碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

“変わらない風景”のおかげで生まれた物語

2008年10月15日 | 本・新聞・雑誌・活字
人と会う約束があって、銀座に出た。

かつて存在しなかったブランドの店がいくつも並んでいるが、私には関係ない。

伊東屋で来年の手帳の中身を買い、教文館の本屋さんで何冊かを入手する。そんな、何十年前と“同じコース”、“同じ風景”に、少しほっとした。

東京の“変わらない風景”の一つに、昭和33年に完成した東京タワーがある。

近刊の『東京タワー物語』(日本出版社)は、誕生50周年を迎える東京タワーを題材にした、16篇のエッセイ集だ。

たとえば、開高健さんはその眺望を「永遠感覚」と呼び、沢木耕太郎さんは333㍍上空での電球交換作業を想像する。

また、川本三郎さんにとっては「都市の遺跡」であり、泉麻人さんは昭和30年代へのタイムスリップを語っている。

東京タワーという“変わらない風景”があるおかげで生まれた、まさに高層の競演である。

東京タワー物語
泉 麻人ほか
日本出版社

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