きんちゃんのぷらっとドライブ&写真撮影

「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

検証 異次元緩和1年③ 増えない中小企業融資

2014-04-11 22:26:35 | 経済・産業・中小企業対策など
検証 異次元緩和1年③ 増えない中小企業融資

「『日銀がいくらマネタリーベース(市場に供給するお金の量)を増やしても、金融機関による貸出残高は増加していない』とのご指摘をいただくことがあります」。日銀の岩田規久男副総裁は2月に宮崎県で行った講演でこう認め、なぜ貸し出しが増えないかを言い訳しました。
1年前、「異次元の金融緩和」を始めたとき、黒田東彦(はるひご)総裁は「日銀が長期国債を大量に買い入れる結果として、これまで長期国債の運用を行っていた投資家や金融機関が貸し出しを増やしていくことが期待されます」(2013年4月12日の講演)と語っていました。
実際はどうだったでしょうか。銀行の貸出残高は昨年3月末から12月末までわずか1・5%増えただけ。日本企業の99%以上を占める中小企業向けもたった1・3%増。三菱UFJ、みずほ、三井住友の三大銀行グループの中小企業向け貸し出しは金額、比率ともに減っています。
13年3月期と9月期の三大グループの決算資料で中小企業等向け貸し出しを合計すると、貸出残高は103兆3000億円から102兆8000億円に減少。国内貸し出しに占める中小企業等向けの比率は60・4%から59・8%に低下しました。中小企業等向け貸出比率が60%を割ったのは05年に三大銀行体制が発足して以来、初めてです。




たまる預金高
なぜ増えないか。岩田副総裁は「企業の現預金保有残高は約230兆円と、国内総生産(GDP)の50%近くに達している」ためだと説明しています。大企業が巨額の内部留保をため込んでいるので、日銀が市場に大量のお金を供給しても借り手がなく、銀行の貸し出しは増えないということを日銀副総裁自ら認めてしまいました。「異次元緩和」で貸し出しが増え、経済活動が活発になるという触れ込みは完全に破綻しています。
日銀が供給したお金はどこへ行ったのでしょうか。「異次元緩和」開始前の2013年3月を基準に日銀の統計を見てみると、マネタリーベースは14年2月に1・4倍になっています。これに対して、市中に出回っているお金の総額を示すマネーストックはわずか1・03倍とほぼ横ばいです。増えたのは、金融機関が日銀に預けているお金、日銀当座預金の残高です。同期間1・97倍になりました。
日銀が供給したお金は結局、銀行など金融機関のもとにたまっているだけです。



東京都大田区内の町工場

円滑化法失効
一方、政府は中小企業に冷たい姿勢を示しつつあります。13年3月末には中小企業金融円滑化法を打ち切りました。同法は、中小企業が返済猶予や金利引き下げなど貸し付け条件の変更を申し出た場合、金融機関が応じるよう努力することを定めた法律です。08年のリーマン・ショック後、中小企業支援のために定められました。
金融庁は同法打ち切り後も、金融機関に対し、返済条件の変更に応じるよう指導してきましたが、この方針の転換を検討し始めています。政府の規制改革会議では中小企業の転廃業を促す方針が議論されています。安倍政権は「成長戦略」の名で中小企業の淘汰(とうた)に乗り出そうとしています。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2014年4月10日付掲載


日銀が市場に資金を投入しても、その資金は実経済には回らない。国内生産を担っている中小企業への融資が滞っている。メガバンクと大企業は、マネーゲームに集中。