私が利用する両津の図書館は、町の外れ、坂の上にある。こんなところにある図書館、誰が利用するかいな、というようなところにある。そのせいかどうかわからないが、いつ行っても利用者がいない、もしくは一人くらい。
当然のごとく図書館は狭い、今時の学校の図書館より狭い。
わずか3列しか並んでいない書架と書架の間は、私が横に立つとそれだけでいっぱい。壁に設置されている書架はもちろんあるけれど。
蔵書数も少ない。数少ない学術関係の本など横の倉庫の所のような場所に押し込められている。どうせ利用しないでしょとばかりに。
でもね、その蔵書数が少ないところが、好都合になる時もあるので侮れないのよ。
あまりにたくさんの本があると、目的なく探す時はそれだけで疲れて来るけれど、少ない本の数故に、あれっと思う本が目に飛び込んでくるわけ。
「しゃべれどもしゃべれども」・「チルドレン」・「チームバチスタの栄光」・「平成お徒歩日記」・「夜は短し歩けよ乙女」・・・などなど。
で、この『田村はまだか』も飛び込んでくれた1冊。題名だけでなんだなんだこの本は、ってなるわけ。
田村はどんな少年だったか。
ひどく痩せていてぼんの窪がくっきり凹む。母は何人もの男と同棲する。遠足のお弁当はおにぎりだけ。それでも堂々と食べている。頭はすこぶるいい。
そして同じクラスの肩肘張った少女が人生には何もないと叫ぶと、
「何もないからって、小便をしないのか、うんこをしないのか、食べないのか、人間は死ぬから生きているんだ。」的なことを叫ぶ少年。小学6年生にしてすでに孤高の雰囲気を身につけている・・・
40歳の同窓会の3次会で5人の同級生は、そんな田村をひたすら待つ。
深夜のバーでひたすら待つ、明け方近くまで待つ。
その間に5人それぞれのエピソードが挟まれて。
それは思い出でもあるし、現在でもあるし。
バーのマスターも大事な役割を担わされて。
で、話の間が空いたり、いらいらしたり、じりじりしたり、煮詰まってきたりすると、
誰かが「田村はまだか」と叫ぶ。
誰かが叫ぶたびに、私も
「田村はまだか、ほんとにみんなの所に駆けつけるのか、早く来い、田村!」
と心の中で叫んだしだいで。
読後感がすがすがしい心温まる話でしみじみしました。いい本だった。。。
小学校の