8月15日夕方の直江津。鉄道の要衝、佐渡への玄関口ということもあり、何度か宿泊しているところである。
ただ、食事を取るところがほとんどなく、夜の町を歩いてもこれという店がなかったように思う。イトーヨーカドーで惣菜を買って済ませたこともあった。
さてこの夜の宿泊は、駅正面のホテルハイマート。前回はここのレストランで地元料理を味わったのだが、今回はある一計を案じた。ホテルハイマートは直江津の駅弁業者でもある。「鱈めし」や「磯の漁火」といった日本海の幸を盛り込んだ駅弁で知られるが、ホームページで「弁当予約可」とある。直江津に着くのが夕方、翌朝も早くに出るので、現地でこれらの駅弁に会えない可能性もある。ということで、事前予約して駅で受け取るように、出発前にメールで注文した。
すると、宿泊するのであればチェックイン時にフロントで渡すとの返事があった。これはありがたい。
さて、「越乃Shu*Kura」が直江津に到着したのが18時すぎ、ホームでトワイライトエクスプレスの写真を撮って改札口に上がると、駅弁売りのワゴンは店じまいの最中だった。18時で店じまいとは結構早いように思うが、なるほど、ホテルフロント受け取りで正解だった。飲み物だけ売店で購入し、ホテルに入る。結構雨足が強くなった。部屋代と駅弁代が一括精算というのも面白い。
この日から大正ドームではバファローズとホークスの首位攻防3連戦。何だかそれに背を向ける感じで旅に出たわけだが、この夜はホテルから一歩も外に出ないこともあり、駅弁をやりながらパソコンで情報収集する。
さて今回は3種類を選択。トワイライトエクスプレスの食堂車の豪華なディナーに比べれば貧相かもしれないが、駅弁の競演というのもなかなかできるものではない。まず最初に「するてん」。スルメイカの足を天ぷらにしたのだが、要は大衆酒場やセルフ式讃岐うどん店の「げそてん」。新潟あたりでも「するてん」は郷土料理であり、先の「越乃Shu*Kura」でもおつまみメニューで売られていた。天ぷらをメインとした駅弁はありそうでなかなかないのでは。
続いて「磯の漁火」。サザエ煮やもずく、イカ焼きなどが入る。最初にこれを食べた時、「こんな居酒屋駅弁があるのか」と感心した。事実、駅弁で何かの賞を取っているはずだ。その時は急行型車両のボックス席に座り、窓のところのテーブルに地酒の瓶と一緒に並べていただいた。そんな旅ももうできなくなるのかなと思うと残念なのだが・・・。
そして最後は直江津のエース「鱈めし」。さすがに米粒はもうお腹一杯なので、おかずのみいただいた。棒だら煮にタラコの親子弁当である。結構味付けは濃い。それが日本海、東日本の人たちの味覚には合っているのだろう。こうして比べると、いずれの駅弁も新潟の酒に合うものばかりだし、地域に根差した味と言えるだろう。
ただ心配なのが、北陸新幹線の開業で直江津の駅弁の客も減るのではということ。この記事を書いている8月末になって、北陸新幹線開業に伴う在来線の概要が発表されたが、特急の北越、はくたかの廃止だけでなく、長野方面から新潟方面に抜ける快速も廃止となるようだ。上越市への玄関駅は新幹線の上越妙高駅(信越線から転換されるえちごトキめき鉄道の脇野田駅に隣接)となるわけだが、ホテルハイマートは果たしてこのまま継続して直江津に駅弁を出すことができるだろうか。あるいはこちらから上越妙高駅に討って出るか。判断の分かれるところだろう。
この夜はバラエティー番組で鉄道ものをやっており、中川家礼二たちが富山の鉄道を乗り歩いたり、蛭子能収が旧高千穂鉄道の高い鉄橋を訪ねたりしていた。高千穂はともかく、新幹線開業後の富山の交通の変化はまた見たいものである。この日は部屋でまったりと過ごし、そのまま就寝・・・。
さて翌日16日。またも雨足が強い。この日は糸魚川まで出て、大糸線に乗り継ぐ。途中、南小谷もしくは白馬から、バスとゴンドラ、ロープウェーを乗り継ぎ、栂池自然園に行くことにしていた。せっかく信州を訪れるので、自然を楽しむことも入れる。そして夕方は信州のイベント列車である「リゾートビューふるさと」にて松本に出て、さらに上諏訪まで南下する。
ただ、雨の様子はどうか。テレビの天気予報は曇りとも雨とも言う。自然園は遊歩道が整備されており、ブログでも「雨で傘の花が開いてます」という記事があり、行こうと思えば行けないこともない。一応途中のコンビニでレインコートも買ってある。
まあどうするかは、とりあえず大糸線に乗ってから判断しよう。そう決めて改めて窓の外を見る。ちょうど直江津駅のホームを見ることができ、一番手前のホームに白地に青帯の北陸線カラーの列車が見える。よく見るとドアは車両の端にある・・・。おっ、急行型の475系ではないか。今回の旅で北陸線の列車に乗る機会は2回だが、2回目で当たることになりラッキーである。
急いで支度して駅に向かう。青春18だが、改札口には「お客様対応のため不在にしております。ご用の方はみどりの窓口へ」の立て札がある。ただ窓口も客が並んでおり、日付印はあきらめてそのままホームに出る。
急行型車両と書いているが、本当に急行として走っていたのには乗ったことがない。私が乗り鉄をやるようになってから、もっぱらローカル列車としての運用である。でもシートはゆったりしているし、テーブルもある。乗り心地も悪くない。
ただ、扉がデッキのある両端にしかないことから、通勤通学時間帯には乗り降りに時間がかかるなど、生活の足としてはあまり評判よくなかったようである。また車両の年季も入ったことで少しずつ現役を退くようになり、今は北陸線で細々と走るのみ。そして、来年の北陸新幹線開業でJRから転換されるのにともない、全面引退となることが確実視されている。
廃止、引退間際となるとまたそれを惜しむ人たちで混雑する事例は山ほどある。急行型車両の場合は混雑したほうが昔の急行らしいのだろうが、「ローカル列車としてゆったりと旅した」という経験の私としては、まだ空いているうちにお別れ乗車ができるのはよかった。その筋らしい客の姿は見るが、ボックス席を楽に独り占めできる。
海の景色を見るが、空はどんよりとしているし、雨も降って波もそれなりにある。冬の風情に近い。乗客の出入りもほとんどないまま淡々と走り、糸魚川に到着する。列車は富山行きで、何なら予定を変更して富山まで乗ろうかと思ったが、ここは計画通り降りる。そして発車を見送る。これが、急行型車両の見納めになるのだろうなと思いつつ・・・・。