照る日曇る日 第1976回
ノーベル賞をもらった詩人の最新作だというので手にとってみた。表題のアイリスとか、サンザシとか、菫とかひなげし、クローバー、ヒナギク、薔薇、朝顔、ユリなどさまざまな植物が登場して、それらについての詩的言語が並んでいるのだが、あまりアイリス感、サンザシ感はせず、むしろアイリス観、サンザシ観、あるいはその植物を喩としてこの世とあの世と神様と自分の運命についてなにかを語りたいらしい。
例えば、野生のアイリスの冒頭の4行は、
苦しみの果てに
扉があった。
わたしの話を最後まで聞いて、あなたが死と呼んでいるものを
わたしは憶えている。(後略)
というもので、訳者によれば、作者は2年の沈黙ののちにようやくこの2行を書くことができ、2カ月を要して全部を書き終えたというのだが、「ああそうでしたか。御苦労さまでした」としか応じられなかった。
いいおう彼女の話は最後まで聞いたが、私はあまり彼女のいい読者ではなさそうである。
1枚の写真が故人の面影を優しく伝える永訣の会 蝶人