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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

私と資本論① 読売新聞特別編集委員 橋本五郎さん&経済評論家 森永卓郎さん

2020-01-17 09:18:58 | 経済・産業・中小企業対策など
私と資本論① 読売新聞特別編集委員 橋本五郎さん&経済評論家 森永卓郎さん
マルクス自身の研究の発展史を反映した『新版資本論』の第1分冊、第2分冊(全12分冊、新日本出版社)が昨年発売され、今年も隔月で刊行されます。「私と資本論」をテーマに10人の識者に『資論』についての思い出をつづってもらいました。1週間に1度、5回にわたって紹介します。


『新版資本論』を販売する都内の書店

新版 資本論
新版 資本論 posted by (C)きんちゃん
新版『資本論』
第1巻の第1分冊~第3分冊。


新版 資本論 目次
新版 資本論 目次 posted by (C)きんちゃん
その目次
第1部 資本の生産過程
[第1分冊]
第1篇 商品と貨幣
[第2分冊]
第2編 貨幣の資本への転化
第3編 絶対的剰余価値の生産
[第3分冊]
第4編 相対的剰余価値の生産
第5編 絶対的および相対的剰余価値の生産
第6編 労賃


経済だけでなく社会変革実践書
読売新聞特別編集委員 橋本五郎さん



大学1年生のとき、「最初にそろえるべき書物」として『資本論』を買いました。大学を卒業するとき、ゼミの教授から「社会人1年目は、通勤途中で、学生時代に読み残した本を読みなさい」といわれ、『資本論』に挑みました。私にはなかなか難解で、解説書を読みながら悪戦苦闘しました。
最近発売された『新版資本論1』も買いました。フランス語版への序言には、「学問の険しい小道をよじ登る苦労を恐れない人々だけが、その輝く頂上にたどりつく幸運にめぐまれるのです」と書かれています。その通りです。
ソ連、東欧の崩壊で、マルクスはもう死んだかのようないわれ方をしました。私は疑問でした。私の立場は資本主義ですが、現在の暴力的な資本主義、つまり投機が横行するカジノ資本主義、貧富の格差拡大をもたらす「行き過ぎたグローバリゼーション」は制御する必要があります。
マルクスが『資本論』を書いた動機は、格差のある社会を変えたいだったはずです。あらゆる人間の価値が「交換価値」に置き換えられる社会を正したいと考えたはずです。
円を描くコンパスは、一本の軸は固定されていてぶれません。もう一つは自由に動かせます。マルクスの「ぶれない軸」は格差のない社会の実現です。そのために商品や労働などを分析して資本主義を乗り越えようとしました。
自由に動かせるもう一つの軸は、時代や各国の実情に応じて、その時々の人が使いこなせばいいと思います。ソ連のスターリンは「共産主義」の名を借りて独裁体制を作りました。「ぶれない軸」=変わらず大切なものから逸脱した時は、反対の声をあげなければ.いけません。いまの中国を見ていると、そう感じます。
マルクスのすごいところは、『資本論』を狭い意味での経済学書にとどめず、思想の書、社会変革の実践の書にしているところです。現在も『資本論』は生命力を発揮していると思います。


空前の格差拡大 今こそマルクス
経済評論家 森永卓郎さん



私の学生時代、教養課程の経済学は、近代経済学とマルクス経済学の2本立てだった。だから資本論は必須の教科書だったのだが、難解であるだけでなく、分量も膨大で、私は七転八倒した。数回読んだのだが、おそらく半分も理解していなかったと思う。
いま日本の大学では、マルクス経済学の講義がほとんど姿を消している。ベルリンの壁の崩壊以降、社会主義が勢いを失うなかで、マルクス経済学ははやらなくなってしまったのだ。
しかし、マルクスがみていた世界は、産業革命後に資本が暴走して、庶民の暮らしを破壊する経済の姿だった。グローバル資本が搾取を繰り返し、所得や資産の格差が空前のレベルまで拡大している今こそ、マルクス経済学の意義はむしろ大いに高まっている。
ところが、資本論は難しい。そこでお勧めしたいのが、解説本から入るという方法だ。極端な場合、漫画でもいいと思う。例えば、門井文雄『マルクス資本論』(かもがわ出版)は、資本論第1巻のエッセンスだけを劇画にしている。しかも、この本は、かなり原作に忠実に作られている。
ただ、この本でも難しい場合は、講談社まんが学術文庫の『資本論』を読んだらよいと思う。この本は原作をかなり逸脱して、恋愛ストーリーとして資本論を描いている。貴族の男女と庶民出身の男性の間で揺れ動く三角関係を織り交ぜながら、庶民出身の男性が、貴族の男性と手を組みながら、資本主義のなかで成り上がっていく物語になっているのだ。
こうした取りつきやすいところから入って、資本論に慣れてきたら、ぜひお勧めしたいのが、デヴィッド・ハーヴェイ『経済的理性の狂気』(作品社)だ。この本は、現代に起きている経済現象をマルクス経済学で問い直すというスタンスで書かれている。なかなか難解な本ではあるが、資本論に比べればずっとましだ。近代経済学がなぜ人類を幸せにしないのか。きっと理解できると思う。

「しんぶん赤旗」日刊紙 2020年1月8日付掲載


自分の立場は資本主義という読売新聞特別編集委員・橋本五郎さんも、『資本論』は「思想の書、社会変革の実践の書」と評価。テレビにもよく登場する経済評論家・森永卓郎さんは、入門書から入り『資本論』に挑むことを推奨。近代経済学がなぜ人類を幸せにしないのか。きっと理解できると思うと。

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