検証TPP「大筋合意」は何を示したか④ 発効後も続く圧力
環太平洋連携協定(TPP)は、発効しても、それで終わりではありません。関税の撤廃や削減を前倒し実施したり、取り決めの適用範囲を拡大したりする追加の協議や交渉も定められています。
TPP「大筋合意」によると、関税分類に基づく品目(タリフタイン)の数で見て、日本の関税撤廃率は95%に達します。農林水産物では81%、米、麦、牛・豚肉、乳製品、砂糖の農産物重要5項目では30%です。日本が過去に結んだどの協定よりも高い割合です。その影響をもろに受ける農林水産業者にとって、「交渉結果として最善」(甘利明TPP担当相)どころか、「最悪」です。
関税撒廃を加速
TPP条文案第2章第4条によると、いったん約束した関税の撤廃・削減は予定に従って実施しなければならず、原則として、関税を引き上げることも、新たな関税を設けることもできません。それだけではなく、いずれかの国から要請があった場合には、「関税撤廃の加速を検討するため協議する」ことになっているのです。
さらに、第2章の日本に関する付属書によると、TPP発効から7年以降は、オーストラリア、カナダ、チリ、ニュージーランド、米国のいずれかが要請した場合、要請国と日本は、「市場アクセスを向上させる目的で」(日本の輸入を増やすため)、関税、関税割り当て、セーフガード(緊急輸入制限)などで、「日本の誓約を検討するため協議する」とされています。
TPPは、あくまでも関税ゼロが原則です。「聖域なき関税撤廃を前提としない」(安倍晋三首相)というのはその場しのぎにすぎず、「大筋合意」の時点で一部の関税が残ったとしても、関税ゼロへの圧力がかかり続けるのです。
東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議の会場前でTPPに反対する人々=11月21日、マレーシア・クアラルンプール(ロイター)
追加的な交渉も
TPPは、関税削減・撤廃だけの協定ではありません。非関税障壁を除去するとして各国の規制緩和も求め、広範な分野で共通の基準(ルール)を定めます。そのうち、政府調達や国有企業などについても、「大筋合意」にとどまらない「追加的な交渉」を予定しています。
政府調達は、官公需の発注を外国企業にも開放する取り決めです。現在は、政府、独立行政法人、都道府県、政令指定都市が対象になっています。政府は、TPP「大筋合意」でも、変更はないと説明します。しかし、条文案第15章第24条によると、TPP発効から3年以内に、適用範囲を拡大し、発注額の閾値(しきいち)(最低額)を引き下げる目的で、「追加的な交渉」を行うことになっています。
また、国有企業と民間企業を同等に扱う取り決めでも、第17章第14条によると、発効から5年以内に、適用の拡大で「追加的な交渉」を行うとしています。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2015年12月11日付掲載
「大筋合意」の内容でも、大幅に関税撤廃して、官公需を海外に市場開放しているんですが…。
さらに適用範囲を広めることが求められます。
まさに、底なし沼です。
環太平洋連携協定(TPP)は、発効しても、それで終わりではありません。関税の撤廃や削減を前倒し実施したり、取り決めの適用範囲を拡大したりする追加の協議や交渉も定められています。
TPP「大筋合意」によると、関税分類に基づく品目(タリフタイン)の数で見て、日本の関税撤廃率は95%に達します。農林水産物では81%、米、麦、牛・豚肉、乳製品、砂糖の農産物重要5項目では30%です。日本が過去に結んだどの協定よりも高い割合です。その影響をもろに受ける農林水産業者にとって、「交渉結果として最善」(甘利明TPP担当相)どころか、「最悪」です。
関税撒廃を加速
TPP条文案第2章第4条によると、いったん約束した関税の撤廃・削減は予定に従って実施しなければならず、原則として、関税を引き上げることも、新たな関税を設けることもできません。それだけではなく、いずれかの国から要請があった場合には、「関税撤廃の加速を検討するため協議する」ことになっているのです。
さらに、第2章の日本に関する付属書によると、TPP発効から7年以降は、オーストラリア、カナダ、チリ、ニュージーランド、米国のいずれかが要請した場合、要請国と日本は、「市場アクセスを向上させる目的で」(日本の輸入を増やすため)、関税、関税割り当て、セーフガード(緊急輸入制限)などで、「日本の誓約を検討するため協議する」とされています。
TPPは、あくまでも関税ゼロが原則です。「聖域なき関税撤廃を前提としない」(安倍晋三首相)というのはその場しのぎにすぎず、「大筋合意」の時点で一部の関税が残ったとしても、関税ゼロへの圧力がかかり続けるのです。
東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議の会場前でTPPに反対する人々=11月21日、マレーシア・クアラルンプール(ロイター)
追加的な交渉も
TPPは、関税削減・撤廃だけの協定ではありません。非関税障壁を除去するとして各国の規制緩和も求め、広範な分野で共通の基準(ルール)を定めます。そのうち、政府調達や国有企業などについても、「大筋合意」にとどまらない「追加的な交渉」を予定しています。
政府調達は、官公需の発注を外国企業にも開放する取り決めです。現在は、政府、独立行政法人、都道府県、政令指定都市が対象になっています。政府は、TPP「大筋合意」でも、変更はないと説明します。しかし、条文案第15章第24条によると、TPP発効から3年以内に、適用範囲を拡大し、発注額の閾値(しきいち)(最低額)を引き下げる目的で、「追加的な交渉」を行うことになっています。
また、国有企業と民間企業を同等に扱う取り決めでも、第17章第14条によると、発効から5年以内に、適用の拡大で「追加的な交渉」を行うとしています。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2015年12月11日付掲載
「大筋合意」の内容でも、大幅に関税撤廃して、官公需を海外に市場開放しているんですが…。
さらに適用範囲を広めることが求められます。
まさに、底なし沼です。