ぽつんと落ちたしずくのような点が、頭の中で、いつまでも消えずに残っていて、}でも普段はちっとも意識とかしてなくて。なのに、ある日突然目の前にそれが現れると、私は
ずっとこれを探していたんだ、という深い喜びが沸いてくる‥。
11月の初めに、目白のブックギャラリーポポタムで、イラストレーターの山本祐布子さんの
絵本『ZOE』を見つけた時の気持ちは、そんなふうでした。ポポタムには、その日はじめて
行ったのですが、「絵本屋さん」っていうのともちがうし。大きな棚に、新刊本も古本も一緒に
置いてあるところが新鮮でした。
私が山本祐布子さんを知ったのは、hinataさんこと、稲垣早苗さんが送ってくれた1枚の
切り絵のポストカードがはじまりでした。素敵だね、と話したところ、ギャラリーらふとの
「工房からの風」のポスターをお願いしている話を聞き、同じ頃『旅日和』という、山本さんの
本の存在も知りました。(その時の記録は※と※)
『旅日和』は、切り絵のシャープさと、落ち着いた色合いが魅力的な、画集のような本ですが。
それより以前に出版されたこの『ZOE』は、キュートなティーンエージャー、ゾエの誕生日
パーティーの絵本で、紙を切って貼り合せている手法は同じですが、もっとポップで、もっと
自由な感じに仕上がっています。
黒のサインペンと、包装紙‥みたいな組み合わせとか。
フェルトのアップリケ、その上にさらに刺繍とか。
コラージュとも違う、山本さんの切り絵を見ていると、紙をじょきじょき切っていく時の、
自分の耳元に届く音とか、手元に残る感触とかが、とてもリアルに甦ってきます。ただの
紙が、「かたち」になっていく過程で、そこに気持ちがはいっていくのではないかな、と思えるのです。
四角く切られた「ただの紙」なのに、ほんとうにゾエへのバースデープレゼントが、
中に入っているみたいなんです。
画像でお見せできないのが残念です。
『ZOE』 illustrated by YUKO YAMAMOTO
227×177 size full coror.32P
TRICOROLL BOOKS november 2000 releases.
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「出会えた2冊」のうちの、もう1冊も、同じ日に同じポポタムの棚で見つけました。
題名は『しょうぼうていハーヴィニューヨークをまもる』
マイラ・カルマン 作 矢野顕子 訳
タイトルに“ニューヨーク“がついていて、訳者が矢野顕子さん、しかもユーズドブックスで
お値段もお手頃。それだけで、あとは何も知らずに選んだ1冊だったのですが、結果的に
「出会えた本」となりました。
10年以上前からの、細い細い糸が、その本にも繋がっていたことがわかり不思議な
気持ちになりましました。ハーヴィの話は、次回に続きます。