碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

巨匠の知られざる素顔

2008年10月07日 | 本・新聞・雑誌・活字
人物ノンフィクションを読む。

中丸美繪さんの新作『オーケストラ、それは我なり~朝比奈隆四つの試練』(文藝春秋)だ。

『嬉遊曲、鳴りやまず~斎藤秀雄の生涯』の著者が挑んだ、指揮者・朝比奈隆の本格的評伝となれば、やはり読んでみたくなる。

93歳まで現役を貫いた執念はどこから生まれたのか。その名声に惑わされることなく、出自の影から音楽活動における葛藤や矛盾までが描かれている。

たくさんのエピソードが並んでいて、もちろん音楽家としての部分は興味深いが、個人的には、旧制の東京高等学校時代の仲間との交遊の話が好きだ。同級生たちが、当時の朝比奈を「愛すべヤツ」として語っているところがいい。

旧制高校から京都帝国大学法学部へ。芸大とか音大で育つのとは、かなり違った環境で青春を過ごしたわけで、朝比奈に与えた影響は大きいはずだ。

「ブルックナーの巨匠」の知られざる素顔を垣間見ることもできるこの本。生誕百年を記念する、よき一冊だと思う。

オーケストラ、それは我なり―朝比奈隆四つの試練
中丸 美繪
文藝春秋

このアイテムの詳細を見る



昨日、今日の2日間、日本広報協会主催の「広報映像セミナー」で講師を務める。

全国の市役所や区役所の広報担当者が集まり、広報番組などの広報映像に関して学ぶ、という講座だ。

毎年開催されているが、各地の皆さんと直接話が出来るのが楽しい。特に、意欲のある”若い衆”は応援したくなる。

行政の組織の中で、ややもすると「例年通り」「これまでを踏襲」で進んでしまいそうな場面も多いはず。ぜひ、参加した皆さんには。広報番組の既成概念にとらわれず、少しづつでいいから、トライを重ねていって欲しい。