4月の病理学会で学会場に行ったのが、コロナ後初めてだった。あの時はハイブリッド形式で、座長をさせていただいたが、私自身の発表はウェブ上のポスターセッションだった。おとといの学会では出番があって、久しぶりに広い会場で聴衆を前に発表した。ハイブリッド形式なので聴衆の半分ぐらいはモニターの向こうにいるのだが、それでも5、60人ぐらいは会場にいてそれなりに楽しく話をすることができた。学会場に参加者が一堂に会するということが重要だと思った。
まずは、発表している時の会場の雰囲気が手に取るようにわかる。一生懸命聞いてくれる人がいる一方で、寝ている人もいる。そんなのをみて寝ている人を増やしてはいけないと、途中からギアを上げることもできる。
自分の席に戻って、近くに座っている顔見知りの研究者と小声で話すことも大切だ。時として大いに同意してくれ、時には失敗と思った発表を慰めてくれる。
一方、ウェブ発表では、そんなひそひそ話はできないし、誰が起きてようが、寝てようがわからない。何人の人が話を聞いているかなんて本当のところは全くわからない。ウェブ発表だと1人の発言に耳目が集中してしまう。このため、一言一言に注意が必要となる。ハイブリッド形式でも同じだが、なんとなくアドリブが許されるような気がする。
こんなことを考えていたら、政治家がなんであんな狭い会議室で密になって議論していたのかがよくわかった。彼らは臨機応変に発言を変えなくてはいけないし、ひそひそ話もしたいし、ヤジも飛ばしたい。オンラインになった日にはそんなことひとつもできなくなる。政治家にとっては公明正大はもっとも危険なことだ。考えてみたら、国会討論をオンラインで行う、というのを公約にあげた政党はなさそうだ。経費削減になって良さそうだが、次の総選挙ではそんなことを言い出す政党もあるんじゃないかと、ちょっと期待してみたい。
ところで、フェイスブックあらためメタでは、アバターがいっぱいいる仮想空間内でひそひそ話ができるようにするのだろうか。
バレバレか