学術会議任命拒否政府文書 作成過程読み解く② 「過去から一貫」の不自然
菅義偉首相による日本学術会議の会員候補任命拒否問題をめぐり、政府が持ち出した「首相は任命を拒否できる」とする法解釈。これが「過去から一貫している」という政府の説明の不自然さも、やはり日本共産党の田村智子参院議員が昨年末に政府に開示させた一連の文書から際立ちます。
菅義偉首相と日本学術会議
発端は人事介入
法解釈の検討の出発点は、2018年にあった学術会議の補欠人事に首相官邸が介入したことだった―。そんな疑いが文書から浮かびます。
18年9月12日に開かれた、学術会議の選考委員会(第4回)の議事要旨があります。
ここでは当時の山極寿一・学術会議会長が委員らに、官邸による人事介入の経緯を説明していました。やり取りからは、会議が対応に苦慮した様子がうかがえます。
委員長(山極氏) 「(官邸側から)推薦順位を逆転した方がよいとの話がきた」「理由については明示されていない」
山極氏はこれに続いて委員らに、理由なく推薦順位を変えることは「日本学術会議の独立性の観点から困難」と判断したと説明。事務局長に、再度官邸側に説明するよう指示したと述べました。
しかし「先方(官邸)も強硬」で、理由の説明も拒まれたと報告を受けたと説明。「粘り強く調整していく必要がある」などと語っています。
この議題は8月22日に開かれた第3回の選考委員会でも議論されていました。ここでは委員が官邸の姿勢に「遺憾」「理由が一切示されないということが問題では」などと発言。人事介入を問題視しています。
首相による会員候補の任命拒否を「正当化」する法解釈を詰めていた、内閣府と内閣法制局の協議過程を示す一連の文書の日付は18年9月~11月。学術会議の18年補充人事の時期と重なります。
協議過程の比較的早い段階の文書にも、きっかけになったのが学術会議の補欠人事だったと読み取れる記述が出てきます。
例えば、同年9月20日付の文書は次のように記します。
「今般、…3名の欠員が出ることとなり…」「会員の補欠の推薦順位に関して、各部(学術会議)と任命権者(首相)の間で意見の隔たりが生じた」
その上で学術会議事務局は内閣法制局に、①補欠会員の候補者を首相が任命しないことが法的に許容されるか②首相が推薦順位が下位の者を任命することが法的に許容されるかーを問い合わせていました。
しかし政府は国会で、この時の協議過程について「従来からの法的整理を確認した」と答弁(昨年12月)。法解釈は「過去から一貫している」との姿勢を崩しませんでした。
削除された記述
「補欠人事から問題意識が生じた」と読めるこうした記述は後に削除されました。最終的に確定した11月13日付のものも補欠人事に言及せず、一般的に「推薦のとおりに任命すべき義務があるとまでは言えない」と述べています。
そして、菅首相が推薦された会員候補の任命を初めて拒否したのは20年9月。補欠人事ではなく、3年ごとの会員の半数改選(105人)の際でした。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2021年2月2日付掲載
2018年の補欠会員の人事。「(官邸側から)推薦順位を逆転した方がよいとの話し」に対して、山極氏は…委員らに、理由なく推薦順位を変えることは「日本学術会議の独立性の観点から困難」と判断。
当然の判断ですが、その裏で山際会長も知らない中で協議が続けられていたってこと。
菅義偉首相による日本学術会議の会員候補任命拒否問題をめぐり、政府が持ち出した「首相は任命を拒否できる」とする法解釈。これが「過去から一貫している」という政府の説明の不自然さも、やはり日本共産党の田村智子参院議員が昨年末に政府に開示させた一連の文書から際立ちます。
菅義偉首相と日本学術会議
発端は人事介入
法解釈の検討の出発点は、2018年にあった学術会議の補欠人事に首相官邸が介入したことだった―。そんな疑いが文書から浮かびます。
18年9月12日に開かれた、学術会議の選考委員会(第4回)の議事要旨があります。
ここでは当時の山極寿一・学術会議会長が委員らに、官邸による人事介入の経緯を説明していました。やり取りからは、会議が対応に苦慮した様子がうかがえます。
委員長(山極氏) 「(官邸側から)推薦順位を逆転した方がよいとの話がきた」「理由については明示されていない」
山極氏はこれに続いて委員らに、理由なく推薦順位を変えることは「日本学術会議の独立性の観点から困難」と判断したと説明。事務局長に、再度官邸側に説明するよう指示したと述べました。
しかし「先方(官邸)も強硬」で、理由の説明も拒まれたと報告を受けたと説明。「粘り強く調整していく必要がある」などと語っています。
この議題は8月22日に開かれた第3回の選考委員会でも議論されていました。ここでは委員が官邸の姿勢に「遺憾」「理由が一切示されないということが問題では」などと発言。人事介入を問題視しています。
首相による会員候補の任命拒否を「正当化」する法解釈を詰めていた、内閣府と内閣法制局の協議過程を示す一連の文書の日付は18年9月~11月。学術会議の18年補充人事の時期と重なります。
協議過程の比較的早い段階の文書にも、きっかけになったのが学術会議の補欠人事だったと読み取れる記述が出てきます。
例えば、同年9月20日付の文書は次のように記します。
「今般、…3名の欠員が出ることとなり…」「会員の補欠の推薦順位に関して、各部(学術会議)と任命権者(首相)の間で意見の隔たりが生じた」
その上で学術会議事務局は内閣法制局に、①補欠会員の候補者を首相が任命しないことが法的に許容されるか②首相が推薦順位が下位の者を任命することが法的に許容されるかーを問い合わせていました。
しかし政府は国会で、この時の協議過程について「従来からの法的整理を確認した」と答弁(昨年12月)。法解釈は「過去から一貫している」との姿勢を崩しませんでした。
削除された記述
「補欠人事から問題意識が生じた」と読めるこうした記述は後に削除されました。最終的に確定した11月13日付のものも補欠人事に言及せず、一般的に「推薦のとおりに任命すべき義務があるとまでは言えない」と述べています。
そして、菅首相が推薦された会員候補の任命を初めて拒否したのは20年9月。補欠人事ではなく、3年ごとの会員の半数改選(105人)の際でした。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2021年2月2日付掲載
2018年の補欠会員の人事。「(官邸側から)推薦順位を逆転した方がよいとの話し」に対して、山極氏は…委員らに、理由なく推薦順位を変えることは「日本学術会議の独立性の観点から困難」と判断。
当然の判断ですが、その裏で山際会長も知らない中で協議が続けられていたってこと。
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