先日の「聴き合い会」に参加頂いた古楽器のビウエラ。
斎藤さんはリュートも持っておられて、前回はリュートでの参加でした。
ビウエラはスペインで流行った楽器で、2本ずつ同音の弦が12本ついています。
しかし、マンドリンのようなトレモロ奏法は演奏できません。
ギターのようにフレットを押さえますが、ギターのようなトレモロも使わず、押さえて2本同時に指で弾くのと、4本の指で掻き鳴らす奏法で使います。
それがフラメンコギターのようで、ギターの祖先と言われるのも納得です。
似ている楽器のリュートは別系統と言われる由縁です。
2本の弦は押さえるのが大変なので指先ではなく腹で押さえると斎藤さんは言っておられました。
ビウエラは、中南米から、イベリア半島、イタリアで普及していました。
スペイン語 vuela
ポルトガル語 viola
と言いました。
当時violaを指す楽器の範囲は広く!撥弦楽器から擦弦楽器までありました。
ビウエラ・デ・マーノ Vihuela de Mano(手のビウエラ) - 撥弦楽器(6コース)、指頭により演奏
ビウエラ・デ・プエブロ Vihuela de Pueblo(人々の) - 撥弦楽器(4コース)、指頭により演奏
ビウエラ・デ・プレクトロ Vihuela de Plectro(プレクトルムの) - 撥弦楽器、プレクトルムにより演奏
ビウエラ・デ・アルコ Vihuela de Arco(弓の) - 擦弦楽器
ビウエラ・デ・アルコはヴィオラ ダ ガンバの祖先。
ビウエラ・デ・マーノが現在一般的にビウエラと呼ばれています。
15世紀アラゴン王国にビウエラについての初めの記述があります。
16世紀ルイス デ ミラン(1500ー1561年)の曲集にはオルフェウスが描かれています。
1536年ビウエラを弾くオルフェウス
この絵には、ビウエラの発明者はオルフェウスだとかかれています。
ミランはビウエラの曲集Libro de música de vihuela de mano intitulado El maestro を初めて出版した人物になりました。
また、ミゲル・デ・フエンリャーナのビウエラ曲集のタイトルは Orphenica lyra(オルフェウスのリラ)となっています。
このことから、当時スペイン文化圏ではビウエラはギリシア神話に登場し、音楽の神とされるオルフェウスの楽器、リラと同一視されています。
秀逸なレパートリーが数多く残されていて、16世紀にはビウエラが隆盛を極めました。
その一方で、スペイン文化圏ではリュートはほとんど用いられることがありませんでした。
スペインでは、レコンキスタ(718-1492年イベリア半島はイスラム教圏に支配されていましたが、キリスト教徒による再征服運動)で長年モーロ人(イベリア半島におけるイスラム教徒)でイスラム教圏と対峙し、キリスト教への信仰心も熱烈でした。
スペインではリュートは中東起源の「モーロ人の楽器」と見なされていました。
サンティアゴ・マタモーロス(モーロ人殺しの聖ヤコブ)。スペインの守護聖人、レコンキスタの象徴
ビウエラとリュートは調弦が同じであったことから多くのレパートリーを共有していますが、同時代にはイベリア半島ではリュートでは演奏されず、一方で、ギターとは強い近親関係にあったと思われます。
ビウエラは、17世紀に入って大航海時代以来のスペインの覇権が衰えるとともに急激に衰退し、一部はギターに改造されるなどして姿を消しました。
ルイス ミランの「ビウエラ・デ・マーノのための音楽集」より幻想曲1-4