントになれば嬉しい。

講演の最後に、参考図書に触れたが、ちょうど10月7日に発売されたばかりの朝日文庫『お前はただの現在にすぎない~テレビになにが可能か』を紹介できたのはよかった。

著者は、1970年に日本初の番組制作会社、テレビマンユニオンを創立したコア・メンバーである、萩元晴彦・村木良彦・今野勉の3氏だ。

当時TBSにいた彼らが、いわゆる「TBS闘争」を経験する中で著した、テレビマンのバイブルのような本である。たぶん、ある年齢以上のテレビ屋で、これを読んでない人はモグリだろう。長い間、絶版のままだったが、ユニオンOBの石井信平さんの尽力で、朝日文庫で復刊された。これは慶事。

「テレビになにが可能か」を真剣に考え抜いた大先輩たちの生々しい言葉に、再度、耳を傾けてみたい。

お前はただの現在にすぎない テレビになにが可能か (朝日文庫 む 13-1)
萩元 晴彦,村木 良彦,今野 勉
朝日新聞出版

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