ドイツ再生可能エネ普及へ 大企業に応分の負担を
ドイツの新政府樹立へ向けての連立交渉で、キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)と社会民主党(SPD)は再生可能エネルギー普及へ向けて、今まで普及コストの負担金をほとんど支払っていなかった大企業に応分の負担金を支払わせる方向で合意しました。独紙ハンデルズブラット6日付(電子版)などが報じたもので、アルトマイヤー環境相(CDU所属)とノルトラインウェストファーレン州のクラフト州首相(SPD所属)はその提案を欧州連合(EU)に示します。(片岡正明)
新政府樹立の交渉で合意と報道
風力や太陽光といった再生可能エネルギーの普及は、2022年までに原発の段階的閉鎖を実施しつつあるドイツ政府の最重点項目の一つです。

ベルリン郊外の太陽光発電所=9月26日(片岡正明撮影)
優先的買い取り
電力に占める再生可能エネルギーは、今年25%を超え、その電力を固定買い取り価格で地域の電力会社に優先的に買い取らせています。
この買い取り価格は欧州電力取引市場での価格より割高なため、「再生可能エネルギー法(EEG)」で、その差額を電力を消費する側に負担してもらう仕組みを作っていました。
これにより、中小企業や一般家庭の負担も増えてきました。
今回の提案は、「国際競争力をつけるため」という理由で負担が大幅に免除されていた大企業にも負担してもらおうというものです。
ハンデルズブラット紙によると、これまでは、年に100万キロワット時以上の電力を消費し、かつ電気代が諸経費の14%になる大企業の負担金は、13年度の場合、法定では1キロワット時ごとに5・3セント(約7円)ですが、0・05セントに抑えられていました。
これに該当する企業は11年に800社だったものが、12年には2000社、来年は2400社になるとされています。

ケルン郊外の風力発電所=4月(ロイター)
負担額は異なる
新提案での大企業の負担額は産業ごとに異なります。
最も電力を使用するアルミニウム精錬は1キロワット時負担が0・05セントと最低に抑えられる一方、炭鉱・鉱山、セメント、食品などの産業では、来年から中小企業、一般家庭と同様の6・24セントになる見込みです。
これまで大企業側は、再生可能エネルギーの負担を免れる一方で、市場価格が低下した電力を利用し莫大(ばくだい)な利益をあげてきました。
大企業の新たな負担額は総額で約50億ユーロ(約6650億円)になると伝えられています
中小企業・家庭の負担軽減が課題
【解説】
ドイツで、地球温暖化防止や脱原発の柱となる再生可能エネルギー普及を支えるのが2000年に施行された「再生可能エネルギー法(EEG)」です。風力や太陽光などによる電力を20年間、固定価格で地域の電力会社に、他の電力よりも優先して買い取りを義務付ける法律です。
買い取り価格と欧州電力取引市場との差額は、電力消費者に負担してもらう仕組みですが、「国際競争力をそがれる」と大企業側から圧力がかかり、大企業は負担を免れてきました。
一方で、中小企業や一般家庭の負担金は、14年には1キロワット時6・24セント(約8・3円)となります。3人を構成員とする標準家庭の場合、年間の電気代は1020ユーロ(約13万6000円)ですが、そのうち負担金は約40ユーロです。
再生可能エネルギーの発電量に占める割合は、EEGが施行された00年は6%でしたが、13年には25%に達し、20年には35%、50年には80%にする計画です。
現行制度のままでは、再生可能エネルギーの買い取り電力量が増え、さらに負担が増えます。
このため、この負担をどう減らすのかが課題となっていました。
また、原発に頼る南部の電力を脱原発後にどう保障するのかも課題です。これからの拡大が見込まれる洋上風力発電は北部に偏っており、高圧の送電線をつくり、北から南へ電力を供給する仕組みをつくることが計画されています。
「しんぶん赤旗」日刊紙 2013年11月8日付掲載
再生可能エネルギーの普及をとことん進めようとなると、電力需給者の負担だけではカバーできなくなります。
電力を大量に消費する大企業に、再生可能エネルギーの普及のために応分の負担を求めるってことが与野党を超えて合意されたってすごいことだと思います。
もちろん、再生可能エネルギーは普及が進めば進むほど、そのコストは下がってきます。
戦略的に再生可能エネルギーに取り組むことで、それが将来のビジネスチャンスになるのです。
ドイツの新政府樹立へ向けての連立交渉で、キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)と社会民主党(SPD)は再生可能エネルギー普及へ向けて、今まで普及コストの負担金をほとんど支払っていなかった大企業に応分の負担金を支払わせる方向で合意しました。独紙ハンデルズブラット6日付(電子版)などが報じたもので、アルトマイヤー環境相(CDU所属)とノルトラインウェストファーレン州のクラフト州首相(SPD所属)はその提案を欧州連合(EU)に示します。(片岡正明)
新政府樹立の交渉で合意と報道
風力や太陽光といった再生可能エネルギーの普及は、2022年までに原発の段階的閉鎖を実施しつつあるドイツ政府の最重点項目の一つです。

ベルリン郊外の太陽光発電所=9月26日(片岡正明撮影)
優先的買い取り
電力に占める再生可能エネルギーは、今年25%を超え、その電力を固定買い取り価格で地域の電力会社に優先的に買い取らせています。
この買い取り価格は欧州電力取引市場での価格より割高なため、「再生可能エネルギー法(EEG)」で、その差額を電力を消費する側に負担してもらう仕組みを作っていました。
これにより、中小企業や一般家庭の負担も増えてきました。
今回の提案は、「国際競争力をつけるため」という理由で負担が大幅に免除されていた大企業にも負担してもらおうというものです。
ハンデルズブラット紙によると、これまでは、年に100万キロワット時以上の電力を消費し、かつ電気代が諸経費の14%になる大企業の負担金は、13年度の場合、法定では1キロワット時ごとに5・3セント(約7円)ですが、0・05セントに抑えられていました。
これに該当する企業は11年に800社だったものが、12年には2000社、来年は2400社になるとされています。

ケルン郊外の風力発電所=4月(ロイター)
負担額は異なる
新提案での大企業の負担額は産業ごとに異なります。
最も電力を使用するアルミニウム精錬は1キロワット時負担が0・05セントと最低に抑えられる一方、炭鉱・鉱山、セメント、食品などの産業では、来年から中小企業、一般家庭と同様の6・24セントになる見込みです。
これまで大企業側は、再生可能エネルギーの負担を免れる一方で、市場価格が低下した電力を利用し莫大(ばくだい)な利益をあげてきました。
大企業の新たな負担額は総額で約50億ユーロ(約6650億円)になると伝えられています
中小企業・家庭の負担軽減が課題
【解説】
ドイツで、地球温暖化防止や脱原発の柱となる再生可能エネルギー普及を支えるのが2000年に施行された「再生可能エネルギー法(EEG)」です。風力や太陽光などによる電力を20年間、固定価格で地域の電力会社に、他の電力よりも優先して買い取りを義務付ける法律です。
買い取り価格と欧州電力取引市場との差額は、電力消費者に負担してもらう仕組みですが、「国際競争力をそがれる」と大企業側から圧力がかかり、大企業は負担を免れてきました。
一方で、中小企業や一般家庭の負担金は、14年には1キロワット時6・24セント(約8・3円)となります。3人を構成員とする標準家庭の場合、年間の電気代は1020ユーロ(約13万6000円)ですが、そのうち負担金は約40ユーロです。
再生可能エネルギーの発電量に占める割合は、EEGが施行された00年は6%でしたが、13年には25%に達し、20年には35%、50年には80%にする計画です。
現行制度のままでは、再生可能エネルギーの買い取り電力量が増え、さらに負担が増えます。
このため、この負担をどう減らすのかが課題となっていました。
また、原発に頼る南部の電力を脱原発後にどう保障するのかも課題です。これからの拡大が見込まれる洋上風力発電は北部に偏っており、高圧の送電線をつくり、北から南へ電力を供給する仕組みをつくることが計画されています。
「しんぶん赤旗」日刊紙 2013年11月8日付掲載
再生可能エネルギーの普及をとことん進めようとなると、電力需給者の負担だけではカバーできなくなります。
電力を大量に消費する大企業に、再生可能エネルギーの普及のために応分の負担を求めるってことが与野党を超えて合意されたってすごいことだと思います。
もちろん、再生可能エネルギーは普及が進めば進むほど、そのコストは下がってきます。
戦略的に再生可能エネルギーに取り組むことで、それが将来のビジネスチャンスになるのです。