新型コロナウイルス感染症(COVID19)対策のため、多くの病院が診療体制の見直しを迫られている。COVID19用の病床を確保する必要があり、救急対応が必要でない疾患の場合、受け入れができないことすらある。医局にいても、慢性疾患の患者さんに対して、今は入院できない、近所の病院を紹介しましょうか、といったようなことを電話で説明している臨床医の申し訳なさそうな声が聞こえてくる。
病理検体も減ってきた。不要では無いが、不急の検査が減っている。これは私のような専門医療施設に限った話でなく、どこの病院でも同じようなことが起きている。1年に1回、経過観察を行っているような細胞診、生検・・・たとえば、子宮頸がんのための細胞診、胃カメラ、大腸内視鏡などによる、癌や炎症性腸疾患のフォローアップさらには腎臓、肝臓といった臓器移植後の拒絶反応の検査のための生検、そういったものができなくなりつつある。どこかの病棟で院内感染が起きたら、人員配置の見直しを迫られ、病院そのものの機能が失われる。医療資源というものはもともと限られているわけで、その中で資源を配分していかなくてはいけない。医療崩壊とはこうして進行してくのだと目の当たりにする。
緊急事態宣言の目的は、人の移動・外出を極力減らし、人との人との接触を減らすことだ。朝のニュースで、長距離通勤の人を減らすことが効果的だと言う考えてみたら当たり前だが、当事者にしてみたらショッキングな話が出ていた。神奈川県から都内へと通勤している私はマイナス要因の一つだったといえる。
おとといの月曜を自宅勤務としたが、緊急事態宣言中はこれをもう少し増やす必要がありそうだ。診断業務そのものが減少している状態にもかかわらず、仕事に出て行くなどと言うのは愚の骨頂。それでもやらなくてはいけないことは今のところ山ほどあるので、状況に応じて家でできることを探していこうと思う。ただ、今日も緊急の生検があった。高度医療施設における常勤病理医は即応体制でいなくてはいけないと言うジレンマもある。
米国では病理医がCOVID19対応に動員され始めたということだ。日本でも私の知り合いの病理医が電話対応などの関連業務を行なっていると話していた。私もそのようなことにも対処できるように、情報を集めておかなくてはいけない。
二方面との戦いが始まっている