あまでうす日記

あなたのために毎日お届けする映画、本、音楽、短歌、俳句、狂歌、美術、ふぁっちょん、詩とエッセイの花束です。

すべての言葉は通り過ぎてゆく 第13回

2014-09-15 10:27:22 | Weblog


西暦2014年文月蝶人狂言畸語輯&バガテル-そんな私のここだけの話op.184


よりによって相撲取りが「大和魂」とはけったくその悪い文句を吐くものだ。いまどき泉下の赤尾敏総裁だってンなダサイこたア云わないだろうに。7/31

土曜日に由比ヶ浜で20分泳いだ。今日は鳴り物はいっさいなくて、打ち寄せる波の音だかえが聞こえ、うれしいことにはただ一人の喫煙者も刺青者もいなかった。海水浴はこれでいいのだ。

富岡鉄斎の不滅のエロスに乾杯!

あのイチローがなんと本塁打を打って、悪戦苦闘している黒田に勝利を与える。偶には夢のような野球が実現するものだ。7/27

君が代」の「君」は天皇を指すのではなく、一般的な二人称である。「わが君は千代にましませ」と、はじめのほうだけ違ふ和歌が「古今集」にあるが、この場合の「わが君」も天皇といふ意味ではなかった。丸谷才一「裏声で歌へ君が代」7/28

無我夢中 夢中酔死。
あまりにも暑いというより熱いので、生きていることを忘れてしまう。7/22
 
東京新聞の歌壇に投稿した短歌が特選になったので、文化部長さんが祝福の図書カードを送ってくださった。豪儀だね、東京新聞。7/25

指揮者の仕事は、1)音楽を正しく始める、2)正しく終える、そして3)聴衆に感動を与えることだが、それが成功することは稀である。7/22

イスラエル軍のガザ侵攻と無差別攻撃には反対です。7/19

妙に偏屈でヒステリックでヒポコンデリーな噛みつき亀より、例えばNHK「あさイチ」のいつもガハハガハハと笑い飛ばしているアホ莫迦男のほうが疲れなくてすむ。

安倍君、君はもう授業に出なくても構わない。両手にバケツをぶら下げてずっと廊下で立っていなさい。

目には目を。歯には歯を。銃に銃を。愛には憎悪を。という戦いの論理は不毛である。7/21

国家には個人を。戦争には平和を。紛争には交渉を。拡大には縮小を。権威には無力を、現実には理想を。7/25

世の中がますます危険で平和が脅かされているというのが本当だとしても、おのれ自身がその平和をさらに脅かす危険な要因になってはいけない。やたらめったら膨張しておのれを大きく見せかけようとする醜いカエルのように。

ベネディクト・アンダーソンが、「近代国家は新聞と小説によって想像の共同体になった」と述べているが、古代日本の帝は和歌の詞華集によってこれと似たことを行った。丸谷才一「王朝和歌とモダニズム」

藤原定家は文学から文学を作った。「余情妖艶」の言葉だけが彼の世界になり、それ以外のすべては消えうせる。丸谷才一「吉野山はいづくぞ」

後鳥羽院ほど本質的に「しらべ」を口語脈にし、発想法をばある程度まで変化せしまた歌人は、明治大正の新詩人の間にもなかったのである。折口信夫「女房文学から隠者文学へ」

そんなに強い国にしたいのか。国が強くなればなるほど、個人はますます弱くなるのに。

ロリン・マゼールが肺炎で郷里で亡くなったという。あの巨大な犬小屋であるNHKホールを3階席の隅々まで鳴らし切ることのできた唯一の指揮者だった。亨年84歳。しばし黙祷。7/14

フルヴェン、クライバーの超一流の時代、ベーム、クレンペラー、バーンスタイン等の一流の時代、ムーティ、バレンボイム等の二流の時代が終わって、今やドダメルなどの三流、四流の演奏を無理矢理聴かされる時代になったという訳だ。

YouTubeで聴くのはもっぱらスカルラッティ、ラモー、バッハ、ハイドン、モーツアルト。そのほかはまったく食指が動かない。演奏家も若手はみな敬遠して前世紀の名人ばかり選んでいるのはなぜだろう。

秀歌は疲れる。凡歌がよろしい。

けったいな世界が転がってゆく。ローズ・ホーソーン

集団自衛権の行使容認は、憲法違反である。憲法第9条を一内閣の一閣議で蹂躙することは、憲法第98条と99条に違反する天下の大罪である。7/1
 
 なにゆえに私の記憶は失われてゆくキャベツの皮が一枚一枚はがれるように 蝶人

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本多猪四郎監督の「ゴジラ」をみて

2014-09-14 10:31:24 | Weblog


bowyow cine-archives vol.697


何十年ぶりに見たがさしたる感銘なし。演出はとろいし、クリーチャア(粒円谷特製の作り物ゴジラのこと)はチャチイし、なんでまあこんな駄作がヒットしたのかしら。

そもそもゴジラは水爆実験で深海から浮上してきたジュラ紀の古生物なのだから、いくら水爆の汚染や器質変化の影響を受けていたとしても、自衛隊の砲撃で皮膚が貫通されないはずがない。ましてや口から炎を吐くわけもない。

結局ゴジラを撃退したのは、酸素を絶つことで魚を無きものにする新兵器「オキシジェン・デストロイヤー」であったが、薬効は広大な海域に雲散霧消するから、ゴジラだけをやっつけることなどどできっこない。しかも決死隊は命綱をつけて潜っているから、ゴジラは本船のすぐ近くにいたことになる。

どう考えても子供だましのラストであった。

ただ2つだけ収穫があって、それはご存じ伊福部昭の音楽とヒロイン河内桃子の可憐さ。私見では後代になって持て囃されるようになった「かわいい」女優の元祖が彼女なのである。


 なにゆえにカワイカワイと持て囃す河内桃子が可愛かったから 蝶人
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吉田秀和放送収録本「モーツアルトその音楽と生涯2」を読んで

2014-09-13 09:36:52 | Weblog


照る日曇る日第727回

 吉田秀和翁の「名曲のたのしみ」のモーツアルト放送の収録編集版を読んでいると、故人の独特の風貌が声音と共に蘇って来て、ただただ懐かしい。

 本巻では1981年から82年にかけての放送分で、内容としては、モザールが1772年から1776年にかけて作曲したオペラ「ルーチョ・シッラ」「牧人の王」「恋の花作り」、ウイーン弦楽四重奏曲、初期のピノソナタ、ヴァイオリン協奏曲、木管のためのディヴェルティメント、ハフナー・セレナードなどを編年体で取り扱っている。

 私は吉田翁が本書で提示されたCDをかけながらゆっくりと頁を繰っていったが、それは今年の短くも激しく燃えた夏のこよなき伴侶であり思い出であった。

 改めて見直したのは、ここでもそのいくつかが紹介されている初期のオペラの素晴らしさと楽しさで、ふだん「フィガロ」や「魔笛」や「ドン・ジョバンニ」や「コシ」ばかり愛聴されているであろう全国の学友諸君には、ぜひご一聴をお勧めする次第である。

 それにしても鎌倉雪の下の吉田秀和邸が家も、庭も、玄関に続く細い路地もことごとく消え失せ、なんの変哲もない更地と化しているのはどうしたことだろう。

 いつか氏が、「大仏さんのお宅は残されたが小林秀雄さんのところはあっという間に跡形も無くなってしまった」とどこかに書かれていたが、まさかそれが我が身に及ぼうとは夢にも思われなかったろうに。

 ああ無情!

    なにゆえに跡形もなく消え失せた鎌倉雪の下吉田秀和邸 蝶人
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田中徳三監督の「眠狂四郎 殺法帖」&三隅研二監督の「眠狂四郎 勝負」をみて

2014-09-12 09:41:33 | Weblog


bowyow cine-archives vol.695&696

 この2作が市川雷蔵主演のシリーズの嚆矢となった記念すべき作品である。

 前者ではヒロインが可憐な中村玉緒、宿敵役になんと勝新太郎ならぬ若山富三郎が登場するのであるが、彼の武器は素手の拳法なので笑ってしまう。いくらブルースリー張りのアクションをみせても剣や飛道具にかなうわけがないではないか。

 それでも狂四郎の剣を両手で拝み取りするから大したものだが。

 後者では、影のある藤村志保と妖艶な久保菜穂子、可愛い高田美和が彩りを添えているが、注目すべきは芸達者な加藤嘉が勘定奉行役の老人役で出演していることで、大根役者の雷蔵のお株を完全に奪っている。それにしても同じような題材で同じような役者を使いながら田中徳三と三隅研二の演出力の違いには驚くほかない。


 なにゆえに一睡もできないのかセレトニン少なくなりし妻 蝶人
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リドリー・スコット監督の「テルマとルイーズ」をみて

2014-09-11 14:48:19 | Weblog


bowyow cine-archives vol.694


欲求不満気味の2人の主婦が、ストレスを発散しようと旅に出るが、ハメをはずしたテルマ(ジーナ・デイヴィス)をレイプしようとする男を、ルイーズ(スーザン・サランドン)が射殺してしまうところから始まる偶発的悲劇なり。

煮ても焼いても喰えない才人リドリー・スコットが、初めは処女の如く、終わりは脱兎の如き驚愕の終焉まで、親の因果が子に報うというある種の必然的連鎖律で因果を含めて描き尽くすのであったああ。。

それにしてもグランド・キャニオンの絶壁で、「もはや我らの生は燃焼したり、あとは野となれ山となれ」という絶望的悟りを、いともたやすく手に入れたものよ、という一抹の違和感はいまも残る。

そう、彼女たちも「真田風雲録」の主人公たちと同様に、てんでカッコよく死にたかったのだ。

しかしそういう流れでは、もっとカッコいい私の最愛のアメリカン・ニューシネマがあって、それは「バニシング・ポイント」という不朽の名作なのだった。

 
なにゆえにこのまま逝ってしまいたいと思うのかそれが生きとし生けるもののさがなので 蝶人

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パット・オコナー監督の「スウィート・ノベンバー」をみて

2014-09-10 14:18:29 | Weblog


bowyow cine-archives vol.693

 ここでもアメリカの広告業界の異常な内幕がちょっと紹介されているけれど、彼らのクライアントへのプレゼンテーションの技術たるや、東京五輪のアホ莫迦オ・モ・テ・ナ・シなどの生やさしいレベルではない。

 電通や博報堂などもあの手この手で肉薄プレゼンのノウハウを開拓しているが、まだまだ彼奴等のスコラ哲学理論武装と論理学プラス知情意一体の折伏システムは、本邦のような曖昧モコモコ星雲国では永遠に模倣されつくすことはないだろうし、そのほうが人間的で結構だと思います。

 クライアントに超絶セクスイープレゼンを敢行して、一敗地に塗れたキアーヌ・リーブス選手が、シャリーズ・セロンちゃんに優しく「いやして」もらいつつ、普通の真人間に復帰できたのは結構なことで、むかし小林秀雄が慰めてほしかったのはこういう可愛こチャンだったのだろう。



   なにゆえに蝶よ花よと褒めそやす生殖のほか生き甲斐なきを 蝶人
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ロバート・アルドリッチ監督の「アパッチ」をみて

2014-09-09 14:12:36 | Weblog


bowyow cine-archives vol.692


1954年ユナイテッド・アーティスト製作の先住民が主人公の西部劇なり。

アパッチの酋長ジェロニモが投降したあとを、バート・ランカスター演じるマサイが孤軍奮闘するという、フィクションのような実話の映画化である。

面白いのは、マサイが逃亡中にチェロキー族の男からモロコシの種をもらい、これを畑に植えること。

白人と同じような安定した農業生活に入っていくことで、あれほど白人憎しで凝り固まっていた武闘派が、突如武器を捨てて帰順するという成り行きは、いかにもご都合主義のようにみえるが、ある種の歴史的必然性を踏まえていたことが、唐突に映画が終わった後で分かってくるのである。


 なにゆえに錦織選手で大騒ぎするのかいいニュースがひとつもないので 蝶人

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マイケル・チミノ監督の「天国の門」をみて

2014-09-07 12:18:21 | Weblog

bowyow cine-archives vol.691

 1人の娼婦をめぐる2人の男の荒ぶる生と死が、西部の荒野の凄絶な死闘を背景に延々と描かれる。

 普通の監督は遠景で歴史の周縁を、近景で人間のドラマを、中景で物語の展開をはかるのだが、この監督はそういう常識や技法にいっさいとらわれることなくロングショットで抒情にふけったり、物語を前進することを放棄して人物のアップを延長したりするから、上映時間はどんどん伸びる。

 しかし「1890年代のワイオミング州ジョンソン郡における牧畜業者による移民虐殺事件」を題材にしながら、全体構成と編集に破綻し、形式や予定調和にとらわれない直情径行の、痙攣的な恋愛戦争民族差別に彩られたこの映画は、ときおりみずからが映画であることを忘れて、この世の埒外にさ迷い出る奇跡的な瞬間が散在するという芸術的な理由によって、他の尋常なる映画と決定的な違いを見せつけるのである。
 
 アメリカ映画の名門ユナイテッド・アーティストを倒産させたこの悪名高い映画は、いわば映画ならざる映画であり、映画が映画であることをやめて映画ならざるものへと逸脱することを最後の瞬間まで夢見ている奇体な映画なのである。


    なにゆえに結社などと粋がるの詩歌を革命する秘密結社ゆえ 蝶人
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ロバート・ゼメキス監督の「バック・トゥ・ザ・フューチャー1,2、3」をみて

2014-09-06 10:47:11 | Weblog


bowyow cine-archives vol.687、689、690

 自由に過去、現在、未来を行き来できたら、さぞや楽しかろうなあという空想をパンパンにふくらませたいかにもスピルバーグな映画で、マイケル・J・フォックスとクリストファー・ロイドが楽しそうに演じている。

 1985年製作の第1作はそんなアメリカンな陽気さが全編にみなぎっており、ヒューイ・ルイスの能天気な主題歌「愛の力」が流れるといかにも80年代な気分が横溢する。

 しかしこの映画のラストでマイケル・J・フォックスがデロリアンに乗って1985年のカリフォルニアの現在時に帰還した直後に、どうやって同じデロリアンに乗ったクリストファー・ロイドが到着できるのかよく分からないな。

 1989年に製作された続編はNYの映画館で12月にみたのだが、場内は家族連れで大騒ぎ。なるほどアメリカ人はこうやって娯楽映画を楽しむのかと内容よりそっちのほうに感心したのだが、じつはそのとき私は前篇をみていなかった。

 1955年から85年に帰還した主人公が今度は2015年に出発するというあらすじだけは分かったが、英語の聞き取りもほとんどできなかったので、ほとんどこの込み入った時間旅行のデテールを理解し楽しむことができなかったのは残念だった。

 第3作では1885年の過去へ向かうが西部のガンマンになったマイケル・J・フォックスが「クリント・イーストウッド」を名乗るのが面白い。

 ラストの蒸気機関車の中でのドタバタは手に汗握るが、いろいろ各方面に迷惑をかけるからあんまり時間旅行はしなうほうがベターよ、とかいうて幕を閉じるのは、「語るに落ちる、撮るに足らん」と言うべきか。

 30歳の若さでパーキンソン病を発病したマイケル・J・フォックスは、現在リドリー・スコットがプロデユースする素晴らしいTVドラマ「グッドワイフ」で、渋くコミカルな演技を披露している。

 私の結論としては、海外ドラマの「グッドワイフ」のほうが「バック・トゥ・ザ・フューチャー」より100層倍面白いです。

  なにゆえに「グッドワイフ」は面白いグッドなワイフはどこにもいないから 蝶人
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ゲイリー・ロス監督の「シービスケット」をみて

2014-09-05 06:38:00 | Weblog

bowyow cine-archives vol.686


「ビスケット」というからお菓子かと思ったら、あにはからんや馬の名前で、これはチビの名馬がデブ?の騎手を乗せて草原を、馬場を、そして世界中を駆け回る、夢のような人馬一体の愛情物語なのでした。

騎手が負傷し、愛馬も大けがをするのに、同病相哀れむコンビが最後のビッグレースに挑む話は作り話かと思っていたら、あにはからんやこれまた実話だそうで改めて感心いたしました。

ま、要するに、馬も「人間もけして投げたらあかんぜよ」ということやね。


なにゆえにこれほどの奇跡が起こったのか馬も人間もけして投げたらあかんぜよ 蝶人

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リュック・ベッソン監督の「レオン」をみて

2014-09-04 14:00:57 | Weblog


bowyow cine-archives vol.685

おふらんすがハルウッドへ行くと多少の違和と情緒が出るが、それがよりよい映画の醸成につながるかどうかは、おのずから別問題ということになる。

レオンという名の殺し屋が、マチルダという美少女を愛しながら死んでゆく感傷的なギャング映画を、私はあんまり感情移入できずに見物していたが、こういうある種のふぁっちょん性にてもなくやられてしまうひとも多いのだろう。

トップシーンでカメラはNYの道路のまんなかを走り、市内に入って映画の舞台のイタリアン・レストランまで飛びこんでゆくところが面白かったが、あれはヘリコプターの超低空撮影なのだろうか。


 なにゆえにまだ電話番号を覚えているわれをリストラせしその会社の 蝶人
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ガス・ヴァン・サント監督の「グッド・ウィル・ハンティング 旅立ち」をみて

2014-09-03 10:48:57 | Weblog


bowyow cine-archives vol.684



 孤児で継父に苛められるという不幸な生い立ちながら数学に驚天動地の天賦の才を持つという主人公(マット・デイモン=脚本も)という設定に、はじめから最後までついていけない。

 グロタンディークに扮するならともかく、マット・デイモンのアホずらの、どこが天才数学者なのだろう?

 心理学者ロビン・ウイリアムズのおかげで立ち直った主人公は、恋人を取り戻すべくカリフルニアに旅立つが、あれほど残酷な仕打ちをされた彼女が素直に彼の愛を受け入れるとも思えないアマすぎるラストであるぞよ。


 なにゆえにかくも涼しきものなるか隣の扇子からやってくる風 蝶人
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マルセル・プルースト著吉川一義訳「失われた時を求めて7 ゲルマントのほう」を読んで

2014-09-02 09:51:02 | Weblog

照る日曇る日第726回

 吉川一義氏による岩波文庫版の「失われた時を求めて」も、これでおよそ半分まで到達した。妙な文学趣味に偏することなく、意味が明確で、注釈が比類なく充実しているのが素晴らしい。今後は本シリーズが、この仏蘭西古典の名作の翻訳のスタンダードとなるだろう。

 さて本巻の大半は、主人公がついに招かれたゲルマント公爵夫人のサロンで、いつ果てるともなく繰り返されるエリート貴族たちの、お上品にして不毛なおしゃべりの数々である。

 そこではゲルマント家の先祖たちが、欧州の数代前の王家やら高貴な家柄の英雄や偉人、有名人たちと、どのようなつながりがあるかとかないかとか、一族の従兄妹や従姉弟たちの人物評、社交界のライバルたちへの悪口や批評が、機知とユーモアと隠された差別意識にくるまれて、これでもか、これでもかとプルーストの筆にのぼされる。

 超一流サロンの主役は、もちろん主人公の憧れの的であった、美しく、寸鉄人を刺す一言居士のゲルマント公爵夫人であるが、実際は不幸な家庭生活を余儀なくされているこの公爵夫妻が、まるで吉本興業に所属する人気者漫才コンビのように、かわるがわるボケとツッコミを演じるのが、西洋漫画のように面白い。

 世界中のスノッブたちから、羨望の眼であおぎみられた、おフランスの、おパリーの、ハイソサエティーの、いんてりげんちゃーの、おされな会話の空虚な実態を、プルーストは克明かつ執拗にあばきだすのである。

 そのうつろなモノクロームな虚妄の世界が、突然打ち破られるのは、本巻の最後にわが懐かしきスワンと主人公が偶然再会を果たすシーンである。 

 余命いくばくもないことを告白するスワンと、「んなこたあ、われ関せず焉」とばかりに情婦の待つ仮装舞踏会へ急ごうとするゲルマント公爵、そして「そんな一大事を耳にしてパーティなどに出かけてはいけないのではないか」、と激しく懊悩する公爵夫人の姿は、まるで歌舞伎の大詰めで見えを切る極彩色の花形役者のストップ・モーションのように、私たちの胸を直撃するのである。

追記 145p左注の「前面」は「全面」の誤り。至急直すべし。


 なにゆえに赤のドレスに黒い靴は駄目?ゲルマント公爵はふぁっちょん音痴 蝶人


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加藤典洋著「人類が永遠に続くのではないとしたら」を読んで~「これでも詩かよ」第98番

2014-09-01 10:15:57 | Weblog

照る日曇る日第725回&ある晴れた日に 第256回


人類が永遠に続くのではないとしたら、
私は来る朝毎に咲く朝顔を一輪ずつ丁寧に鑑賞し、
泣き叫ぶセミどもの声にもっと親身に耳を傾けるだろう。

人類が永遠に続くのではないとしたら、
私は愛する家族との食事をもっと豪華にして
毎日巨大な三浦西瓜を丸ごと食べるだろう。

人類が永遠に続くのではないとしたら、
あんたの会社の仕事も金儲けも東京五輪もSTAP細胞も、
マ、ぼちぼちでええんとちがいまっか?

人類が永遠に続くのではないとしたら、
原発再開も集団自衛権も慰安婦問題も尖閣、日米安保問題も
マ、たいがいにせえと思うんではないかいな。

そんなことより、

人類が永遠に続くのではないとしたら、
私は「葬式も墓地も無用」という遺言を
予定より早めに書かねばならないな。

人類が永遠に続くのではないとしたら、
私はラブカやカラスやゴキブリやアメーバたちが
せめて私たちの初期DNAの痕跡を残してくれるように祈るだろう。

人類が永遠に続くのではないとしたら、
私は一篇の讃歌を庭に埋めるだろう。
懐かしい人々と遠ざかる世界の思い出のために

しかし、

人類が永遠に続くのではないとしたら、
などという仮定自体がすでに呑気な父さんなのであり、
かなり前から私たちは、その既定事実の内奥を粛々と生きているのだった。


  なにゆえに人類は永遠に続かないのか己が一番偉いとうぬぼれているから 蝶人
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