自伝や回顧録を読む楽しさは、書き手がどう生きてきたのかを知るのはもちろん、背景となる“時代そのもの”に触れることだ。
津野海太郎さんの新著『おかしな時代~「ワンダーランド」と黒テントへの日々』(本の雑誌社)は、まさにそんな一冊。 『本の雑誌』で連載中も、毎月、楽しみに読んできた。
60年代のはじめ、早大生だった津野さんは、劇団「独立劇場」を仲間と立ち上げ、演劇の世界に入っていく。同時に、雑誌『新日本文学』で編集者としても歩み出す。
その結果、演劇人として、また編集者として、60~70年代のサブカルチャーを創出する一員となった。
この自伝の最大の魅力は、この時代を熱く生きる人々に著者を通じて出会えることだ。
演劇青年だった唐十郎、岸田森、草野大吾、蜷川幸雄。文学界では花田清輝、大西巨人。デザインの杉浦康平、若き日の池田満州夫。さらに編集者・小野二郎や装丁家の平野甲賀もいる。
津野さんは小野が興した晶文社に入社。ポール・ニザンや植草甚一の本を手がける。やがて幻の雑誌『ワンダーランド』を創刊するが、それが後の『宝島』へとつながっていく。
私が大学生になったのは1973年で、その頃初めて<晶文社の本>を目にした。あの犀のマークの背表紙。ぴちっとしたビニールのカバーの感触も忘れていない。
学生にとっては少し高めの値段だったが、植草さんの著作などを、バイト代で一冊、また一冊と手に入れていった。渋谷の古書店で、ときどき植草さん本人に遭遇してドキドキしたものだ。
津野さんは当時の自分を振り返って、「腰のすわらない(…)ごくあたりまえの混乱したガキのひとりだった」と書いている。自らを伝説化せず、時代を俯瞰することを忘れない冷静な目が、この傑作自伝を生んだのだと思う。
津野海太郎さんの新著『おかしな時代~「ワンダーランド」と黒テントへの日々』(本の雑誌社)は、まさにそんな一冊。 『本の雑誌』で連載中も、毎月、楽しみに読んできた。
60年代のはじめ、早大生だった津野さんは、劇団「独立劇場」を仲間と立ち上げ、演劇の世界に入っていく。同時に、雑誌『新日本文学』で編集者としても歩み出す。
その結果、演劇人として、また編集者として、60~70年代のサブカルチャーを創出する一員となった。
この自伝の最大の魅力は、この時代を熱く生きる人々に著者を通じて出会えることだ。
演劇青年だった唐十郎、岸田森、草野大吾、蜷川幸雄。文学界では花田清輝、大西巨人。デザインの杉浦康平、若き日の池田満州夫。さらに編集者・小野二郎や装丁家の平野甲賀もいる。
津野さんは小野が興した晶文社に入社。ポール・ニザンや植草甚一の本を手がける。やがて幻の雑誌『ワンダーランド』を創刊するが、それが後の『宝島』へとつながっていく。
私が大学生になったのは1973年で、その頃初めて<晶文社の本>を目にした。あの犀のマークの背表紙。ぴちっとしたビニールのカバーの感触も忘れていない。
学生にとっては少し高めの値段だったが、植草さんの著作などを、バイト代で一冊、また一冊と手に入れていった。渋谷の古書店で、ときどき植草さん本人に遭遇してドキドキしたものだ。
津野さんは当時の自分を振り返って、「腰のすわらない(…)ごくあたりまえの混乱したガキのひとりだった」と書いている。自らを伝説化せず、時代を俯瞰することを忘れない冷静な目が、この傑作自伝を生んだのだと思う。
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