まつなる的雑文~光輝く明日に向かえ

まつなる兄さんのよしなしごと、旅歩き、野球、寺社巡りを書きます。頼りなく豊かなこの国に、何を賭け、何を夢見よう?

『広島学』

2011年07月02日 | ブログ

「カープは日本一じゃ!!・・・・5月までじゃけどのう・・・」

今年のペナントレースの広島カープはまさにそんな感じだ。4月はヤクルトとともに首位争いを行い、「今年のセ・リーグは一味違う面白さになるな」と予感させたものが、パ・リーグ相手の交流戦になると失速。3番廣瀬のけが打線のつながりがいっぺんに悪くなったり、トレーシーとかいう助っ人はいつの間にか消えてしまったし、気が付けば定位置の5位争い。まさに5月までのシーズン・・・?

おっと、別にこの記事では広島カープのことを書くのが目的ではなく、冒頭の一文が表紙のイラストに載せられた一冊の紹介。カープのユニフォームを着た人が路面電車の屋根に乗る。電車の広告にはお好み焼きにもみじ饅頭、そして電車に乗るのはいわゆる「その筋」(あ、私がこのブログでよく用いる「その筋」とはちょっと違って・・・・でもまあある意味いい勝負してるかもしれませんな)の人たち。

『広島学』(岩中祥史著、新潮文庫版)。

126025_3著者は名古屋出身であるが、これまでにも名古屋や博多、札幌などを取り上げてその都市の気質文化を分析した『○○学』という作品も出していたり、県民性の比較研究を行ったりという人である。それが今度のテーマは広島。

広島といえば私も20代から30代にさしかかる間、ちょうど8年間を過ごした街である。街の雰囲気というのもとても気に入ったし、今でも年に1~2回は遊びに出かけるところである。それだけに、この一冊が書店の新刊コーナーにあったのを見かけた時には速攻で購入した。

ここでは広島市のことを中心に書いているが、広島県となれば東の福山や備北地方などを入れれば結構広く、気候の変化にも富んでいる。日本人の平均像と言われることがあるが、いわゆる地方都市にあって、一応は一通りのものは揃っているし、「広島ブランド」「広島発祥」というのも結構ある。カープは単に「広島にあるプロ野球チーム」ということではなく、「市民球団」というくくりで応援の熱も独特のものがあるし、その他プロスポーツも健在。マツダ、ポプラ、オタフクソース、アンデルセンなども広島代表である。洋服の青山、100円ショップのダイソーといった安売り店も広島が発祥(青山は福山だけど)。音楽業界でも結構広島出身者が多かったりする。

広島をさまざまな形で取り上げる本というのもなかなかないだろう。購入してから結構速いペースで読み進めた。やはり懐かしいなと思うところであり、私も実際に過ごしていただけに街の空気がうまく伝わってくるような気がした。

ただ、時には「それは違う」と思う記述もある。そう一括りにするのはちょっと違うと思ったり、地元の人に言わせれば誤解や偏見から来る記述もあるというのである。ただそれは、著者が広島の人でない以上は仕方ないだろう。確かに、あたかも「広島の人全てがそうだ」とでも言いたげな記述もある。

でも一方で、外の人だから「これは広島独特だな」と気づくところもあるし、それをその土地に根ざした文化だとして興趣を覚えたり感心したりすることもあるだろう。まあそこは「へぇ~」と思うか、「それは違う!」とツッコミを入れるか。そこがこの手の本の楽しみである。まあ、都市の入門書、ゆるく学習しようという向きにはおすすめだろう。

う~ん、私はこれを読んだ後、『仁義なき戦い』のDVDを借りてこようかなという気になった(広島の極道の時代背景というのか、街の一面として触れるのも悪くないかな)・・・のはともかくとして、また広島に行ってみたくなった。路面電車のレールの音、キツイ中にも温かさのある広島弁、穏やかな瀬戸内の海、そして味覚の数々・・・・。

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