
参詣客で賑わう長谷寺に到着。ちょうど団体客もいる。また中国語も飛び交っている。西国三十三所だからということではないが、山の中に古くから開かれた寺院として、中国の人にとっても魅力あるところなのだろうか。こういう仏閣って、日本に仏教をもたらした中国には今やほとんど残っていないし。
早速、割引きっぷを呈示して中に入ろうとするが、通常の拝観料500円と本尊大観音像の特別拝観料1000円が、セットで1300円と割引するとある。割引きっぷは他の割引とは併用できないとのことで、1300円のセットを買い求める。


長谷寺と言えばこの登廊が有名である。平安時代に春日大社の社司が子の病気平癒のお礼で造ったとか。神社の社司が寺院に寄進するというのも、今の感覚では妙に思うところもあるが、当時は神仏習合の考えが広まっていた頃。こういうことはごく自然に行われていたのだろう。上中下の三段で上って行くが、その合計は399段。400段としなかったのは何かいわれがあるのだろうか。


国宝の本堂に到着する。まずは納め札と蝋燭を上げる。ちょうど中では法要が行われており、僧侶の読経の声が響く。その向こうに本尊の十一面観音菩薩の上半身が見える。大勢の参詣客がおり、通路が狭いということもあって、「お勤めは外舞台で」という表示がある。ということで般若心経を読むのは後回しにして、観音像の特別拝観の受付ということで本堂の中に入る。
受付で係の人が私の左の手のひらにお香を置き、両手を清める。そして五色線という腕輪を左手首にはめる。五色線というのは仏の智慧を表す白、赤、黄、青、黒の五色の糸をより合わせたもので、観音とご縁が結ばれた証だという。そして法要が行われている中、観音像の足下へ。もちろん写真を撮ることはできないので画像はないが、およそ10mの高さの観音像。真下から見上げるとその高さに圧倒される。何かこう、「お前のやることは全てお見通しやからな(関西弁は使わんだろうが)」と言われているような。
そうなるとせめて足に触れて「どうぞご加護ください」と祈るしかない。特に昔の人は現代人より信仰心は篤かっただろうから、よりありがたがる思いやすがる思いは強かったことだろう。足のところだけ金箔もはがれ黒くなっているが、その分歴史の積み重ねを感じる。また、足を触られても悠然として立つ観音の大らかさというのも感じる。




再び外に出て、本堂から外舞台を見たり、外舞台越しに本堂を見たりする。そして外舞台から般若心経の読経。大勢の参詣客がいる中でそういうお勤めをしている人はいないこともあるし、まだ札所巡りも序盤ということで私もまだ照れがある。それでも、青空の下、風に吹かれながらの読経というのもまたよろし、である。その後で朱印帳と納経軸に朱印をいただく。さすがに有名な札所ということで朱印を求める行列ができている。納経所の前に机があり、軸を乾かすためのドライヤーが置かれている。施福寺で「あまり熱風は当てないほうがいい」ということを他の参詣客から言われたのを思い出し、弱風にしてやる。空気が乾いているためか結構早い。私の様子を見て、朱印帳にドライヤーを当てだした客がいたが、納経所から「紙が変形するから朱印帳にはドライヤーを当てないでください」と僧侶の声が飛ぶ。



こちらの紅葉は室生寺と比べてもまだ早かったというところだが、それでもそれぞれの建物とよく映えている。

そうする内に12時を迎える。本堂横の通路に人が集まる。私もそちらに向かうと、一人の僧侶が法螺貝を片手に本堂横の鐘楼の階段を上って行く。ここ長谷寺では正午に鐘とともに法螺貝で時を知らせる行事がある。僧侶の姿を見て拍手する女性もいる。また「あの子、頭だけやのうて眉毛も剃ってない?」「元ヤンキーだったりして」などと話す声も。何ちゅう失礼な。
そして正午。鐘とともに法螺貝の音が初瀬の町に向けて響く。私も僧侶が吹いているのを横から見たり、あるいは鐘楼の真下で音を聴いたが、ホルンのような響きに聞こえなくもない。
これで8番札所の参詣を終える。・・・とここで、次の巡礼先を決めなければならない。あの十一面観音はどのようなご託宣(神様ではないから託宣とは言わないか)をされるか。まずくじ引きで出た候補は、
1・・・嵯峨、亀岡(穴太寺)
2・・・琵琶湖竹生島(宝巌寺)
3・・・姫路(圓教寺)
4・・・大津石山(岩間寺、石山寺、三井寺)
5・・・箕面、宝塚(勝尾寺、中山寺)
6・・・那智勝浦(青岸渡寺)
今度は琵琶湖から亀岡から姫路から那智勝浦まで、エリアが一気に広がった。ただ4~6は前にも選択肢で出てきた。くじがよく混ざっていなかったか、向こうの引きが強いのか。まあ、どこもいずれは行くことになるわけだが。
そして出たのは・・・・2.竹生島である。8番から一気に30番に飛んだ。琵琶湖に浮かぶ島で、遊覧船に乗って行かなければならないところ。確か12月に入ると船も減便されるはずで、できれば11月中に出かけておくことになる。

これで長谷寺を後にするが、駅に戻る前にもう一ヶ所、番外札所がある。そちらにも行くことにする・・・・。