きんちゃんのぷらっとドライブ&写真撮影

「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

検証 異次元緩和1年② 円安、大企業に為替差益

2014-04-10 19:35:51 | 経済・産業・中小企業対策など
検証 異次元緩和1年② 円安、大企業に為替差益

「異次元の金融緩和」によって、外国為替市場では円安が進みました。日銀が異次元緩和を決めた2013年4月4日、東京外国為替市場でーが1195円90銭でしたが、約11カ月半後の5月22日には103円台に円安が進みました。今は102円台。12年末の安倍政権発足直前と比べると、20%以上の円安です。
円安は輸入物価の上昇を通じて国民の負担を増やし、景気回復の足を引っ張っています。灯油の価格は13年6月はじめの18リットル=1755円から上がり続け、今年4月はじめには1919円に。9%以上の値上がりです。石油製品価格の上昇により電気・ガス料金も上昇しました。
内閣府が発表している「景気ウオッチャー調査」でも毎月、「円安に伴う原材料の値上がりがあるが、製品価格への転嫁が難しい。経営的に困難」(13年9月、東海地方の紙製造業者)といった声があふれました。サービス業界でも「アベノミクス効果は全くみられない。原材料費が高騰し、非常に利幅が少なく苦しい」(13年7月、南関東地方のホテル)と悲鳴があがりました。




内需拡大せず
円安で輸入物価が高騰したことによって、2013年の日本の貿易赤字は11兆4745億円と過去最大になりました。赤字は3年連続です。以前なら、円安は価格面で輸出に有利に働くので、輸出を増やし、内需も拡大するはずでした。しかし、今、そのような効果はみられません。
日本の輸出をけん引してきた自動車産業をみると、13年の輸出額は10兆4150億円で、前年比12・9%増でした。しかし輸出台数は12年の584万3807台から581万7773台へと2万6034台も減りました。すでに生産拠点を海外に移しているので、円安になっても生産台数を増やすことはありません。



東京港に停泊する貨物船

海外生産移行
日銀が3月に行った金融政策決定会合も、輸出の現状評価を下方修正しました。黒田東彦(はるひご)総裁自身、「わが国の製造業の現地調達を伴う海外生産シフトといった構造的な要因が何がしか作用している可能性がある」と語っています。
3月31日に経済産業省が発表した「海外事業活動基本調査」によると、1992年度に26兆円だった海外現地法人(製造業)の売上高は、2012年度には98・4兆円と3・8倍に増えました。同時に、海外現地法人(同)から日本への逆輸入は12年度、11兆3508億円で、日本の輸入総額の17%にもなります。
輸出大企業は、輸出量を増やさず、為替差益で大もうけしています。トヨタ自動車の場合、対ドルで為替レートが1円下がると、営業利益は為替差益で年間約400億円増えるといわれます。14年3月期、トヨタの営業利益は6年ぶりに過去最高を更新する見通しです。
結局、「異次元の金融緩和」による円安は、輸入物価の高騰を通じて国民に被害をもたらす一方、実体経済を活性化させる役割をまったく果たしません。大もうけするのは多国籍企業だけです。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2014年4月9日付掲載


かつて輸出立国と言われてきた日本ですが、海外生産を進めてきた結果、円安になっても大企業は輸出を増やすことはありません。円安で石油や穀物の価格が上昇。国民生活はたまったもんじゃありません。