高峰山は全国で十山ほどあるようだ。今月上旬(6月9日)、私達は上信越高原国立公園に属する高峰山(2106 m、長野県小諸市)に向かった。
ところで、この山に登る人々は多くないようである。登山口(車坂峠、1973 m)から山頂までの標高差が何となく物足りなく感じられる。周辺には、浅間山(前掛山)、黒斑山、籠ノ登山、三方ヶ峰(池の平湿原)、湯の丸山、烏帽子岳などの2000 mクラスの山がある。これらが、その理由であろう。
高峰高原の案内図(車坂峠(長野県小諸市)にて)
登山道で眺める八ヶ岳連峰(佐久市など)。
登山者が多くないことは自然の豊かさが残されていることでもある。そして、この期待は裏切られなかった。登山道沿いで、私達はハクサンイチゲなどの花々に出会った。
岩地で開き始めた花、そして蕾
ハクサンイチゲ(白山一華、白山一花);キンポウゲ科の多年草。花に見えるものは、萼片であり、花弁ではない。高山帯で、残雪や雪渓を背景として群生している姿には、このものならでの華やかさがある。
高峰山では、この地ならではの亜高山性気象(北アルプスからの冷たい風と太平洋側からの温かい風が交差する)を反映して、高山植物と低山植物とが混生している。例えば、笹をバックとするハクサンイチゲの花に出会う。
登山道沿いで出会ったその他の花から
ツガザクラ(栂桜): ツツジ科、高山帯の岩場や礫地を好む常緑性の矮性低木。
アズマシャクナゲ(東石楠花、ツツジ科): 和名は、このものが関東地方に多いことに由来する。
高峰山では、アズマシャクナゲ(一部は白花種)とハクサンシャクナゲが群生している。このときは、ハクサンシャクナゲの蕾がまだ硬かった。
イワハタザオ(岩旗竿、アブラナ科ヤマハタザオ属): 山地の岩場や砂礫地に生える多年草。このものの仲間には、ヤマハタザオ、ウメハタザオ(八方尾根、蛇紋岩地帯)、富士山に分布しているフジハタザオ(富士山)がある。
イワハタザオ(高峰神社前にて)
高峰山の山頂付近では、大きな岩が積み重なっている。これは火山(旧火山)であった時代の名残であろう。この画像において、左奥の窪地は池の平湿原(火口跡)である。
植物は逞しい。岩の重なりの隙間で、ハクサンイチゲやイワカガミなどが花を開いていた。
岩の積み重なりとその上部に生えているハクサンイチゲ。岩に身をあずけて、イチゲの生き様を接写したいと思った。しかし、岩の重なりは微妙な重さでの釣り合いによって安定化されているように見える。まあ、.....危うきに近寄らずとすべきだろう。
この岩の重なりの反対側(南側)では、ハクサンイチゲの花が層状に並んでいた。
さて、山頂の先にある岩の重なりに、高峰神社が祀られている。身軽な(体重)家内は、左側から岩を登って家族のために賽銭を奉納した。多くの人は賽銭を下(前方)から投げ入れているらしい。
高峰山(山頂付近)での展望は雄大であった。池の平湿原、三方ヶ峰、そして北アルプスの稜線(最奥)。
北アルプスのクローズアップ(円偏光フィルター使用)。槍ヶ岳などが12時頃にしてははっきりと見えた。できるならば、サンセットの頃まで山頂に留まって、背後から夕陽を浴びる槍ヶ岳の姿などを撮りたかった。
カシミール3Dによる山座同定
北アルプスのクローズアップ(2)、鹿島槍ヶ岳(右)と爺ヶ岳(左)
東方向(浅間山方向)では、爽やかな新緑の世界が広がっていた。
右から、剣ヶ峰、トーミの頭、前掛山(最奥、僅かに見える)、黒斑山、蛇骨岳。
南や南西方向は霞んでいた。しかし、新緑、八ヶ岳連峰、そして佐久平の眺めは、私達にとってインパクトがあるものであった。左奥は蓼科山。撮影地点、高峰神社付近(行き止まり)。
登り始める前に、車坂峠付近で撮った富士山などの眺め(9時半頃)。
富士山とともに、金峰山(五丈岩)や瑞牆山の山容がよく見えた。これらの峰と御座山 (おぐらやま)、小川山、茂来山(もらいさん)、天狗山などを含む稜線の幾重かの重なりは、墨絵を見ているようであった。高峰山の山頂では、バランスの良 い構図でこのような展望を楽しむことができるだろう。
カシミール3Dによる山座同定
カシミールによる山座同定についてはコメント欄をご覧ください。
高峰山登山コースは歩行1時間半から2時間の距離とされている。私達は、いつもように道草をしながら(行きつ戻りつ)歩いた。そして、展望をゆっくりと眺めながら、ランチタイムを山頂で楽しんだ。結果として、車坂峠に戻ったとき、私の歩数は1万を越えていた。
八ヶ岳連峰など(車坂峠付近にて、午後)。
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2018年7月6日、再現像画像のアップロード。