アベノミクスと日本経済③ 政策視点の転換が必要
東京工科大学教授 工藤昌宏さんに聞く
経済の停滞原因を見ないアベノミクスは空回りしています。「異次元の金融緩和」で日銀は毎月7兆円前後国債を購入し、世の中に投入したお金(マネタリーベース)は48%も増大しました。しかし世の中に出回っているお金(マネーストック)は平均2・9%増えただけです。
弊害も起こしています。最大の問題は財政危機の深刻化です。大量の国債を発行しました。累積債務の増大は国債価格を下落させ、長期金利の上昇圧力となります。国民負担の増大につながり、景気が後退することで、さらに累積債務が増大するという悪循環になりかねません。
株価しがみつき
いまやアベノミクスは株価維持にしがみつく道しか残っていません。金融緩和や財政支出の大盤振る舞いです。株価が上昇すれば国債価格が下落し、長期金利が上昇、景気は悪くなります。そうさせないために日本銀行に国債購入を続けさせるでしょう。そうすると日銀は信頼を失い、機能は低下します。
このままアベノミクス路線を続ければ雇用と所得の環境が悪化し国民生活はますます悪化します。
消費税増税の影響が加わり、国民生活と中小企業の営業を圧迫するでしょう。
販売も減少し、価格抑制のために企業は人件費などコストを削減。リストラがおこなわれるでしょう。
また、日本経済が外需の不安定さに振り回されます。内需が弱いために外需の影響力が強い構造になっています。しかしアメリカ経済に陰りが見られます。ヨーロッパも新興国市場もよくありません。
累積債務の増大は国民負担の増加につながります。国債価格の下落圧力が強まり、国債を抱える金融機関の財務も悪化するでしょう。アメリカのように財政赤字と貿易赤字の双子の赤字にどっぷりつかるでしょう。
消費税が8%に増税された1日の天神橋商店街=大阪市北区
内需の拡大こそ
経済停滞から脱出するためには再生産構造の安定が必要です。
まずは内需の拡大が不可欠です。雇用を安定させ、国民負担を軽減させる必要があります。医療、年金、介護を充実させ、セーフティーネット(安全網)を整備することも大切です。
同時に中小企業の育成も必要です。税制優遇や大企業によるいじめをなくすことなどです。雇用の7割を支える中小企業の動向が日本経済を左右します。
財政再建も重要です。福祉や社会保障を強くするためには、歳入、歳出の両面を見直し、安定的な財政をつくる必要があるからです。
何より必要なのは政策視点の転換です。たとえば「成長主義」から「安定主義」に変えることです。また企業の収益優先から、国民生活を重視する方向への転換も必要です。
輸出中心の発想は世界市場に振り回され、非常に不安定です。国内で循環構造に切り替え、経済の自律的・安定的発展を目指すことが必要です。
都市優先の考え方から地方優先の経済政策も必要です。こういうふうに本当の意味での構造改革をやらないと日本経済の再生はあり得ないと考えています。
(おわり)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2014年4月5日付掲載
同じお金を投入しようとするのなら、実経済に流通するお金の量を増やすことが肝要です。それには労働者の賃金をアップさせるのが一番の近道。そして社会保障を充実させて、一般国民が、病気や老後の心配をせずに消費にお金を使えるようにすることです。
日本経済にはそれだけの余力は有り余るほどあるのです。要はその活用方法、政策的なイニシアチブです。
東京工科大学教授 工藤昌宏さんに聞く
経済の停滞原因を見ないアベノミクスは空回りしています。「異次元の金融緩和」で日銀は毎月7兆円前後国債を購入し、世の中に投入したお金(マネタリーベース)は48%も増大しました。しかし世の中に出回っているお金(マネーストック)は平均2・9%増えただけです。
弊害も起こしています。最大の問題は財政危機の深刻化です。大量の国債を発行しました。累積債務の増大は国債価格を下落させ、長期金利の上昇圧力となります。国民負担の増大につながり、景気が後退することで、さらに累積債務が増大するという悪循環になりかねません。
株価しがみつき
いまやアベノミクスは株価維持にしがみつく道しか残っていません。金融緩和や財政支出の大盤振る舞いです。株価が上昇すれば国債価格が下落し、長期金利が上昇、景気は悪くなります。そうさせないために日本銀行に国債購入を続けさせるでしょう。そうすると日銀は信頼を失い、機能は低下します。
このままアベノミクス路線を続ければ雇用と所得の環境が悪化し国民生活はますます悪化します。
消費税増税の影響が加わり、国民生活と中小企業の営業を圧迫するでしょう。
販売も減少し、価格抑制のために企業は人件費などコストを削減。リストラがおこなわれるでしょう。
また、日本経済が外需の不安定さに振り回されます。内需が弱いために外需の影響力が強い構造になっています。しかしアメリカ経済に陰りが見られます。ヨーロッパも新興国市場もよくありません。
累積債務の増大は国民負担の増加につながります。国債価格の下落圧力が強まり、国債を抱える金融機関の財務も悪化するでしょう。アメリカのように財政赤字と貿易赤字の双子の赤字にどっぷりつかるでしょう。
消費税が8%に増税された1日の天神橋商店街=大阪市北区
内需の拡大こそ
経済停滞から脱出するためには再生産構造の安定が必要です。
まずは内需の拡大が不可欠です。雇用を安定させ、国民負担を軽減させる必要があります。医療、年金、介護を充実させ、セーフティーネット(安全網)を整備することも大切です。
同時に中小企業の育成も必要です。税制優遇や大企業によるいじめをなくすことなどです。雇用の7割を支える中小企業の動向が日本経済を左右します。
財政再建も重要です。福祉や社会保障を強くするためには、歳入、歳出の両面を見直し、安定的な財政をつくる必要があるからです。
何より必要なのは政策視点の転換です。たとえば「成長主義」から「安定主義」に変えることです。また企業の収益優先から、国民生活を重視する方向への転換も必要です。
輸出中心の発想は世界市場に振り回され、非常に不安定です。国内で循環構造に切り替え、経済の自律的・安定的発展を目指すことが必要です。
都市優先の考え方から地方優先の経済政策も必要です。こういうふうに本当の意味での構造改革をやらないと日本経済の再生はあり得ないと考えています。
(おわり)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2014年4月5日付掲載
同じお金を投入しようとするのなら、実経済に流通するお金の量を増やすことが肝要です。それには労働者の賃金をアップさせるのが一番の近道。そして社会保障を充実させて、一般国民が、病気や老後の心配をせずに消費にお金を使えるようにすることです。
日本経済にはそれだけの余力は有り余るほどあるのです。要はその活用方法、政策的なイニシアチブです。