温暖化抑制への逆流① 「常軌を逸した目標」
安倍晋三政権は、2020年の温室効果ガスの削減目標を、「05年比3・8%減」とすることを決定しました。しかしこれは、京都議定書の基準年の1990年からすると約3%増加する目標です。
「削減」どころか「増加」目標を掲げる安倍政権は、温暖化を抑制する世界の努力に逆行するものです。
世界の批判
安倍政権が決定した「増加目標」に対し、地球環境を守るために活動しているNGO(非政府組織)からは、「国際的な背信行為だ」との厳しい声があがっています。
ポーランドのワルシャワで開催中の第19回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP19)の会場では日本が新目標を決定した15日、気候変動問題に取り組むNGOの国際的ネットワークである気候行動ネットワーク(CAN)と、地球環境と大気汚染を考える全国市民会議(CASA)などが参加するNGO連合体の気候行動ネットワーク・ジャパン(CAN・J)、オーストラリアのNGOによる共同記者会見が開催されました。120人のメディアが会場を埋める中、日本政府に、交渉を後退させる国に授与される「化石賞」の特別賞が贈られました。
CASAは声明を発表し、「COP19の交渉に対する著しい妨害行為である」と厳しく日本政府を批判しました。
国際的NGOのCANも声明の中で、「日本の新目標は、常軌を逸したものである。これは、交渉に重大かつ否定的な影響を与えることになるだろう」としました。
日本政府の「増加目標」に対し、批判の声をあげたのは、NGOだけではありません。
28力国で構成される欧州連合(EU)は、日本の新目標が、従来の目標より相当程度引き下げられたことに「遺憾の意を示す」との声明を発表しました。イギリス政府も声明の中で、日本の削減目標の大幅な後退にたいし「深く失望した」としました。海面上昇による浸水被害など気候変動の悪影響を最も受ける国々のグループである小島しょ国連合(AOSIS)は、世界で5番目の温室効果ガス排出国である日本が、世界の努力に反して削減目標を大きく引き下げたことを批判。「島しょ国の人々を大きな危険にさらすものだ」と断じました。

COP19の会場となっているワルシャワのナショナルスタジアム=11月10日(ロイター)
財界の歓迎
一方、日本国内には安倍政権の「増加目標」を歓迎する団体が存在します。
経団連の米倉弘昌会長は、安倍政権が「増加目標」を決定する4日前の記者会見で「温室効果ガスの削減目標は、実現可能性、国民負担の妥当性、国際的公平性の観点を踏まえるとともに、成長戦略に基づいたエネルギー政策とも合致するものとする必要がある」と強調。「温暖化抑制」よりも「経済成長」を優先させ、政府の削減目標を後退させるよう圧力をかけていました。
経済同友会の長谷川閑史(やすちか)代表幹事は12日の記者会見で次のように発言していました。
「今の段階で、京都議定書採択時のコミットメント(約束)、あるいは鳩山由紀夫元首相が国連気候変動サミットで表明したコミットメントは無理であるということを伝えておくことには、それなりに意味があると思う」
民主党の鳩山政権時代に掲げた90年比25%削減の目標は、こうした財界の圧力の中で無残に葬り去られていったのです。(つづく)(この連載は4回の予定)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2013年11月20日付掲載
日本の1990年比で3%の排出量増加目標に対して、NGOや島しょの国々から批判の声が上がるのは当然ですが、EU諸国からも「遺憾の意」とか「深く失望」とかの声がでているのです。
日本政府は、財界の言いなりにならないで、もう少し世界の努力や声に目を向けてほしいものです。
安倍晋三政権は、2020年の温室効果ガスの削減目標を、「05年比3・8%減」とすることを決定しました。しかしこれは、京都議定書の基準年の1990年からすると約3%増加する目標です。
「削減」どころか「増加」目標を掲げる安倍政権は、温暖化を抑制する世界の努力に逆行するものです。
世界の批判
安倍政権が決定した「増加目標」に対し、地球環境を守るために活動しているNGO(非政府組織)からは、「国際的な背信行為だ」との厳しい声があがっています。
ポーランドのワルシャワで開催中の第19回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP19)の会場では日本が新目標を決定した15日、気候変動問題に取り組むNGOの国際的ネットワークである気候行動ネットワーク(CAN)と、地球環境と大気汚染を考える全国市民会議(CASA)などが参加するNGO連合体の気候行動ネットワーク・ジャパン(CAN・J)、オーストラリアのNGOによる共同記者会見が開催されました。120人のメディアが会場を埋める中、日本政府に、交渉を後退させる国に授与される「化石賞」の特別賞が贈られました。
CASAは声明を発表し、「COP19の交渉に対する著しい妨害行為である」と厳しく日本政府を批判しました。
国際的NGOのCANも声明の中で、「日本の新目標は、常軌を逸したものである。これは、交渉に重大かつ否定的な影響を与えることになるだろう」としました。
日本政府の「増加目標」に対し、批判の声をあげたのは、NGOだけではありません。
28力国で構成される欧州連合(EU)は、日本の新目標が、従来の目標より相当程度引き下げられたことに「遺憾の意を示す」との声明を発表しました。イギリス政府も声明の中で、日本の削減目標の大幅な後退にたいし「深く失望した」としました。海面上昇による浸水被害など気候変動の悪影響を最も受ける国々のグループである小島しょ国連合(AOSIS)は、世界で5番目の温室効果ガス排出国である日本が、世界の努力に反して削減目標を大きく引き下げたことを批判。「島しょ国の人々を大きな危険にさらすものだ」と断じました。

COP19の会場となっているワルシャワのナショナルスタジアム=11月10日(ロイター)
財界の歓迎
一方、日本国内には安倍政権の「増加目標」を歓迎する団体が存在します。
経団連の米倉弘昌会長は、安倍政権が「増加目標」を決定する4日前の記者会見で「温室効果ガスの削減目標は、実現可能性、国民負担の妥当性、国際的公平性の観点を踏まえるとともに、成長戦略に基づいたエネルギー政策とも合致するものとする必要がある」と強調。「温暖化抑制」よりも「経済成長」を優先させ、政府の削減目標を後退させるよう圧力をかけていました。
経済同友会の長谷川閑史(やすちか)代表幹事は12日の記者会見で次のように発言していました。
「今の段階で、京都議定書採択時のコミットメント(約束)、あるいは鳩山由紀夫元首相が国連気候変動サミットで表明したコミットメントは無理であるということを伝えておくことには、それなりに意味があると思う」
民主党の鳩山政権時代に掲げた90年比25%削減の目標は、こうした財界の圧力の中で無残に葬り去られていったのです。(つづく)(この連載は4回の予定)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2013年11月20日付掲載
日本の1990年比で3%の排出量増加目標に対して、NGOや島しょの国々から批判の声が上がるのは当然ですが、EU諸国からも「遺憾の意」とか「深く失望」とかの声がでているのです。
日本政府は、財界の言いなりにならないで、もう少し世界の努力や声に目を向けてほしいものです。