何をもたらす 安倍「規制改革」① 並ぶ大企業向けメニュー
「世界で一番企業が活動しやすい国」と、安倍晋三政権は企業のための「成長戦略」を進めています。その「突破口」と位置づけ、重視するのが規制緩和です。大企業にはおいしいメニューを並べますが、大企業のもうけが優先されるなかで国民生活は一層不安が増すばかりです。(矢守一英)
「規制改革こそ成長力を起爆させる突破口」。10月初旬、首相官邸で開かれた産業競争力会議。安倍首相は「成長戦略」の議論の最後に強調しました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3d/ad/5d04c37f04f38f674abf065a9e53112a.jpg)
都心で進められる大型再開発。大手不動産会社が超高層のオフィスビルを建設する=東京都港区・六本木
3層構造で進む
政府は、戦略地域単位、企業単位、全国単位の3層構造で規制・制度改革を進め、構造改革を加速させると説明します。
3層構造のうち戦略地域とは「国家戦略特区」です。特定の地域内で「過剰」「岩盤」と呼ぶ規制を取り払い、外国企業の誘致を促進し、企業が自由に活動できる環境を整えることが狙いです。
医療分野では、外国人医師の中で、診療できる医師の範囲を広げます。保険を使えない医療を組み合わせた「混合診療」の拡大も図るとしています。「混合診療」は国民皆保険制度を壊すものです。
建築基準法の容積率の緩和は、7年後のオリンピック開催をにらんだ東京圏の再開発を後押しするためのものです。三菱地所、三井不動産、森ビルなど大手不動産・開発会社が都心で計画する再開発(産業競争力会議に資料提出)にも応える形の露骨な大企業支援策です。容積率の緩和は高層マンションなどの乱立を招き、地域住民の住環境に対する影響が懸念されます。東京をはじめとした大都市圏への一層の一極集中は避けられません。
消えぬ解雇特区
解雇の自由化を狙った「解雇特区」のたくらみは、世論の批判の声に押されて断念に追い込まれました。しかし、全国規模で解雇の自由化を推進する動きは消えていません。
「国家戦略特区」を言いだしたのは慶応大学教授の竹中平蔵氏です。2001年に発足した小泉純一郎内閣で経済財政担当相などを歴任。郵政民営化をはじめ小泉「構造改革」を推進し、国民の暮らしの土台を掘り崩し、格差と貧困を広げた張本人でした。その竹中氏が「政府の役割は企業に自由を与える」と主張し、持ち出してきたのがこの「特区」構想です。
竹中氏は4月の産業競争力会議で「アベノミクス特区」を提案。政府側も即応し、6月14日に発表された日本再興戦略(「成長戦略」)に「国家戦略特区」が盛り込まれることになりました。
安倍政権は臨時国会で、「成長戦略」を臭体化した産業競争力強化法案や国家戦略特区法案などの早期成立をねらっています。
(つづく)(この連載は2回の予定です)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2013年11月8日付掲載
企業が開発を進めやすいように規制を緩和する。混合診療も拡大する。大企業にはうまみはあっても、国民の生活にはメリットはありません。
「世界で一番企業が活動しやすい国」と、安倍晋三政権は企業のための「成長戦略」を進めています。その「突破口」と位置づけ、重視するのが規制緩和です。大企業にはおいしいメニューを並べますが、大企業のもうけが優先されるなかで国民生活は一層不安が増すばかりです。(矢守一英)
「規制改革こそ成長力を起爆させる突破口」。10月初旬、首相官邸で開かれた産業競争力会議。安倍首相は「成長戦略」の議論の最後に強調しました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3d/ad/5d04c37f04f38f674abf065a9e53112a.jpg)
都心で進められる大型再開発。大手不動産会社が超高層のオフィスビルを建設する=東京都港区・六本木
3層構造で進む
政府は、戦略地域単位、企業単位、全国単位の3層構造で規制・制度改革を進め、構造改革を加速させると説明します。
3層構造のうち戦略地域とは「国家戦略特区」です。特定の地域内で「過剰」「岩盤」と呼ぶ規制を取り払い、外国企業の誘致を促進し、企業が自由に活動できる環境を整えることが狙いです。
医療分野では、外国人医師の中で、診療できる医師の範囲を広げます。保険を使えない医療を組み合わせた「混合診療」の拡大も図るとしています。「混合診療」は国民皆保険制度を壊すものです。
建築基準法の容積率の緩和は、7年後のオリンピック開催をにらんだ東京圏の再開発を後押しするためのものです。三菱地所、三井不動産、森ビルなど大手不動産・開発会社が都心で計画する再開発(産業競争力会議に資料提出)にも応える形の露骨な大企業支援策です。容積率の緩和は高層マンションなどの乱立を招き、地域住民の住環境に対する影響が懸念されます。東京をはじめとした大都市圏への一層の一極集中は避けられません。
消えぬ解雇特区
解雇の自由化を狙った「解雇特区」のたくらみは、世論の批判の声に押されて断念に追い込まれました。しかし、全国規模で解雇の自由化を推進する動きは消えていません。
「国家戦略特区」を言いだしたのは慶応大学教授の竹中平蔵氏です。2001年に発足した小泉純一郎内閣で経済財政担当相などを歴任。郵政民営化をはじめ小泉「構造改革」を推進し、国民の暮らしの土台を掘り崩し、格差と貧困を広げた張本人でした。その竹中氏が「政府の役割は企業に自由を与える」と主張し、持ち出してきたのがこの「特区」構想です。
竹中氏は4月の産業競争力会議で「アベノミクス特区」を提案。政府側も即応し、6月14日に発表された日本再興戦略(「成長戦略」)に「国家戦略特区」が盛り込まれることになりました。
安倍政権は臨時国会で、「成長戦略」を臭体化した産業競争力強化法案や国家戦略特区法案などの早期成立をねらっています。
(つづく)(この連載は2回の予定です)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2013年11月8日付掲載
企業が開発を進めやすいように規制を緩和する。混合診療も拡大する。大企業にはうまみはあっても、国民の生活にはメリットはありません。