音楽千夜一夜第338回
お馴染み独membranの10枚組廉価版を聴きました。収められているのはモザールやシューマン、ベートーヴェン、グリーグのピアノ協奏曲とラベルやデオビュッシーの独奏曲です。
私はこのドイツ人が演奏するバッハが好きなのですが、残念ながらそれは含まれていません。
しかしギー選手はどの作曲家のどんな難曲に対しても同じように修道僧のように冷静に♪を音に淡々と転換していきます。演奏しながら熱することにあるアルゲリッチやグールドなどとは対極に立つ演奏ですが、かといってミケランジェリのように峻厳冷酷に裁断するわけでもない。
驚くほど客観的な演奏でありながら非人間的な味気なさに陥ることなく、温和で寛大な精神の持ち主が一人楽しくピアノに向かっている。そんな感じがいつもするのです。
誠実は凡庸に似たり枯尾花 蝶人