写真:《太極拳》
仕事の帰りの地下鉄での出来事。
車内は、ほぼ満員に近い乗客であった。
三人席が空いた。
真ん中を明けて、私は右の席に、50年配のサラリーマンが左の席に座った。
次の駅に停車すると、浮浪者風の老人が乗車してきて、真ん中の空いた席に座った。
アルコールの臭いプンプン。顔は汚れ傷だらけで不衛生になったバンドエイドが数枚。衣服も汚れている。
その老人が空いた真ん中の席に坐ったとき、私は席を立とうかどうか内面戸惑っていた。
左席のサラリーマンは、すぐ席を立って、浮浪者を回避した。
その浮浪者は、真ん中の席に腰を下ろして、その後左の席に移動してまた真ん中の席は空いた。
次の駅も、次の次の駅でも乗客は増えるが、その浮浪者の回りを全ての乗客が回避していた。
こんな中で、若い頃聞いた、先輩の話を思い出していた。
その先輩は、当時、智慧遅れの子ども達の施設働いていた。
ある智慧遅れの子が、おしっこをコップに入れてその先輩に「ジュース」と言って迫ったそうだ。
先輩は、一瞬ためらったが、目をつぶって「美味しい」と飲んだそうだ。
私には、出来ないことである。
今日も、浮浪者が近づくと回避しようとする自分、アルコール臭いのに気持ち悪くなる自分。
年齢だけは重ねても、情けない「小人」でありまする。
◎写真は、朝10時頃、亀戸サンストリートでの「太極拳」。20名ほどの方が取り組 んでいた。これまで出会ったことがない風景なので、早速シャッターを切った。