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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

「学問の自由」侵す学術会議介入 「子どもの学ぶ権利」も侵害

2021-02-02 07:50:57 | 政治・社会問題について
「学問の自由」侵す学術会議介入 「子どもの学ぶ権利」も侵害
教育内容は研究成果が反映されるもの 何が真理か決めるのは国ではない
子どもと教科書全国ネット21代表委員 石山久男さん

菅義偉首相による日本学術会議への人事介入。政府が「学問の自由」を侵害する大問題です。家永教科書裁判の杉本判決では「学問の自由」の侵害は「子どもの学ぶ権利」を侵害すると指摘しました。この意味を子どもと教科書全国ネット21代表委員の石山久男さん(歴史教育者協議会元委員長)に聞きました。
本吉真希記者




政府介入ただした家永裁判
家永教科書裁判(別項)第2次訴訟の東京地裁判決(杉本判決=杉本良吉裁判長、1970年7月)は、国の教科書検定不合格を憲法違反と認めました。昨年は杉本判決から50年でした。
高校の社会科教員だった私は、家永教科書裁判で2度、証言の機会を与えられ、「子どもたちは事実をありのまま知ることから過去の過ちに学び、新しい未来へ進もうとする」と証言しました。
杉本判決は「教育の本質は子どもの学習する権利(教育を受ける権利)を充足」すること、「国家に与えられる権能は条件整備で、教育内容への介入は基本的に許されない」と断じました。判決はこの考え方を世界史の大きな流れのなかで取りあげています。
一つは、ルソーなど近代教育思想や教育法制の発展からです。「20世紀に入って生存権的基本権が各国の憲法に規定されると、子どもの権利としての教育を受ける権利が確立した」とのべています。その例として、西ドイツ基本法(49年)や世界人権宣言(48年)を挙げています。



教科書検定違憲訴訟勝利判決の喜びを述べる家永三郎東京教育大学教授=1970年7月17日、東京弁護士会館

【家永教科書裁判】
高校日本史教科書『新日本史』の執筆者、家永三郎さん(旧東京教育大学教授・思想史研究)が、文部省(当時)の教科書検定は憲法違反だとして国を訴えた一連の裁判。たたかいは1965年の第1次訴訟から97年の第3次訴訟終結まで32年間に及びました。

保障あってこそ
教師は▽学問の成果を子どもに理解させ、事物を知り、考える力と創造力を得させるべきであるとしました。そのため教師には「学問の自由、教育の自由が保障されなければならない」とのべ、それは戦後日本の教育改革の方向とも一致すると指摘します。
その上で判決は▽子どもの学習する権利を正しく充足するには、真理教育が要請される▽真理を教えるにあたっては、心身の発達に応じた正しい教育的配慮が必要で、科学的知識が不可欠―とのべています。こうした教育的配慮自体が学問的実践で、「学問と教育とは本質的に不可分一体」だと捉えています。
つまり何が真理で、何が正しい教育的配慮かを決めるのは、学問の自由が尊重・保障されるもとでの学問研究の結果なのです。
杉本判決は子どもの権利保障と学問・教育の自由との関係をこのように判示し、それを近代の人権思想と教育思想の長い歴史的発展の成果であり、現代世界史の太い流れとして位置づけたのです。
だからこそ、その後も強まる司法反動のなかでも、杉本判決の論理を全面否定することはできませんでした。76年の学力テスト事件最高裁判決で、教育の本質が子どもの学習権の充足にあることが法的に確定しています。

ゆがめられた朝鮮人虐殺犠牲者数
ところが2014年に教科書検定基準が改定され、①政府見解や最高裁判決に基づいて記述②通説がない場合はそれがないことを明示―することなどが追加されました。
大きく変えられた一つが、関東大震災での朝鮮人虐殺の犠牲者数です。大震災当時の司法省の資料に233人という記録があります。それを主張する声が大きくなると、それまで教科書にあった6千人、7千人という数字は「通説ではない」とされ削られました。
しかしこの犠牲者数は、司法省の資料も踏まえて総合的に判断された数字です。通説であるかないかを判断するのは国ではなく、学問の世界です。
数字の問題では南京虐殺も同じです。日本軍「慰安婦」や沖縄戦「集団自決」(強制集団死)でも、強制連行はなかったという政府見解や、軍命はなかったという一部の人の主張を理由に教科書の記述が後退しました。
学問の自由が制約されたり、侵害されたりすると、いま以上に記述が制限されてくるでしょう。執筆者の萎縮にもつながります。
学術会議会員の任命拒否という形で、学問の自由が侵害されました。それは教員の学問研究をゆがめ、結果的に子どもたちにゆがめられた内容が教えられることになります。
杉本判決の理念をいまこそ学び直し、学問の自由と教育の自由の侵害、子どもの学習権の侵害とたたかわなくてはいけません。

「しんぶん赤旗」日曜版 2021年1月31日付掲載


歴史教科書への検定が違憲だとしてたたかった「家永教科書裁判」。「国家に与えられる権能は条件整備で、教育内容への介入は基本的に許されない」と断じた杉本判決。
日本学術会議への人事介入も同じこと。許される問題ではない。
それは教員の学問研究をゆがめ、結果的に子どもたちにゆがめられた内容が教えられることに。

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