けいざい四季報 2020年Ⅱ① 世界経済 各国とも急激に減少
① 新型コロナウイルス流行で、各国の経済が急激に縮小。米国では景気後退入り
②金融当局は緩和策を拡大。米はゼロ金利を長期継続。欧州は資産購入策を拡張
③経済縮小による石油需要の急減少で原油価格が急落。史上初のマイナス価格も
新型コロナウイルスの世界的流行が、各国の経済を急激に縮小させています。
景気後退入り
米国の景気循環を判定する全米経済研究所(NBER)は8日、2月に景気後退入りしたと認定しました。
米商務省が25日発表した1~3月期の実質GDP(国内総生産)確定値は、年率換算で前期比5・0%減でした。下げ幅はリーマン・ショック直後の2008年10~12月期(8・4%減)以来約11年ぶりの大きさ。
欧州連合(EU)統計局が9日発表した1~3月期のユーロ圏実質GDP確定値は、前期比3・6%減でした。EU全体でも3・2%減。
中国国家統計局が4月17日発表した1~3月期の実質GDPは、前年同期比6・8%減。マイナス成長は四半期ごとの数値公表を始めた1992年以降で初めて。
国際通貨基金(IMF)は24日、最新の世界経済見通しで、20年の成長率をマイナス4・9%と4月時点の予測(マイナス3・0%)から下方修正しました。新型コロナウイルス感染拡大が収束せず、景気回復が想定より鈍いと分析しました。
世界経済の主な出来事(4~6月)
軒並みに緩和
米国の中央銀行に当たる連邦準備制度理事会(FRB)は10日、3月に復活させた事実上のゼロ金利政策を少なくとも22年末までは続けるシナリオを示しました。
欧州中央銀行(ECB)は4日、新型コロナウイルス対策として導入した資産購入計画(パンデミック緊急購入プログラム=PEPP)の規模を6000億ユーロ(約73兆円)増額し、1兆3500億ユーロへ拡充する追加緩和を決めました。その実施期間も、少なくとも21年6月末まで6カ月延長します。
中国人民銀行(中央銀行)は4月20日、銀行貸出金利の指標である最優遇貸出金利(LPR)1年物を0・20%引き下げ3・85%にしたと発表しました。引き下げは2月以来2カ月ぶり。金融緩和を拡大し、企業の資金繰りを支援します。
株価が暴落した6月11日、ニューヨーク証券取引所を出るトレーダー(ロイター)
マイナス価格
ニューヨークの原油先物市場で4月20日、標準油種WTIが1バレル=マイナス37・63ドルで引けました。1983年の上場以来、初めて。マイナス価格になったのは、4月21日が取引最終日の5月物。米国では貯蔵施設が満杯に近づいており、貯蔵費用を嫌う買い持ち側が売り急いだのです。
特殊事情があったとはいえ、根本的には、供給過剰による価格低迷が続いていたところへ、新型コロナウイルスの世界的流行で世界の需要が激減したのが原因です。
国際エネルギー機関(IEA)は4月15日の月例報告で、世界の石油需要が前年に比べ日量930万バレル減少すると予測。石油輸出国機構(OPEC)と非加盟産油国は協調減産を追求し、最終的には4月12日、5月1日から2カ月間、日量970万バレル分を減産することで合意しました。6月6日には、協調減産を7月末まで延長。
IEAは5月14日の月報で、石油需要予測を前年比日量860万バレル減とし、約70万バレル上方修正。欧米などで新型コロナウイルス感染拡大防止策を緩和する動きが出始めたのを反映しました。
ニューヨークの原油先物市場は6月22日、経済活動再開、需給改善への期待から3営業日続伸。WT17月物が1バレル=40・46ドルと、3カ月半ぶりに40ドル台を回復しました。(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2020年6月30日付掲載
全世界的な景気後退の局面。経済成長率が軒並みマイナス成長。
ゼロ金利などの金融緩和策。原油の先物取引では、なんとマイナス価格。
① 新型コロナウイルス流行で、各国の経済が急激に縮小。米国では景気後退入り
②金融当局は緩和策を拡大。米はゼロ金利を長期継続。欧州は資産購入策を拡張
③経済縮小による石油需要の急減少で原油価格が急落。史上初のマイナス価格も
新型コロナウイルスの世界的流行が、各国の経済を急激に縮小させています。
景気後退入り
米国の景気循環を判定する全米経済研究所(NBER)は8日、2月に景気後退入りしたと認定しました。
米商務省が25日発表した1~3月期の実質GDP(国内総生産)確定値は、年率換算で前期比5・0%減でした。下げ幅はリーマン・ショック直後の2008年10~12月期(8・4%減)以来約11年ぶりの大きさ。
欧州連合(EU)統計局が9日発表した1~3月期のユーロ圏実質GDP確定値は、前期比3・6%減でした。EU全体でも3・2%減。
中国国家統計局が4月17日発表した1~3月期の実質GDPは、前年同期比6・8%減。マイナス成長は四半期ごとの数値公表を始めた1992年以降で初めて。
国際通貨基金(IMF)は24日、最新の世界経済見通しで、20年の成長率をマイナス4・9%と4月時点の予測(マイナス3・0%)から下方修正しました。新型コロナウイルス感染拡大が収束せず、景気回復が想定より鈍いと分析しました。
世界経済の主な出来事(4~6月)
4/12 | 産油国が世界の生産量の15%超の日量1500万バレル以上減産で合意 |
4/17 | 1~3月期中国GDPを前年同期比6.8%減と発表 |
4/20 | ニューヨーク原油市場でWTI5月物が史上初のマイナス価格 |
5/19 | 4月のEU新車販売台数を前年同月比76.3%減と発表 |
6/8 | 全米経済研究所が米国が今年2月に景気後退入りしたと認定 |
6/9 | 1~3月期ユー口圏GDP確定値を前期比3.6%減と発表 |
6/10 | FRBがゼロ金利政策を22年まで維持する見通しを表明 |
6/11 | ダウ工業株30種平均が前日終値比1861.82ドル安の急落 |
6/24 | IMFが20年の世界の成長率をマイナス4.9%と予測 |
6/25 | 1~3月期米GDP確定値を年率換算で前期比5.0%減と発表 |
軒並みに緩和
米国の中央銀行に当たる連邦準備制度理事会(FRB)は10日、3月に復活させた事実上のゼロ金利政策を少なくとも22年末までは続けるシナリオを示しました。
欧州中央銀行(ECB)は4日、新型コロナウイルス対策として導入した資産購入計画(パンデミック緊急購入プログラム=PEPP)の規模を6000億ユーロ(約73兆円)増額し、1兆3500億ユーロへ拡充する追加緩和を決めました。その実施期間も、少なくとも21年6月末まで6カ月延長します。
中国人民銀行(中央銀行)は4月20日、銀行貸出金利の指標である最優遇貸出金利(LPR)1年物を0・20%引き下げ3・85%にしたと発表しました。引き下げは2月以来2カ月ぶり。金融緩和を拡大し、企業の資金繰りを支援します。
株価が暴落した6月11日、ニューヨーク証券取引所を出るトレーダー(ロイター)
マイナス価格
ニューヨークの原油先物市場で4月20日、標準油種WTIが1バレル=マイナス37・63ドルで引けました。1983年の上場以来、初めて。マイナス価格になったのは、4月21日が取引最終日の5月物。米国では貯蔵施設が満杯に近づいており、貯蔵費用を嫌う買い持ち側が売り急いだのです。
特殊事情があったとはいえ、根本的には、供給過剰による価格低迷が続いていたところへ、新型コロナウイルスの世界的流行で世界の需要が激減したのが原因です。
国際エネルギー機関(IEA)は4月15日の月例報告で、世界の石油需要が前年に比べ日量930万バレル減少すると予測。石油輸出国機構(OPEC)と非加盟産油国は協調減産を追求し、最終的には4月12日、5月1日から2カ月間、日量970万バレル分を減産することで合意しました。6月6日には、協調減産を7月末まで延長。
IEAは5月14日の月報で、石油需要予測を前年比日量860万バレル減とし、約70万バレル上方修正。欧米などで新型コロナウイルス感染拡大防止策を緩和する動きが出始めたのを反映しました。
ニューヨークの原油先物市場は6月22日、経済活動再開、需給改善への期待から3営業日続伸。WT17月物が1バレル=40・46ドルと、3カ月半ぶりに40ドル台を回復しました。(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2020年6月30日付掲載
全世界的な景気後退の局面。経済成長率が軒並みマイナス成長。
ゼロ金利などの金融緩和策。原油の先物取引では、なんとマイナス価格。