まつなる的雑文~光輝く明日に向かえ

まつなる兄さんのよしなしごと、旅歩き、野球、寺社巡りを書きます。頼りなく豊かなこの国に、何を賭け、何を夢見よう?

皆生温泉の波の音

2019年01月22日 | 旅行記F・中国
米子駅からバスに乗って20分ほどで皆生温泉のバス乗り場に到着した。1月4日、当初は鳥取駅前の大浴場つきビジネスホテルを予約していたが、当日になって急遽米子まで足を伸ばしたくなり、米子に来るなら初めて訪ねる皆生温泉に泊まろうということになった。

バス乗り場からまっすぐ海岸まで道が伸びている。突き当たりに銅像がある。皆生温泉の基盤を造った有本松太郎という人物である。

皆生温泉は鳥取県でもっとも多い年間40万人ほどが利用する温泉だが、歴史は比較的浅い。明治の半ば頃、沖合の海面が泡立っているのを地元の漁師が発見した。さらに浅瀬でも熱湯が沸き出るのが見つかり、ここを温泉地として開拓しようと工事が進められたがなかなか上手くいかなかった。そこに手を差しのべたのが、米子の土木業者で鳥取県議会議員も務めていた有本松太郎。温泉街として土地の整理を行い、鉄道敷設や娯楽施設を設けるなどして客の誘致に成功した。時代が下って現在は健康的な温泉のイメージ造りも行われていて、近隣の観光の拠点としてPRするとともに、日本のトライアスロン発祥の地として毎年大会を開いている。

銅像の背後には日本海(美保湾)が広がる。午後になり雲が広がって来たが、それでも左手に弓ヶ浜から美保関にかけての海岸線がよく見える。右手の大山の上のほうは残念ながら雲に隠れてしまっているが。

この日の宿は「ホテルシーサイド海の四季」。先ほどの有本松太郎の銅像のある通りの両側に建物があり、文字通り海岸に面した建物である。

通されたのは西館3階のシングルルーム。全室オーシャンビューを謳っている通りに、部屋から先ほどの景色を見下ろすことができる。これは素晴らしい。

早速温泉大浴場に入る。ちょうど1階下の同じ位置に浴槽があるので、入浴しながら同じ景色を楽しむことができる。露天風呂だと波の音や海岸べりでの話し声も聞こえる。裸で立っていると海岸から見えるのではないかと思うくらいだ。この時間相客もほとんどおらず、ほぼ貸し切りの感じで楽しめた。これは1月4日という微妙な暦によるところもあるだろう。

さて夕食。ホテルシーサイドでは会席料理やカニ料理のプランが好評とのことだが、当日予約のためそれらはいただけない。また、温泉地は旅館やホテルで夕食というのが基本のためか、周辺には普段の旅で入るような居酒屋や郷土料理の店もほとんどなく、あるのはスナックとか、夜食のラーメン屋くらいのものだ。郷土料理にこだわるなら米子駅前のビジネスホテルのほうがいいだろう。

これを見越したのかどうかは別として、食事は鳥取の駅弁を買っている。その名も「とっとりの居酒屋」。鳥取県内の名物を少しずつコンパクトに折り詰めしたものである。かつてはイカでつくったお猪口も入ってたこともある。

また、鳥取の「かにめし弁当」もある。同じカニの駅弁でも「すし」よりは「めし」派なので、これも楽しめる。一応、鳥取県でカニも食ったということにしておく。

他にはあごの竹輪とかホタルイカの干物もあるし、鳥取から米子、境港にかけての地酒もある。旅館の豪華な夕食とはいかなかったが、これで十分満足である。結局紹興酒の出番はなく、こちらは大阪への土産となった。

飲み食いするうちに外は真っ暗になったが、それでも窓の外を覗くと砂浜に打ち付ける波の先端の白いのが見えるし、テレビの音を消せば波の音も聞こえてくる。冬だから窓は閉めているが、夏ならオープンにすれば潮風を受けて気持ちいいだろう。

翌朝、外はまだ暗いが日常と変わらずに起床し、温泉地ならではの朝風呂に入る。

当日予約したのは素泊まりプランだったが、チェックイン時に時間指定制の朝食の追加ができたので7時にレストランに向かう。部屋ごとにテーブルに準備されていて、しじみ汁やカレイの干物などが並んでいる。

朝食の売りはTKGこと卵かけご飯とある。卵と炊飯ジャーが共通のテーブルに並べられているのは普通として、合わせる醤油が8種類ある。ガチで合わせるなら卵8個、ご飯は(茶碗でも)8杯か・・・とは思うが、それはさすがに無理。メニューの中で面白そうな醤油を試すにとどめたが、出汁を効かせた醤油もあり、日常でも楽しめそうだ。たぶん土産物コーナーにもあったはずで、買って帰ればよかったかな。

せっかく温泉地に来たのだからもっとゆっくりした移動プランにすればよいのだろうが、朝食を終えると速やかにチェックアウトして、バス乗り場から米子駅に向けて乗車していた。やはり一ヶ所でのんびりより、あちこち動いてしまう。

朝の8時過ぎに米子駅に着く。さすがにこの時間から大阪に向かうのももったいなく、久しぶりの乗車となるあのローカル線に乗るとしようか・・・。
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