碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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天高く、学園祭の秋、奇想天外な幕末物語を読む

2008年10月13日 | 本・新聞・雑誌・活字
今日13日は「体育の日」で、世間はお休み。

清水義範さんの新作『幕末裏返史(ばくまつうらがえし)』(集英社)を読む。

パスティーシュ(広い意味のパロディ)小説の第一人者が描く、奇想天外な幕末物語だ。歴史的事実に基づいていながら、それに縛られない“虚実皮膜”の妙を堪能できる。

幕末の激動期に活躍する架空のフランス人、アナトール・シオンが主人公だ。幼い頃の体験から大の日本贔屓となったシオンは、後にアメリカへと渡り、ゴールドラッシュに沸くカリフォルニアでジョン万次郎と出会う。

ますます日本に興味を持った彼は上海で日本語を学び、念願の日本上陸を果たす。それはペリーが来航する直前のことだった。

物語はそこから一気に加速する。幕府の相談役となったシオンは貴重な海外事情を伝え、日本を欧米列強の支配から守るために奔走するのだ。

しかも吉田松陰、坂本龍馬、勝海舟、西郷隆盛など歴史上の有名人、スター級の人物とも遭遇し、彼らに大きな影響を与える。そして、ついには条約批准書交換のための使節団と共に咸臨丸でアメリカにまで行ってしまう。

歴史に「もしも」は許されないが、本書には思わず拍手したくなる“企み”がいくつも登場する。現在の日本の姿をも逆照射する、哄笑に満ちた快作だ。

幕末裏返史
清水 義範
集英社

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昨日、今日の二日間は、大学の学園祭。いつも歩いているキャンパスにテントがけの屋台が並び、まるで竹下通りみたいな混雑振りだ。まあ、大盛況でよかった。お客さんの少ない学園祭ほど寂しいものはないからね。

午前中、音楽プロデューサーの松任谷正隆さんの講演。開演前、楽屋へご挨拶に行った。

松任谷正隆さんとは、以前、ドラマの仕事でご一緒したことがある。松任谷さんにとっての“俳優”初体験だったはずだ。その後は、音楽の仕事はもちろん、大好きな番組「カーグラフィックTV」もずっと拝見してきた。

講演では、大学の学生たちが参加した、苗場からのユーミンの映像配信プロジェクトの話をされていたが、今も、どこか少年っぽさを持ち続けている松任谷さんだった。

午後は、審査員を務める「高校生メディアコンテンツ・グランプリ」の授賞式も行われた。

高校生が応募してくれた「ビデオ・ムービー」と「ケータイ・ムービー」、それぞれを審査する作業は、なかなか楽しかった。わずか数分のショートドラマだが、シナリオ、カット割り、撮影、編集などがいずれも巧みで、映像センスを感じさせる作品もあったし。

授賞式には、兵庫県や長野県など各地から高校生が来てくれて、嬉しかった。これからも、ぜひ創り続けて欲しいものだ。

●高校生メディアコンテンツグランプリ2008WEBサイト
 http://www.medicon-gp.com/index.php