こんな気持ちでいられたら・・・一病理医の日々と生き方考え方

人生あっという間、私の時間もあと少し。
よりよく生きるにはどうしたらいい?

病理解剖で思うこと (2/10) 死者の人生2

2016年04月06日 | 病理のこと、医療のこと、仕事のこと

(昨日の続き)亡くなった方の生活歴までわかっていなくても、病理解剖を行えば、ある程度の経験を積んだ病理医ならばそれだけでその方の病歴がわかってくる。時として、10年以上前にかかって、もうすっかり治っていたと思っていた病気が、再燃・再発しているのがわかって、それが死の原因だったりもする。でも、病歴というその方の人生の一部を垣間見ることができても、そのうちのなにがもっとも命に影響を与えたのかまで知るのは難しい。

人間の体は結局のところ1個で完結しているので、それぞれの臓器が相互に作用し合っている。心臓が止まったら全身の臓器に血が行き渡らなくなってすぐに死ぬが、心臓が止まる原因はたくさんある。心筋梗塞のように血管が詰まって心臓が止まるのであれば分かり易いが、ではなぜ癌で、老衰で心臓が止まるのか、突き詰めて考えるとよくわからない(もちろんいろんな疾患というか病態が原因となって、心臓の細胞が弱るのだが)。血管がつまって、そこへ至るプロセスは多岐にわたっていて、動脈硬化一辺倒の理解では説明がつかない。

人はそれぞれ、いろんなプロセスを辿り、結局は皆死に至る。だが、そのことについて詳しいことはわからないことだらけだ。ただ、病理解剖を行うと、一人の人間がなぜ亡くなったのかの一端を知ることはできる。

 それだけに病理解剖の診断は大変

にほんブログ村 病気ブログ 医者・医師へ