税逃れ② 貧困対策に逆行
タックスヘイブン(租税回避地)に隠された世界の富は2010年末時点で21兆~32兆ドル(1ドル=100円とすると2100兆~3200兆円)と推計されています(国際NGO「税公正ネットワーク」調べ)。
経済協力開発機構(OECD)は、多国籍企業による税逃れだけで毎年1000億~2400億ドルの税収が失われていると推計しています。さらに、世界全体の法人税収の4~10%に上ると試算しています。
途上国では、法人税収に大きく頼っている状況を考慮に入れると、タックスヘイブンの存在は、世界の貧困と格差解決の巨大な障害となっているのです。
ゆがむルール
世界銀行のキム総裁は、「極貧の撲滅に世界が努力しているときに、課税逃れは非常に打撃になる」と批判しています。国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事も「国際的な税金のルールが富裕層のためにゆがめられている」としています。
国連貿易開発会議(UNCTAD)は、途上国の税収の損失は毎年1000億ドルに上ると推定しています。
国家の税収が失われると、必要な財政支出が不可能になるのは、各国に共通した課題です。
医療などの社会保障対策ができなくなれば、貧困解決に重大な障害となるでしよう。教育の充実は、格差是正にとっても重要な対策ですが、税収不足によって適切な対策がとられなくなってしまうでしょう。上下水道などの社会基盤の整備に深刻な影響を与えます。さらには、自然災害からの復旧、復興にも支障が出ます。治安対策や各種の経済政策も滞ってしまいます。
OECD租税委員会の会合に参加する各国代表ら=6月30日、京都市内
国民には重税
一方、国家は税収を確保するために、タックスヘイブンを利用した税逃れなどができない国民に対して重税を押し付けることを選択することになります。貧困と格差をますます悪化させることになるのです。
国際協力団体であるオックスファムは1月、世界の資産保有額の上位62人の総資産は、下位50%(36億人)の人々の総資産に匹敵する、という衝撃の報告書を発表しました。一方で、15年には、世界人口の貧しい半分の総資産額は、10年と比較して1兆ドル減少しました。
オックスファムは次のように指摘します。
「裕福な個人や大企業が租税回避のために活用するタックスヘイブンの問題に対処しなければなりません」「各国政府は、税収入の減少により、貧困と格差の問題に対処するための重要な財源を失っています」
たとえば、アフリカでは、金融資産の30%がタックスヘイブンに置かれていると推測され、このことによって毎年140億ドルの税収が失われているとしています。毎年140億ドルの予算があれば、母子保健の充実などを通して年間400万人の子どもの命を救うばかりか、アフリカのすべての子どもたちが学校に通うために必要な教員を雇用できる、といいます。
オックスファムは、世界の指導者たちに「タックスヘイブンの時代」を終わらせるための地球規模の取り組みを呼び掛けています。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2016年7月21日付掲載
途上国で、安い労働力を使って生産して儲けておいて、その資産をタックスヘイブンに隠す。ダブルで儲けるって許せません。
タックスヘイブン(租税回避地)に隠された世界の富は2010年末時点で21兆~32兆ドル(1ドル=100円とすると2100兆~3200兆円)と推計されています(国際NGO「税公正ネットワーク」調べ)。
経済協力開発機構(OECD)は、多国籍企業による税逃れだけで毎年1000億~2400億ドルの税収が失われていると推計しています。さらに、世界全体の法人税収の4~10%に上ると試算しています。
途上国では、法人税収に大きく頼っている状況を考慮に入れると、タックスヘイブンの存在は、世界の貧困と格差解決の巨大な障害となっているのです。
ゆがむルール
世界銀行のキム総裁は、「極貧の撲滅に世界が努力しているときに、課税逃れは非常に打撃になる」と批判しています。国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事も「国際的な税金のルールが富裕層のためにゆがめられている」としています。
国連貿易開発会議(UNCTAD)は、途上国の税収の損失は毎年1000億ドルに上ると推定しています。
国家の税収が失われると、必要な財政支出が不可能になるのは、各国に共通した課題です。
医療などの社会保障対策ができなくなれば、貧困解決に重大な障害となるでしよう。教育の充実は、格差是正にとっても重要な対策ですが、税収不足によって適切な対策がとられなくなってしまうでしょう。上下水道などの社会基盤の整備に深刻な影響を与えます。さらには、自然災害からの復旧、復興にも支障が出ます。治安対策や各種の経済政策も滞ってしまいます。
OECD租税委員会の会合に参加する各国代表ら=6月30日、京都市内
国民には重税
一方、国家は税収を確保するために、タックスヘイブンを利用した税逃れなどができない国民に対して重税を押し付けることを選択することになります。貧困と格差をますます悪化させることになるのです。
国際協力団体であるオックスファムは1月、世界の資産保有額の上位62人の総資産は、下位50%(36億人)の人々の総資産に匹敵する、という衝撃の報告書を発表しました。一方で、15年には、世界人口の貧しい半分の総資産額は、10年と比較して1兆ドル減少しました。
オックスファムは次のように指摘します。
「裕福な個人や大企業が租税回避のために活用するタックスヘイブンの問題に対処しなければなりません」「各国政府は、税収入の減少により、貧困と格差の問題に対処するための重要な財源を失っています」
たとえば、アフリカでは、金融資産の30%がタックスヘイブンに置かれていると推測され、このことによって毎年140億ドルの税収が失われているとしています。毎年140億ドルの予算があれば、母子保健の充実などを通して年間400万人の子どもの命を救うばかりか、アフリカのすべての子どもたちが学校に通うために必要な教員を雇用できる、といいます。
オックスファムは、世界の指導者たちに「タックスヘイブンの時代」を終わらせるための地球規模の取り組みを呼び掛けています。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2016年7月21日付掲載
途上国で、安い労働力を使って生産して儲けておいて、その資産をタックスヘイブンに隠す。ダブルで儲けるって許せません。