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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

検証TPP「大筋合意」は何を示したか② 国民も国会も無視

2015-12-18 19:54:09 | 経済・産業・中小企業対策など
検証TPP「大筋合意」は何を示したか② 国民も国会も無視

環太平洋連携協定(TPP)の「大筋合意」が10月5日に発表された後、交渉の「舞台裏」が相次いで報じられています。多くは、交渉者の“手腕”を派手に描いています。しかし、そこに浮かび上がるのは、国民を無視してTPPへ暴走する日本政府の異常な姿勢です。

“公約”を翻して
2012年12月の衆議院選挙で、自民党は、TPP交渉参加を懸念する農村部に「ウソつかない。TPP断固反対。プレない。」というポスターを張り出しました。しかし、政権復帰のわずか3カ月後の13年3月15日には、さっさと“公約”を翻し、「TPPは聖域なき関税撤廃を前提としない」と強弁して交渉参加を決定。安倍晋三首相は、「日本が同盟国である米国とともに、新しい経済圏をつくります」と打ち上げました。
TPP参加の事前協議で日本政府は、米国の承認を得る見返りに米国の要求を丸のみしました。輸入車認証手続きを簡素化する「輸入自動車特別取扱制度」(PHP)で年間販売台数の上限を拡大。日本郵政のかんぽ生命保険の新商品展開を凍結。それらに先立ち、BSE(牛海綿状脳症)対策の牛肉輸入規制を月齢20カ月から30カ月へ一方的に緩和していました。
その上、自動車と他の9分野で、長年の対日要求を協議する日米並行交渉に同意しました。交渉参加に先だって、高い“入場料”を支払ったのです。



「TPP断固反対」と書かれた自民党のポスター=山形県米沢市内

“お先棒担ぎ”に
日本の交渉正式参加は13年7月末。「年末までの大筋合意」が2年連続で流れて15年に入ると、年後半には米大統領選挙の候補者選びが本格化し、翌16年が大統領選挙の年になるため、交渉の「漂流」が意識され始めました。「最後の閣僚会合にしたい」と“駆け込み”を図った7月末、米ハワイでの閣僚会合でも「大筋合意」が見送られると、甘利明TPP担当相は「いろいろ過大な要求をしている。頭を冷やしていただかないと」とニュージーランドに八つ当たり。9月末~10月初め、米アトランタでの閣僚会合では、「ゲームをやめて誠実な対応で交渉しないと、妥結は難しくなる」と各国を督促。米国が重視するTPPの“お先棒担ぎ”を買って出た結果は、農林水産物交渉での大幅譲歩でした。

国会決議に違反

国会衆参農林水産委員会が13年4月にそれぞれ行った決議は、米、麦、牛・豚肉、乳製品、砂糖の農産物重要5項目を「除外または再協議」とし、交渉しないよう求めました。重要5項目の「聖域」が維持できないときには、交渉から撤退することも辞さないとしていました。その国会決議に反し、「大筋合意」で重要5項目の中で30%もの品目の関税撤廃を約束しておきながら、「交渉結果として最善のものとなった」(甘利TPP担当椙)と強弁。日本農業新聞が行った農政モニター調査(10月28日付)で、回答者の69%が「国会決議違反」としているのは当然です。
政府の異常な姿勢はさらに続きます。11月25日には、「総合的なTPP関連政策大綱」を決定。「大筋合意」の経緯や詳細を国会にさえ十分に説明しないまま、「対策」へ駆け込む構えです。来年の参議院選挙に向け、国民の懸念・不安を静めようとしています。しかし、TPPはまだ、署名も批准もされていず、発効してもいないのです。(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2015年12月9日付掲載


西部劇では、「インディアン嘘つかない」は有名なセリフ。自民党の場合は、「この顔が嘘をつく顔と思いますかと、嘘を言い」と、公約違反が常になっています。
だからといって、国会決議違反は許せません。
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検証TPP「大筋合意」は何を示したか① 史上最悪の「約束」

2015-12-18 19:37:08 | 経済・産業・中小企業対策など
検証TPP「大筋合意」は何を示したか① 史上最悪の「約束」

日米など12力国の環太平洋連携協定(TPP)交渉が「大筋合意」に至りました。安倍晋三政権は、その詳細を国会にも十分に説明しないまま、“対策”へ動きだしています。11月25日には、「TPP関連対策大綱」を決定。国のかたちを一変させかねないTPPの「大筋合意」を国会にも報告せず、国民的議論もないまま、既成事実として押し付けようとしているのです。TPPの危険な内容を検証します。

「大筋合意」では、史上最悪の農林水産物輸入「自由化」を約束しました。

農業危機に拍車
米、麦、牛・豚肉、乳製品、砂糖の農産物重要5項目で3割の品目の関税を撤廃。関税が残った品目でも、米で特別輸入枠の新設、牛肉・豚肉で関税の大幅削減など、総崩れです。
重要5項目を交渉しないよう求めた国会決議に真っ向から反します。
過去に関税を撤廃したことのない農林水産物834品目のほぼ半数で関税撤廃。「交渉結果として最善のものとなった」(甘利明TPP担当椙)という強弁は通用しません。
この結果は、農業・農村の危機的現状に追い打ちをかけるとともに、農村や国土の荒廃を広げ、世界最低水準の食料自給率をさらに低下させ、国民の生存基盤を根本から脅かします。
「自由化」の打撃を国内対策で防げないことは、牛肉、オレンジ、米などの過去の実例で明らかです。TPPからの撤退こそ、最も確実な「対策」です。



TPP「大筋合意」に抗議する人々=10月22日、首相官邸前

米企業の要求で
TPPは、国民の命や暮らしにかかわる制度も「非関税障壁」として扱います。政府は、医療や食の安全などの制度で変更はないと主張します。しかし、食品添加物の認可拡大や、国家主権を侵害する投資家対国家紛争解決(ISDS)条項なども盛り込まれています。
特に、TPP交渉とともに行われた日米並行交渉に関する両国の交換文書は、保険、投資、知的財産権、政府調達、衛生植物検疫(SPS)など9分野で非関税障壁の除去に取り組むことを確認。また、日本政府の規制改革会議に外国企業の意見を反映させることも明記しました。これらは、米大企業の積年の要求であり、国民の暮らしを守る諸制度が米多国籍企業の要求に沿って改変されかねないことを示しています。
TPP条文案には、発効から7年以降に、関税などの日本の約束について「協議」することなど、「協議」「追加的な交渉」が定められています。今回の「大筋合意」にとどまらず、TPPの原則である関税ゼロ、非関税障壁除去へのレールが敷かれているのです。


米に追随妥結急ぐ
参院選での審判が阻止へ道開く


安倍政権は、米国に追随し、「早期妥結」を最優先して対米譲歩を重ねました。
7月末、米ハワイでの閣僚会合では、日本政府は、ほぼ譲歩し尽くしていました。9月末~10月初め、米アトランタでの会合では、ぎりぎりの交渉を続ける各国に対して、「ゲームはやめ、真剣な対応を」(甘利TPP大臣)と迫るありさま。

国民置き去り
政府は、与党自民党の公約をほごにし、国会決議にも反し、国を売り渡す重大な譲歩を国民に隠し、主権者の国民を置き去りにしたまま「大筋合意」へ突き進んだのです。日米同盟を最優先し、アジア太平洋地域のルールづくりに参画するとして、米国に忠誠を尽くす安倍政権の卑屈な姿勢があらわです。
安倍政権はまた、国民の安全・安心より大企業の利益を優先。TPPで、アジア太平洋地域でビジネスチャンス(商機)が広がる、外国の公共事業の入札に参加できる、などと強調します。しかし、それで利益を得るのは一握りの大企業です。
それと引き換えに、米国などの多国籍企業に国内市場を明け渡しました。中小企業や地場産業、地域経済が衰退するのは必至です。国民や国の将来にまるで責任を負わない亡国の道です。
「大筋合意」でTPPが決着したわけではありません。発効までには、正文の完成から署名、各国の批准が必要になります。米国の事情で、署名は来年2月以降です。
発効には、少なくとも、国内総生産(GDP)で85%以上を占める6力国以上の批准が必要とされます。日本と米国のどちらかが欠けても発効しません。
米国では、来年が大統領選挙の年で、TPP審議どころではないとされます。「大筋合意」に対し、早くも議会指導者から不満の声が聞こえます。国民の間でも、雇用や食の安全を奪うなどと、反発が広がっています。



TPP合意は許さないとアピールする人たち=11月25日、札幌

批判を恐れる
日本では、安倍政権は臨時国会の開催を拒否しています。「大筋合意」の内実が明らかになり、国民の批判が高まるのを恐れているのは明らかです。
安倍政権のTPP暴走は、「戦争法」など憲法も民意も踏みにじる「アベ政治」の一環です。「戦争法」反対の運動が空前の規模で展開されてきました。TPP阻止のたたかいも、この広大な国民的共同に合流することで展望が開けます。その点で、来年の参議院選挙は極めて重要です。
日本農業新聞の農政モニター調査(10月28日付)によると、安倍政権の支持率は、発足直後の6割から、今年7月には36%へ、「大筋合意」後は18%へ急落。TPPの打撃を直接的に受ける農業者の中で、安倍政権への不信は劇的に広がっています。参院選で自民党に厳しい審判を下すことが、国民の側からTPPに決着をつける道です。(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2015年12月8日付掲載


TPPは農業分野の市場開放だけでなく、食品添加物の認可拡大や、国家主権を侵害する投資家対国家紛争解決(ISDS)条項なども盛り込まれています。
日本の経済主権をアメリカに売り渡すことになるのが実態です。
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