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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

税逃れ④ 新時代 幕開くか

2016-07-27 13:24:39 | 予算・税金・消費税・社会保障など
税逃れ④ 新時代 幕開くか

多国籍企業のグループ内取引を通じた所得の海外移転に対し、適正な課税を実現するためには、地球規模で行う取引の全体像を把握する必要があります。経済協力開発機構(OECD)が取り組む「税源浸食と利益移転(BEPS)」対策には、親会社が作成する国別報告書を税務当局間で自動的に交換する仕組みがあります。
国別報告書には、総収入・所得・税額・資本金などの財務情報、従業員数、有形資産額、主要事業などが記載されます。「今回のBEPSの中でも非常に画期的なものと言われている」(税制調査会・国際課税ディスカッショングループでの財務省主税局国際租税総合調整官の発言〈2015年10月23日〉)ものです。

情報公開せず
サンタマンOECD租税センター局長は、6月30日の京都会合で「われわれは、国際課税の協力の新たな時代の幕を開けた」と語り、BEPS対策の取り組みの意義を強調してみせました。
ところが、国別報告書は、税務当局間では自動的に情報が交換されるものの、一般公表されないことになっています。
各国の経済界だけでなく、アメリカなどOECD加盟国も国別報告書の公表には否定的だからです。これでは、多国籍企業の税逃れに対して、市民社会による監視の目が届きません。
日本では、そもそも経団連が、国別報告書について「形式的な数値情報によって誤ったリスク評価がなされ、多国籍企業の進出先において新たな二重課税のリスクが生じることが強く懸念される」(14年2月19日)として、BEPS対策の草案段階から否定的でした。
フランスの経済学者トマ・ピケティ氏ら300人を超す経済学者が各国の首脳あてに発表した5月9日の書簡は、「タックスヘイブンの秘密主義に切り込み、タックスヘイブンを含む各国が国別の報告書を公開すること等について新たな国際的合意が必要だ」として、国別報告書の公開を求めました。



「パナマ文書」に関する伊勢志摩サミット首脳宣言の内容に低い点数を与えるNGOの代表=5月27日、三重県志摩市

欧州での動き
欧州では、情報開示に向けた動きがあります。
欧州委員会は、欧州連合(EU)域内において法人税逃れは年間500億~700億ユーロの税収損失を発生させていると推定しています。これに対応するため、欧州委員会は4月12日、全世界での年間売上高が7億5000万ユーロを超える多国籍企業に対し、どこで利益を上げ、EUのどこで納税しているかに関する主要な情報を国別に公開することを義務付けることを提案しました。
この提案に対しても経団連は、国別報告事項は「企業の機密情報を含む」ものであり、一般公開を可能な限り回避するとした国際合意に反するとの提言を発表しています。
タックスヘイブン問題に取り組む日本のNGO(非政府組織)のグローバル連帯税フォーラムは5月10日、グローバル企業情報の公開を求め、麻生太郎財務相への要請書を発表しました。
「多国籍企業の国別報告制度を通じて収集した情報を公開すること。これらの制度にはタックスヘイブンを含むあらゆる国・地域を例外なく参加させること」
世界的規模で格差が危機的な状況にまで広がっています。これは決して自然に生まれたものではありません。規制緩和、民営化、そしてタックスヘイブンによる金融の機密性と税逃れによって、一握りの多国籍企業のための経済がつくられてきたためです。国際NGOのオックスファムは、「壊れた経済モデルを拒否するときです」と提起しています。
公正で民主的な経済を目指すたたかい抜きには、「新たな時代の幕」は上がりません。
(おわり)(金子豊弘、杉本恒如が担当しました)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2016年7月23日付掲載


日本経団連が「国別報告書」の公開を拒んでいるのは問題です。
困ったものです。

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