参院選報道 識者は語る
最大の問題は改憲の扱い
元NHKディレクター 戸崎賢二さん
最大の問題は、ニュースが、争点である改憲問題について、「憲法改正」という一般的な用語でしか伝えていないことです。
安倍晋三首相は「憲法改正は争点ではない」と言っていますが、国会でも改憲を明言してきましたし、自民党の改憲草案の内容もすでに明らかです。
9条を破棄して国防軍を創設し、「国際協力」でも軍事行動できるようにする、言論・表現の自由は公の秩序によって制限するなど、重大な改変です。
しかし、テレビが、首相が憲法の何を変えようとしているのかを伝えることはほとんどないのです。これでは市民には改憲の問題がきちんと見えません。
NHKの世論調査では、「最も重視したい政策」の第1位が社会保障で経済政策、消費税と続きました。改憲の問題がなかなか争点になっていません。その傾向を助長しているのがテレビ報道ではないでしょうか。
もう一つの問題は、各党の政策や主張がカタログ的にしか報じられていないことです。
政党や政治家が言っている言葉の羅列や比較だけに終わっている。語られていることが本当なのか、現実はどうなっているのか、独自の調査報道がほとんどないままです。
戦後政治の大転換をもたらすのが憲法改定です。今回の選挙は歴史の分岐点です。そのことをテレビ報道はもっと見据えるべきです。
放送抑制に屈しないで
『放送レポート』編集長 岩崎貞明さん
2014年の総選挙以降、テレビの選挙関連報道は、目に見えて低下しています。
今回、自民党は放送局側に「党首討論の日程は6月25日まで」と提示し、それ以降の出演を事実上拒否しています。テレビ朝日21日「報道ステーション」の党首討論では、安倍首相が「フェアじゃない」などと気色ばむ場面もあったりしました。そういうことが度重なると政権のイメージダウンにつながりかねない、という懸念が彼らにはあるのではないか。
自民党は14年の総選挙直前に、街頭インタビューの編集の仕方にまで注文をつけるような文書を各放送局に出しました。また、放送の「政治的公平」をめぐる問題が国会で大きな議論となったりする中で、放送局側も「政治の扱い」には神経質になっています。
公職選挙法上も「放送番組編集の自由」が原則とされているのに、各党の露出時間の配分などに非常に神経をとがらせています。
「政治的公平」ばかりを意識するから、突っ込んだ意欲的な企画が実現しないという面があります。無理してリスクを取るぐらいなら別のネタを追ったほうがいい…報道番組の制作者がそういう思考になっているのではないか。
それが現実には投票率の低下につながり、結果として与党に有利な選挙結果を生んできた、という側面があると思います。
自民党が放送への露骨な圧力を強めていることは大問題ですが、それに屈する放送局の姿勢も重大です。
「しんぶん赤旗」日刊紙 2016年7月3日付掲載
NHKの世論調査で「憲法改正」が上位に入らないのはそういう舞台裏があったのですか…。
自民党からの圧力に屈せず、報道人としての心意気を発揮して、有権者に情報提供してほしいものです。
最大の問題は改憲の扱い
元NHKディレクター 戸崎賢二さん
最大の問題は、ニュースが、争点である改憲問題について、「憲法改正」という一般的な用語でしか伝えていないことです。
安倍晋三首相は「憲法改正は争点ではない」と言っていますが、国会でも改憲を明言してきましたし、自民党の改憲草案の内容もすでに明らかです。
9条を破棄して国防軍を創設し、「国際協力」でも軍事行動できるようにする、言論・表現の自由は公の秩序によって制限するなど、重大な改変です。
しかし、テレビが、首相が憲法の何を変えようとしているのかを伝えることはほとんどないのです。これでは市民には改憲の問題がきちんと見えません。
NHKの世論調査では、「最も重視したい政策」の第1位が社会保障で経済政策、消費税と続きました。改憲の問題がなかなか争点になっていません。その傾向を助長しているのがテレビ報道ではないでしょうか。
もう一つの問題は、各党の政策や主張がカタログ的にしか報じられていないことです。
政党や政治家が言っている言葉の羅列や比較だけに終わっている。語られていることが本当なのか、現実はどうなっているのか、独自の調査報道がほとんどないままです。
戦後政治の大転換をもたらすのが憲法改定です。今回の選挙は歴史の分岐点です。そのことをテレビ報道はもっと見据えるべきです。
放送抑制に屈しないで
『放送レポート』編集長 岩崎貞明さん
2014年の総選挙以降、テレビの選挙関連報道は、目に見えて低下しています。
今回、自民党は放送局側に「党首討論の日程は6月25日まで」と提示し、それ以降の出演を事実上拒否しています。テレビ朝日21日「報道ステーション」の党首討論では、安倍首相が「フェアじゃない」などと気色ばむ場面もあったりしました。そういうことが度重なると政権のイメージダウンにつながりかねない、という懸念が彼らにはあるのではないか。
自民党は14年の総選挙直前に、街頭インタビューの編集の仕方にまで注文をつけるような文書を各放送局に出しました。また、放送の「政治的公平」をめぐる問題が国会で大きな議論となったりする中で、放送局側も「政治の扱い」には神経質になっています。
公職選挙法上も「放送番組編集の自由」が原則とされているのに、各党の露出時間の配分などに非常に神経をとがらせています。
「政治的公平」ばかりを意識するから、突っ込んだ意欲的な企画が実現しないという面があります。無理してリスクを取るぐらいなら別のネタを追ったほうがいい…報道番組の制作者がそういう思考になっているのではないか。
それが現実には投票率の低下につながり、結果として与党に有利な選挙結果を生んできた、という側面があると思います。
自民党が放送への露骨な圧力を強めていることは大問題ですが、それに屈する放送局の姿勢も重大です。
「しんぶん赤旗」日刊紙 2016年7月3日付掲載
NHKの世論調査で「憲法改正」が上位に入らないのはそういう舞台裏があったのですか…。
自民党からの圧力に屈せず、報道人としての心意気を発揮して、有権者に情報提供してほしいものです。