「これでも詩かよ」第58番&ある晴れた日に第194回
朝夷奈峠を登って、熊野神社を通って麓まで戻ってくるあいだに、いろんなことが起こる。
春まだ浅い日の朝まだき、水たまりに忽然とあらわれて交尾し始めたカエルたち。
ある夏の日、大発生して狂ったように飛び回るルリシジミたち。
ある秋の夕べ、突然星月日と歌いはじめたサンコウチョウ。
そしてまだ松の内の今日の午後、いきなりバチバチと爆ぜるような音と共に、
枯れた樹木の梢から豌豆の鞘のようなものが降ってきた。
それらはバチバチバチバチと爆ぜながら、一斉に降ってくる。
どこまで行っても、私の頭めがけて、次々に降ってくる。
私は立ち止り、
その豌豆の鞘が立てる不思議な音を、それがなにかの啓示であるように耳を傾けていた。
なにゆえにかくまで時代は閉塞するか三橋美智也よ「夕焼けとんび」を歌え 蝶人