鎌倉ちょっと不思議な物語第348回&バガテル-そんな私のここだけの話op.208
午後2時半、親子3人でことし2回目の由比ヶ浜行きです。
今日も暑いことは暑いですが、昨日までの気狂いじみた猛暑ほどではない。
既にお盆の帰省が始まっているのか、お金持ちは海外旅行にでも出かけたのか、道路も駐車場も海岸も比較的空いていました。
前回は海が汚いうえに、沖合まで行っても生温くて閉口しましたが、今日は海水が割合綺麗で、冷たかった。
気を良くして漱石の「三四郎」の「先生」になった気持ちでどんどん泳いでいったのだが、ふと茨城沖ではジョーズがウヨウヨ散歩しているというニュースを思い出した。
しかし実際にジョーズが襲ってくるときには必ずジョン・ウイリアムズ作曲の例の♪ズンズンズンと不気味に振動するズンドコ節が鳴り響くはず。されどそのかたくそ悪い法華の太鼓はまだ聴こえてこないので、さあどうしたもんかと、境界線の手前で立ち泳ぎしていた、とまあ思いねえ。
するてえと、赤いイルカのようなライフボートにまたがったライフガードの可愛らしいおねいちゃんが、ニッコリ笑いながら「こんにちは!」と私に向かって挨拶するので、泳ぎながら手を振って連帯の挨拶を交わしたんだが、
後で考えてみると、この節背の立たない深さのところで泳ぐ若者なんか殆ど居ないから、たった一人太平洋の沖合めがけて驀進している死にぞこないのオッサンが心配で、遠くから鮫のように私の周囲をぐるぐる回っていたらしい。
ありがとうよ。
私はひと夏この海岸で、朝な夕な人命救助に当たるボランティアのおねいちゃんに対して敬意を表し、深甚なる感謝を捧げたことであった。
鎌倉の由比ヶ浜沖でこんにちは赤きイルカに乗りし少女よ 蝶人