「近鉄」の試合を観にいこうと思う。
・・・といっても野球ではなく、ラグビーの話。「近鉄」の名前がつくスポーツチームは、バファローズ亡き後は、こちらも80年の伝統を持つラグビー部「近鉄ライナーズ」である。通勤でも利用する阪神の尼崎駅にラグビートップリーグのポスターがあり、近鉄花園ラグビー場を本拠地とするライナーズの試合日程が紹介されていたのを見てのこと。これも今年開通した「阪神なんば線」効果だろうか。久しぶりに「近鉄」というのを応援したくなった。
というわけでやってきたのは、花園ラグビー場。ほとんど野球しか観戦しない私、生でラグビーを観るのは初めてである。もちろん花園も初めて。
今日はトップリーグ第7節の2試合が組まれており、近鉄ライナーズは第2試合でNECグリーンロケッツと対戦する。その前の第1試合がヤマハ発動機ジュビロ対神戸製鋼コベルコスティーラーズの試合である。神戸製鋼も人気・実力のあるチームで、地元近鉄の試合と合わせて結構多くの観客が詰め掛けている。
バックスタンドのやや真ん中寄りに陣取る。思ったよりもフィールドが近く感じられ、選手たちの体格のゴツさもよく見える。
ラグビーの細かなプレー(どういう時に反則になるとか、どうなったらスクラムを組むようになるのか、など)についてはよく知らないところがある。ラグビーを知る人からすれば「そんなのもわからんのか」ということになるのだろうが・・・。ただそこはラグビーにより親しんでもらおうという協会の取り組みか、観客席でミニFMを使った実況・解説を行っている。手持ちのウォークマンにFMラジオの機能がついているので片側にイヤホンを当てると、ルールの解説もあれば、リスナーからのメールでも質問に答える時間もあり、なかなかわかりやすい。
第1試合のヤマハ発動機対神戸製鋼は、序盤からヤマハ発動機のペースで試合が進む。前半後半で2つずつのトライを挙げたヤマハ発動機が32対20で快勝。「神戸も弱わなったの~」という声も聞こえてくる。それでも、ボールめがけて走ったり、選手への激しいタックルなど、生観戦ならではの迫力が伝わってくる。野球とはまた違ったスポーツの面白さを感じる。
そして第2試合の近鉄対NEC。やはり本拠地での試合ということで近鉄ライナーズのジャージ姿の人や、旗を持って応援する客が多い。
第2試合は序盤、近鉄がいい流れをつかむ。確実に距離をかせぎ、パスでフィールドを広く使っていたように見えたが、なかなか得点にはつながらない。一方のNECも風下というところからなかなか攻めあぐねているようだ。もっとも、FMの解説によれば「風下の場合はキックの時にボールを高く上げて、受ける選手が見やすいように攻める」というのだそうだ。前半戦は近鉄ペースながら一進一退。
そんな中、前半28分にNECが吉廣のトライで先制。0対5。あららと思っていると今度は34分、トンガ代表で攻守に渡り激しく動いていたラトゥがトライを決め、0対10。その後のゴールも決まって0対12となる。
流れがNECに行っちゃったかなと思う間もなく、前半終了間際の37分に窪田がトライ。ゴールは決まらなかったものの、10分の間に0対17という有様。こんなに立て続けにトライが決まるものなのかな。
エンドが変わった後半。10分に四宮がチーム初トライを決めて5対17。これで再び近鉄にもいい流れができて、NEC陣地でボールを支配する時間が出てきた。
しかし、あと少しでトライというところで痛恨の反則。これで一気にボールを近鉄陣地に押し戻され、27分に権丈のトライが決まり、ゴールと合わせて5対24。残り10分あまりで、どうやら近鉄の配色濃厚といったところである。
第1試合の時は冷静に試合を眺めていたのだが、この頃になると、近鉄応援団がプレーの合間にリードする手拍子に合わせて私も声援を送っていた。
それでも地元の意地というのか、30分にイエロメが1トライを返す。ゴールも決まって12対24となる。これでまた息を吹き返したようで、その2分後に坂本もトライ。今度もゴールが決まって19対24。とうとう1トライ差まで追い上げてきた。
その後、NECに再び自陣内に押し戻されたが、解説の「時間は気にせず、いい流れで来ているからどんどん展開すればいいですよ」との言葉通り、切れ目のないボール回しで攻め上げる。そして残り1分を切ったところで、ギリギリのところでの重枝のトライが決まり、24対24の同点に追いついた。
完封負けペースから一気の同点に、競技は違うのだが近鉄バファローズの「いてまえ打線」の姿をダブらせたものだった。
ここで40分となり、最後の1プレーを知らせるブザーが鳴る。最後の1プレーとは、トライ後のコンバージョンゴール。これが決まれば近鉄の勝ち、外れれば同点引き分けとなるが、タッチライン沿いからの結構難しそうな位置。
ここでキックするのは大西。逆風を突いて高く上がったボールは見事にゴールを捕らえる。
この瞬間、26対24での近鉄ライナーズの逆転勝ちが決まった。フィールドになだれ込む選手たち。野球でいえば9回からの逆転サヨナラ勝ちである。まさに、「ミラクル・バファローズ」を彷彿とさせる「ミラクル・ライナーズ」。
試合終了後は、ゴール後ろで選手のお見送り。最後のゴールを決めた大西を初めとしたライナーズの選手たちへの声援もあり、サインを求めるファンも多く見られた。
いや~、初めて観戦したラグビーだったが、いきなりこういう「近鉄の逆転サヨナラ勝ち」を見せられると結構面白いもんやなと思う。これまで冬の球技はほとんど観戦していなかったが、関西にいるのだからラグビー、それにアメフトなんか今後予定に入れてもいいかもしれないな・・・。
トップリーグは1ヶ月ほど試合日程が空くそうだが、この次以降も頑張れ、ライナーズ。