軽自動車税の増税計画 TPP“入場料”で庶民の足に重税
安倍内閣が軽自動車の大増税を計画しています。総務省の「検討会」が報告書(10月31日)に明記しました。四輪車だけでなく、原付を含む二輪車も増税の方向を打ち出しています。政府・与党が年末に向けた税制改正で議論します。
この問題の発端は、消費税率の10%への引き上げを定めた消費税増税法(2012年)の中に、自動車関係諸税の「見直し」が盛り込まれたことです。これを受け、13年度「与党税制大綱」は、消費税10%の時点で自動車取得税を廃止し、その財源を関連税制の見直しで確保するとしました。
別の方向から増税を迫ったのはアメリカです。環太平洋連携協定(TPP)交渉にからんで、アメリカから軽自動車税は「非関税障壁」だとやり玉に挙げられました。軽自動車の優遇が、日本市場での米国車の販売を妨げているという、言いがかりとしか言いようのない要求です。
取得税廃止の財源を確保し、TPPの“入場料”としてアメリカの要求に応える―。「一石二鳥」とばかりに、軽自動車増税が急浮上しました。
四輪乗用車の軽自動車税は年7200円。自動車取得税と軽自動車税の税収は、ほぼ同規模。単純に計算すれば、自動車取得税廃止の穴を埋めるため、軽自動車税は1万4000円程度に倍加されることになります。
軽自動車税の前身は戦前からの「自転車税」です。自転車は当初はぜいたく品として課税され、広く普及した後も戦費調達のために課税され続けました。1954年、自転車税は荷車税と統合されて「自転車荷車税」となり、ようやく58年に廃止。それに代わって軽自動車税が新設されました。
排気量360ccエンジンの搭載から本格的に普及した軽四輪車は、その後、数度の規格変更を経て、660ccに拡大されました。現在は、自動車の全保有台数の4割近くを占めています。
軽自動車は、かつての自転車のように、国民にとって欠かせない「足」になっています。
日本自動車工業会の最新の「軽自動車の使用実態調査報告書」(12年3月)によると―。
①女性や高齢者の保有率が高く、保有世帯の年収も400万円未満が約4割を占める。
②所得が低い過疎地ほど保有率が高い。
③鉄道やバスなど公共交通機関の減少が軽自動車保有率を高めている。
④保有者の72%が「ほとんど毎日」使用し、約8割が通勤・通学や買い物に使っている。
⑤狭い道路が多い地域で保有率が高い。
軽自動車が庶民、地方の生活必需品になっている姿が浮き彫りになっています。
スズキの鈴木修会長は「軽自動車は所得の比較的少ない方々が生活や商売のために利用している」とのべ、軽自動車税の増税は「弱いものいじめと感じる」と語っています。軽自動車の増税は、低所得者ほど所得に対する負担割合が高い消費税の増税と同じで、まさに庶民いじめです。
関本秀治(せきもと・ひではる税理士)
【自動車重量税】
新規登録や車検のたびに重量に応じて課税される国税。道路特定財源として創設され、後に一般財源化。約4割を市町村に譲与。
【自動車取得税】
所得価格に応じて課税される都道府県税。道路特定財源として創設され、後に一般財源化。約7割を市町村に交付。
【自動車税】
排気量660cc超の自動車に毎年、排気量や貨物積載量に応じて課税される都道府県税。
【軽自動車税】
排気量660cc以下の四輪、原付を含む二輪に毎年課税される市町村税。
「しんぶん赤旗」日曜版 2013年11月24日付掲載
写真撮影で地方の海岸部や山間部に時々出かけますが、そこで走っている車はほとんどが軽自動車です。
都市部では普通車の方が圧倒的に多いので、軽自動車が自動車の全保有台数の4割というのは異質に感じられますが、全国的にはそうなんですね。
そんな庶民の足、仕事の足として使われている軽自動車の毎年毎年の税金を2倍にも負担を増やすなんて許されませんね。
安倍内閣が軽自動車の大増税を計画しています。総務省の「検討会」が報告書(10月31日)に明記しました。四輪車だけでなく、原付を含む二輪車も増税の方向を打ち出しています。政府・与党が年末に向けた税制改正で議論します。
この問題の発端は、消費税率の10%への引き上げを定めた消費税増税法(2012年)の中に、自動車関係諸税の「見直し」が盛り込まれたことです。これを受け、13年度「与党税制大綱」は、消費税10%の時点で自動車取得税を廃止し、その財源を関連税制の見直しで確保するとしました。
別の方向から増税を迫ったのはアメリカです。環太平洋連携協定(TPP)交渉にからんで、アメリカから軽自動車税は「非関税障壁」だとやり玉に挙げられました。軽自動車の優遇が、日本市場での米国車の販売を妨げているという、言いがかりとしか言いようのない要求です。
取得税廃止の財源を確保し、TPPの“入場料”としてアメリカの要求に応える―。「一石二鳥」とばかりに、軽自動車増税が急浮上しました。
四輪乗用車の軽自動車税は年7200円。自動車取得税と軽自動車税の税収は、ほぼ同規模。単純に計算すれば、自動車取得税廃止の穴を埋めるため、軽自動車税は1万4000円程度に倍加されることになります。
軽自動車税の前身は戦前からの「自転車税」です。自転車は当初はぜいたく品として課税され、広く普及した後も戦費調達のために課税され続けました。1954年、自転車税は荷車税と統合されて「自転車荷車税」となり、ようやく58年に廃止。それに代わって軽自動車税が新設されました。
排気量360ccエンジンの搭載から本格的に普及した軽四輪車は、その後、数度の規格変更を経て、660ccに拡大されました。現在は、自動車の全保有台数の4割近くを占めています。
軽自動車は、かつての自転車のように、国民にとって欠かせない「足」になっています。
日本自動車工業会の最新の「軽自動車の使用実態調査報告書」(12年3月)によると―。
①女性や高齢者の保有率が高く、保有世帯の年収も400万円未満が約4割を占める。
②所得が低い過疎地ほど保有率が高い。
③鉄道やバスなど公共交通機関の減少が軽自動車保有率を高めている。
④保有者の72%が「ほとんど毎日」使用し、約8割が通勤・通学や買い物に使っている。
⑤狭い道路が多い地域で保有率が高い。
軽自動車が庶民、地方の生活必需品になっている姿が浮き彫りになっています。
スズキの鈴木修会長は「軽自動車は所得の比較的少ない方々が生活や商売のために利用している」とのべ、軽自動車税の増税は「弱いものいじめと感じる」と語っています。軽自動車の増税は、低所得者ほど所得に対する負担割合が高い消費税の増税と同じで、まさに庶民いじめです。
関本秀治(せきもと・ひではる税理士)
【自動車重量税】
新規登録や車検のたびに重量に応じて課税される国税。道路特定財源として創設され、後に一般財源化。約4割を市町村に譲与。
【自動車取得税】
所得価格に応じて課税される都道府県税。道路特定財源として創設され、後に一般財源化。約7割を市町村に交付。
【自動車税】
排気量660cc超の自動車に毎年、排気量や貨物積載量に応じて課税される都道府県税。
【軽自動車税】
排気量660cc以下の四輪、原付を含む二輪に毎年課税される市町村税。
「しんぶん赤旗」日曜版 2013年11月24日付掲載
写真撮影で地方の海岸部や山間部に時々出かけますが、そこで走っている車はほとんどが軽自動車です。
都市部では普通車の方が圧倒的に多いので、軽自動車が自動車の全保有台数の4割というのは異質に感じられますが、全国的にはそうなんですね。
そんな庶民の足、仕事の足として使われている軽自動車の毎年毎年の税金を2倍にも負担を増やすなんて許されませんね。