きんちゃんのぷらっとドライブ&写真撮影

「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

検証 異次元緩和1年① 投機あおる 国民には物価高

2014-04-09 22:44:39 | 経済・産業・中小企業対策など
検証 異次元緩和1年① 投機あおる 国民には物価高

日本銀行による「異次元の金融緩和」は、安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」の「第一の矢」として昨年4月に開始されました。それから1年。大企業は株高の恩恵を受ける一方、国民には物価高がずしりとのしかかります。巨額の長期国債を買い込んだ日銀はかつてないリスクを抱え込んでいます。
(山田俊英)

「異次元の金融緩和」とは、日銀が市場に流すお金の量を、2015年までの2年間で2倍に増やし、物価上昇率を年2%に引き上げる政策です。物価が継続して下がる「デフレ」を克服して、景気を回復するという触れ込みでした。
この政策を始めるにあたって黒田東彦(はるひご)日銀総裁が強調したのは「期待を抜本的に変える」ことでした。「物価が2%程度上がっていくと見込まれた場合には投資の需要も増えてくる」(13年4月4日記者会見)と強調しました。

株や不動産に
「期待を変える」政策であおられたのは金融投機でした。13年4月はじめに1万2000円台だった日経平均株価は5月中旬には1万5000円台に上昇しました。安倍政権発足時の12年末と比べると、約1・5倍の急上昇でした。
特に動いたのは海外の投機マネーです。13年、海外投資家による株の買い越し(売った株を上回る買った株の金額)は15兆円以上にのぼりました。
株価の上昇は株式を保有する大企業や富裕層の資産を増やします。野村証券の試算によると、金融機関を除く上場企業(3月期決算)が保有する株式の14年3月末の含み益は1年前に比べて33・8%増の15兆5600億円。リーマン・ショック前を上回りました。
異次元緩和で日銀は国債だけでなく「上場不動産投資信託(Jリート)」の買い入れも増やしました。Jリートは投資家からお金を集めて不動産に投資する金融商品です。日銀が大量に買い入れれば、値上がりは確実。投機筋は当然、買い入れを増やします。
Jリートは、東京証券取引所の指数でこの1年半で1・5倍に上昇しました。日本不動産研究所によると、13年のJリートによる物件取得価格の総額は2兆1380億円にのぼり、12年の3倍に増えました。「リーマン・ショック前のいわゆるファンドバブル最盛期の水準に近い」と同研究所の報告書は指摘しています。
株などで資産を増やした富裕層はデパートで数十万円から百万円以上もする腕時計や装飾品を買い、高額商品の売り上げを増やしました。



2013年、1000億円を超える大型不動産取引で話題を呼んだソニーシティ大崎ビル=東京都品川区



減る基本賃金
しかし、「バズーカ砲」にたとえられた異次元緩和も実体経済の回復に効果をあげませんでした。国内総生産(GDP)成長率は安倍政権発足以来、下がる一方です。岩田規久男日銀副総裁自身、実体経済について「効果を発揮するのはいよいよこれから」(2月6日宮崎県での講演)と現状で効果があがっていないことを認めています。
消費者物価(生鮮食品を除く総合指数)は13年6月以来、前年同月比で毎月上昇。今年2月には1・3%の上昇でした。その一方、労働者の基本賃金(所定内給与)は今年2月まで前年同月比で23カ月連続減。賃金が下がる中で物価だけが上がっています。日銀が3カ月ごとに行っている「生活意識アンケート調査」でも8割の人が「物価上昇は困ったことだ」と答えています。
その上、4月1日には消費税率が8%に引き上げられました。異次元緩和は富裕層や大企業、投機筋に多大な恩恵をもたらす一方、庶民に与えたのは負担増だけでした。
(つづく)(4回連載の予定です)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2014年4月8日付掲載


物価上昇のもくろみは成功しているのですが、それに続くとされた賃金の上昇は全くかなっていません。
かつての池田内閣当時の「所得倍増計画」にともなう狂乱物価とは、似て非なるものとなっています。
潤ったのは大資産家と大企業だけです。