検証TPP「大筋合意」は何を示したか② 国民も国会も無視
環太平洋連携協定(TPP)の「大筋合意」が10月5日に発表された後、交渉の「舞台裏」が相次いで報じられています。多くは、交渉者の“手腕”を派手に描いています。しかし、そこに浮かび上がるのは、国民を無視してTPPへ暴走する日本政府の異常な姿勢です。
“公約”を翻して
2012年12月の衆議院選挙で、自民党は、TPP交渉参加を懸念する農村部に「ウソつかない。TPP断固反対。プレない。」というポスターを張り出しました。しかし、政権復帰のわずか3カ月後の13年3月15日には、さっさと“公約”を翻し、「TPPは聖域なき関税撤廃を前提としない」と強弁して交渉参加を決定。安倍晋三首相は、「日本が同盟国である米国とともに、新しい経済圏をつくります」と打ち上げました。
TPP参加の事前協議で日本政府は、米国の承認を得る見返りに米国の要求を丸のみしました。輸入車認証手続きを簡素化する「輸入自動車特別取扱制度」(PHP)で年間販売台数の上限を拡大。日本郵政のかんぽ生命保険の新商品展開を凍結。それらに先立ち、BSE(牛海綿状脳症)対策の牛肉輸入規制を月齢20カ月から30カ月へ一方的に緩和していました。
その上、自動車と他の9分野で、長年の対日要求を協議する日米並行交渉に同意しました。交渉参加に先だって、高い“入場料”を支払ったのです。
「TPP断固反対」と書かれた自民党のポスター=山形県米沢市内
“お先棒担ぎ”に
日本の交渉正式参加は13年7月末。「年末までの大筋合意」が2年連続で流れて15年に入ると、年後半には米大統領選挙の候補者選びが本格化し、翌16年が大統領選挙の年になるため、交渉の「漂流」が意識され始めました。「最後の閣僚会合にしたい」と“駆け込み”を図った7月末、米ハワイでの閣僚会合でも「大筋合意」が見送られると、甘利明TPP担当相は「いろいろ過大な要求をしている。頭を冷やしていただかないと」とニュージーランドに八つ当たり。9月末~10月初め、米アトランタでの閣僚会合では、「ゲームをやめて誠実な対応で交渉しないと、妥結は難しくなる」と各国を督促。米国が重視するTPPの“お先棒担ぎ”を買って出た結果は、農林水産物交渉での大幅譲歩でした。
国会決議に違反
国会衆参農林水産委員会が13年4月にそれぞれ行った決議は、米、麦、牛・豚肉、乳製品、砂糖の農産物重要5項目を「除外または再協議」とし、交渉しないよう求めました。重要5項目の「聖域」が維持できないときには、交渉から撤退することも辞さないとしていました。その国会決議に反し、「大筋合意」で重要5項目の中で30%もの品目の関税撤廃を約束しておきながら、「交渉結果として最善のものとなった」(甘利TPP担当椙)と強弁。日本農業新聞が行った農政モニター調査(10月28日付)で、回答者の69%が「国会決議違反」としているのは当然です。
政府の異常な姿勢はさらに続きます。11月25日には、「総合的なTPP関連政策大綱」を決定。「大筋合意」の経緯や詳細を国会にさえ十分に説明しないまま、「対策」へ駆け込む構えです。来年の参議院選挙に向け、国民の懸念・不安を静めようとしています。しかし、TPPはまだ、署名も批准もされていず、発効してもいないのです。(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2015年12月9日付掲載
西部劇では、「インディアン嘘つかない」は有名なセリフ。自民党の場合は、「この顔が嘘をつく顔と思いますかと、嘘を言い」と、公約違反が常になっています。
だからといって、国会決議違反は許せません。
環太平洋連携協定(TPP)の「大筋合意」が10月5日に発表された後、交渉の「舞台裏」が相次いで報じられています。多くは、交渉者の“手腕”を派手に描いています。しかし、そこに浮かび上がるのは、国民を無視してTPPへ暴走する日本政府の異常な姿勢です。
“公約”を翻して
2012年12月の衆議院選挙で、自民党は、TPP交渉参加を懸念する農村部に「ウソつかない。TPP断固反対。プレない。」というポスターを張り出しました。しかし、政権復帰のわずか3カ月後の13年3月15日には、さっさと“公約”を翻し、「TPPは聖域なき関税撤廃を前提としない」と強弁して交渉参加を決定。安倍晋三首相は、「日本が同盟国である米国とともに、新しい経済圏をつくります」と打ち上げました。
TPP参加の事前協議で日本政府は、米国の承認を得る見返りに米国の要求を丸のみしました。輸入車認証手続きを簡素化する「輸入自動車特別取扱制度」(PHP)で年間販売台数の上限を拡大。日本郵政のかんぽ生命保険の新商品展開を凍結。それらに先立ち、BSE(牛海綿状脳症)対策の牛肉輸入規制を月齢20カ月から30カ月へ一方的に緩和していました。
その上、自動車と他の9分野で、長年の対日要求を協議する日米並行交渉に同意しました。交渉参加に先だって、高い“入場料”を支払ったのです。
「TPP断固反対」と書かれた自民党のポスター=山形県米沢市内
“お先棒担ぎ”に
日本の交渉正式参加は13年7月末。「年末までの大筋合意」が2年連続で流れて15年に入ると、年後半には米大統領選挙の候補者選びが本格化し、翌16年が大統領選挙の年になるため、交渉の「漂流」が意識され始めました。「最後の閣僚会合にしたい」と“駆け込み”を図った7月末、米ハワイでの閣僚会合でも「大筋合意」が見送られると、甘利明TPP担当相は「いろいろ過大な要求をしている。頭を冷やしていただかないと」とニュージーランドに八つ当たり。9月末~10月初め、米アトランタでの閣僚会合では、「ゲームをやめて誠実な対応で交渉しないと、妥結は難しくなる」と各国を督促。米国が重視するTPPの“お先棒担ぎ”を買って出た結果は、農林水産物交渉での大幅譲歩でした。
国会決議に違反
国会衆参農林水産委員会が13年4月にそれぞれ行った決議は、米、麦、牛・豚肉、乳製品、砂糖の農産物重要5項目を「除外または再協議」とし、交渉しないよう求めました。重要5項目の「聖域」が維持できないときには、交渉から撤退することも辞さないとしていました。その国会決議に反し、「大筋合意」で重要5項目の中で30%もの品目の関税撤廃を約束しておきながら、「交渉結果として最善のものとなった」(甘利TPP担当椙)と強弁。日本農業新聞が行った農政モニター調査(10月28日付)で、回答者の69%が「国会決議違反」としているのは当然です。
政府の異常な姿勢はさらに続きます。11月25日には、「総合的なTPP関連政策大綱」を決定。「大筋合意」の経緯や詳細を国会にさえ十分に説明しないまま、「対策」へ駆け込む構えです。来年の参議院選挙に向け、国民の懸念・不安を静めようとしています。しかし、TPPはまだ、署名も批准もされていず、発効してもいないのです。(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2015年12月9日付掲載
西部劇では、「インディアン嘘つかない」は有名なセリフ。自民党の場合は、「この顔が嘘をつく顔と思いますかと、嘘を言い」と、公約違反が常になっています。
だからといって、国会決議違反は許せません。