検証TPP「大筋合意」は何を示したか⑤ 対日要求のデパート
12力国による環太平洋連携協定(TPP)交渉と並行して、日本と米国だけの交渉も行われました。2013年4月、TPP交渉参加を焦る日本政府が、米国から参加承認を得る見返りに押し付けられたもので、TPP交渉への“入場料”の一つでした。
自動車分野のほか、保険、透明性、投資、知的財産権、規格・基準、政府調達、競争政策、急送便、衛生植物検疫(SPS)の9分野で非関税障壁について交渉し、結果をTPPに組み込むというものです。これらこそ、米国政府が長年、「年次改革要望書」などの形で日本に突き付けてきた要求が集中している分野で、対日要求のデパートです。
諸制度へ口出し
TPP条文案とともに公表された日米並行交渉に関する両国の交換文書は、自動車分野と他の9分野での並行交渉の妥結を確認。9分野では、「日本政府は確認する」「…再確認する」「…認める」「…保証する」といった記述が並び、日本政府が米国政府の要求を次々と受け入れたようすがうかがわれます。
保険分野では、日本郵政の扱いに終始。米国の保険会社が日本郵政の販売網へ参入できるようにすることや、かんぽ生命を他の保険会社と同じ扱いにすることなどが盛り込まれています。
投資分野では、日本の「規制改革」について、外国投資家から意見や提言を求め、政府の規制改革会議に付託し、規制改革会議の提言に従って必要な措置をとることを約束しました。日本の諸制度に対して、米国の多国籍企業が口出しする経路になりかねません。
TPP交渉閣僚会合に集まった12力国の担当相=10月1日、米アトランタ(ロイター)
食の安全脅かす
国民が懸念する食の安全にかかわる衛生植物検疫(SPS)の分野では、政府は、日本の制度変更が必要となる規定は設けられておらず、日本の食品の安全が脅かされるようなことはないと説明してきました。
これについて、並行交渉に関する交換書簡は、防カビ剤、食品添加物、ゼラチンとコラーゲンの扱いで両国の認識を一致させたことを確認。防カビ剤では、日本の厚生労働省は、農薬と食品添加物の承認について統一申請・審議とすることで、収穫前と収穫後の防カビ剤の承認を簡素化するとしました。食品添加物については、原則としておよそ1年以内に、日本政府がまだ承認していない4種の添加物を承認することを約束しました。また、牛に由来するゼラチンとコラーゲンの輸入規制の緩和も確認しました。
このように、国民の暮らしや安全にかかわる諸制度も、米多国籍企業の要求に沿って改変されかねない危険があるのです。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2015年12月12日付掲載
TPP交渉では、保険、透明性、投資、知的財産権、規格・基準、政府調達、競争政策、急送便、衛生植物検疫(SPS)なども対象に。
食の安全性も脅かされます。
12力国による環太平洋連携協定(TPP)交渉と並行して、日本と米国だけの交渉も行われました。2013年4月、TPP交渉参加を焦る日本政府が、米国から参加承認を得る見返りに押し付けられたもので、TPP交渉への“入場料”の一つでした。
自動車分野のほか、保険、透明性、投資、知的財産権、規格・基準、政府調達、競争政策、急送便、衛生植物検疫(SPS)の9分野で非関税障壁について交渉し、結果をTPPに組み込むというものです。これらこそ、米国政府が長年、「年次改革要望書」などの形で日本に突き付けてきた要求が集中している分野で、対日要求のデパートです。
諸制度へ口出し
TPP条文案とともに公表された日米並行交渉に関する両国の交換文書は、自動車分野と他の9分野での並行交渉の妥結を確認。9分野では、「日本政府は確認する」「…再確認する」「…認める」「…保証する」といった記述が並び、日本政府が米国政府の要求を次々と受け入れたようすがうかがわれます。
保険分野では、日本郵政の扱いに終始。米国の保険会社が日本郵政の販売網へ参入できるようにすることや、かんぽ生命を他の保険会社と同じ扱いにすることなどが盛り込まれています。
投資分野では、日本の「規制改革」について、外国投資家から意見や提言を求め、政府の規制改革会議に付託し、規制改革会議の提言に従って必要な措置をとることを約束しました。日本の諸制度に対して、米国の多国籍企業が口出しする経路になりかねません。
TPP交渉閣僚会合に集まった12力国の担当相=10月1日、米アトランタ(ロイター)
食の安全脅かす
国民が懸念する食の安全にかかわる衛生植物検疫(SPS)の分野では、政府は、日本の制度変更が必要となる規定は設けられておらず、日本の食品の安全が脅かされるようなことはないと説明してきました。
これについて、並行交渉に関する交換書簡は、防カビ剤、食品添加物、ゼラチンとコラーゲンの扱いで両国の認識を一致させたことを確認。防カビ剤では、日本の厚生労働省は、農薬と食品添加物の承認について統一申請・審議とすることで、収穫前と収穫後の防カビ剤の承認を簡素化するとしました。食品添加物については、原則としておよそ1年以内に、日本政府がまだ承認していない4種の添加物を承認することを約束しました。また、牛に由来するゼラチンとコラーゲンの輸入規制の緩和も確認しました。
このように、国民の暮らしや安全にかかわる諸制度も、米多国籍企業の要求に沿って改変されかねない危険があるのです。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2015年12月12日付掲載
TPP交渉では、保険、透明性、投資、知的財産権、規格・基準、政府調達、競争政策、急送便、衛生植物検疫(SPS)なども対象に。
食の安全性も脅かされます。