越後湯沢11時44分発の北越急行回りの直江津行きに乗車する。外は雨が降っており、結構雨足も強いようだ。
今回乗車したのは北越急行の「ゆめぞら」号。転換クロスシート車両は、新幹線からの接続もありデッキに立ち客も出る大入りである。
ところでこの車両、日本初の「シアタートレイン」として知られる。トンネルが多いのを逆手にとって、天井を巨大スクリーンとして映像作品を上映するのである。過去に一度見たことがあるが、なかなか面白いものである。もっとも「静かにご乗車になりたい方は、デッキのロングシート部分にご乗車ください」という放送も流れるのだが。
六日町を出発するとトンネルが近い。車両が暗くなり、音響とともに天井に映像が流れる。いろいろな星座の形が現れ、そのモデルとなった生き物などに姿を変えて動き回る。なかなかダイナミックである。後で北越急行のホームページを見ると、2両編成のうち六日町寄りの車両は天井を全面に使った迫力ある映像だが、犀潟寄りは落ち着いた感じの映像を流すという。もし「ゆめぞら」号で往復するのであれば、行きと帰りで車両を変えてみるといい。
ただ、トンネルを走るのはいいが駅に着くと客扱いをしなければならない。その時は音楽も途中で切れて、車内の照明がつく。スクリーンを一つの「作品」とするなら途中で切るのは無粋にも思うが、それは仕方ないことだ。あくまで、トンネルの中を退屈に過ごさないための余技であるから・・・。
十日町に到着。大勢の客ととともにここで下車する。一山超えて雨は止んでいる。飯山線の駅であるJR側の出口から出ることにして、北越急行の乗り換え口で線内運賃を現金払いする。十日町と言えば高架ホームのある北越急行のほうがメインのように見える。
十日町のホームの外れにはこの車両が停車していた。本日のメイン列車であり、この指定席が取れたから越後湯沢から十日町を回ろうというプランになった。乗車記についてはこの後記事を改めて書くことにする。
その前に、十日町で2時間半ほど時間がある。へぎそばで有名な店も駅の近くにあるが、先ほど「大爆おにぎり」を食べたばかりである。空腹は感じておらず、それはパスにする。以前に列車の時間待ちで下車した時は駅前を少し歩いて、雪の多いところらしく雁木造りの商店街があったのを覚えているが、今回は駅から10分ほど歩いたところのあるスポットに行くことにする。
それは越後妻有里山現代美術館「キナーレ」というところ。最近の十日町は、雪やそばの町というよりはアートの町として活性化に取り組んでいる。ちょうどこの期間は里山風景と現代アートのコラボである「大地の芸術祭」が開かれている。越後妻有の地に点在する集落を舞台にアートが楽しめるのだが、さすがにそこまでは行けないので、常時作品を展示する美術館であるキナーレを見学する。
中央に池があり、その周囲を回廊状に建物を配した現代建築。手がけたのは京都駅ビルや札幌ドームなどの作品もある原広司氏。企画展示「全ての場所が世界の真ん中 1/100,000妻有」というのが行われている。
どうもこうした現代アートというのは、見ていてもよくわからないものが多いのだが、それでも見てしまうのはなぜだろう。その中でも、越後妻有の土や木をテーマにしたもの、火焔式土器の展示(これはアート作品というよりは歴史展示だが、土器にこのようなデザインを施すというのも、妻有のアートの原点?と言えなくもない)などがある。
その中で面白かったのが、クワクボリョウタ氏の作品。真っ暗な部屋で、鉄道模型に乗せた光源が走る間に、床に置かれたいろいろなモノの影を次々に壁に投影する。ちょうど列車に乗って壁に投影される中を旅しているかのような感覚になる。置かれているのは十日町の織物器具や農機具などを使ったもので、これも越後妻有の土地に根差したアートと言えるだろう。
そうすると、一つ一つボンヤリ眺めていたのでは単なるよくわからないアートが並んでいるだけなのが、それぞれが越後妻有の地をテーマとしていることが見えてくる。なるほどね。
それなりに見物したところで、「キナーレ」の1階にある「明石の湯」に向かう。アートと温泉・・・なかなかよろしいものである。美術館は空調が効いておらず、作品を見ていてかえって汗が出てきたので、ここでの一息は良かった。中のシャツも替えてしばし休憩である。
大広間にはテレビが2台あり、いずれも高校野球の中継が流れる。ちょうど大阪桐蔭対島根の開星の試合中である。そう言えば、2年前には同じ夏旅で妙高を訪ね、その時に入った温泉施設で食事した時にもテレビでは大阪桐蔭の試合をやっていた。あの時は藤浪と森のバッテリーで優勝したのだが、今回はどうなるか(その後、初戦を含めて逆転勝ちを続け、この夏は通算4回目の優勝を果たした。この偶然には驚き。決勝戦だけを捉えれば、三重に優勝してほしかったのだが・・・)。
そろそろ駅に戻る。駅前では石彫作品の過去のコンテスト出品作の展示があり、これを見てから駅に入る。十日町、越後妻有というところのアート熱を感じられた一時であった。
さてこれからが、本日のお楽しみ列車の出発である・・・。