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涼しいを通り越し、肌寒い。霧雨のような細かい雨が強い風に乗って斜めに降ってくる。関東地方へまっすぐに進んできていた台風12号は本州の手前で、踵を返すかのように回れ右と太平洋上を北東に進んでいる。この台風12号、ドルフィン(DOLPHIN)と命名されているそうだが、まさしくそんな身軽さで動いているようにも見える。この冷たい空気は台風が東を通っているせいだということは素人の私でもわかる。
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複雑系(complex system)という言葉がある。ウィキペディアによれば、『相互に関連する複数の要因が合わさって全体としてなんらかの性質(あるいはそういった性質から導かれる振る舞い)を見せる系であって、しかしその全体としての挙動は個々の要因や部分からは明らかでないようなものをいう。』ということで、”風が吹けば桶屋が儲かる”と同じようなことだと思っているが、もう少し要因は多そうだ。ただ、具体的にどんなことを言うのだろうと思っていたが、この前到来した台風9号、10号の話がまさしくそうだった。
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最大級の2個の台風が九州を包囲し、大変なことになるだろうと備えていたところで、いずれも直撃を免れた。とくに台風10号は未曾有の勢力を持って九州に襲いかかると思われたが、台風9号が海水面をかき混ぜ、海面の温度を下げた結果、その発達が抑えられたらしい。自然というのはダイナミックな、それこそいくつもの要因が重なったのだと考えざるを得ない、ちっぽけな人間からみたら、想像もつかないほど大きな変化がおこったのだ。
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こういうのがまさに”複雑系”というのだろう。そして、すべては偶然ではなく、必然。台風9号の発生にしても、その前段階としての海水温の上昇があり、地球温暖化もある。地球温暖化の原因は未だよくわかっていないが、やがては明らかになっていくだろう。それらが明らかになったところで、われわれ人間にできることが何かなどわかりはしないが、生きている以上、何かをしなくてはいけない。生きている以上、何もしないということはあり得ない。私たち一人一人も複雑系の一部なのだから。全ては入れ子のようであり、どんなに小さな存在も存在する意義がある。
複雑系はマトリョーシカ
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