あまでうす日記

あなたのために毎日お届けする映画、本、音楽、短歌、俳句、狂歌、美術、ふぁっちょん、詩とエッセイの花束です。

井上ひさし著「井上ひさし短編中編小説集成第2巻」を読んで

2014-12-29 11:36:26 | Weblog


照る日曇る日第750回


 第1巻が「意外にも」面白かったので、2冊目に手が伸びました。

 ここに収録されているのは「モキンポット師の後始末」、「四一番の少年」、「イサムよりよろしく」、それに加えて「一二の微苦笑譚」「うちの可愛い一個連隊」という二本の単行本未収録作品です。

 いずれも著者の最初期の作品ばかりで、大阪弁を喋るユニークなカトリックの神父が若き主人公を温かく応援する大冒険ユーモア小説「モキンポット師の後始末」、著者の孤児院時代の思い出を描いた児童小説「四一番の少年」、そして著者の浅草修業時代の体験を題材にした「イサムよりよろしく」も著者のストーリーテリングの抜群の面白さに圧倒されます。

 しかしここでは、それらの八面六臂の大活躍の起点となった「一二の微苦笑譚」に注目しましょう。

 私はとりわけ9の「掻巻」、10の「老後の計画」、11の「突出計画」に大いなる感銘を受けましたが、これらの超短編こそは、彼のその後の文芸的進化を裏打ちし、強力に後押しした、未だ磨かれざるダイアモンドの原石だったのです。



知恵遅れ、自閉症、発達障害、様々に言い換えられしが変らぬものは四十の息子  蝶人
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