まつなる的雑文~光輝く明日に向かえ

まつなる兄さんのよしなしごと、旅歩き、野球、寺社巡りを書きます。頼りなく豊かなこの国に、何を賭け、何を夢見よう?

被災地復興を見る~釜石・鵜住居

2019年09月14日 | 旅行記B・東北

釜石市の鵜住居地区にやってきた。町に入る前に向かったのは根浜海岸。海水浴場があり、釜石市の名所の一つだったが、東日本大震災の津波で砂浜が1.3キロにわたって消失した。その後再生工事が進み、今年の夏、震災以来初めて海開きが行われたという。ただ天候が悪いものの人の姿が見えないなと思ってみると、海水浴場は8月12日までの開業だったそうだ。引き続き再生工事を進め、来年には元通りにしたいという。

この海岸を見下ろす高台に集落ができている。津波で失われた集落が移転したもので、海べりの民宿も移っている。曇っているのは残念だが海の景色は素晴らしい。高台に移転した後も、海のある景色をということで防潮堤も最低限の高さにとどめたという。

町中に入る手前に鵜住居復興スタジアムがある。かつては鵜住居小学校と釜石東中学校があったそうだ。三陸では数多くの人が津波の犠牲になったが、釜石では市内の小中学生のほぼ全員が無事だった。これは「釜石の奇跡」として多くの人に希望を与えた。ただ、年月が経ちさまざまな検証が行われる中で、これは「奇跡」ではなく「当然の結果」だという評価が出るようになった。「日常の訓練、教育」「防災意識の高さ」「的確な判断での避難」・・・釜石の取り組みは震災後も各地から注目され、教育関係者が釜石に防災教育の手法を学びに来ることもあるという。

その学校の跡地に建つスタジアム。9月からのラグビーワールドカップでは2試合(フィジー対ウルグアイ、ナミビア対カナダ)組まれている。普段でもメインスタンドの一部を見学用に開放しているとのことでのぞいてみる。

スタジアムは陸上のトラックがない球技専用である。スタンドのベンチには杉の木が用いられ、一部には旧国立競技場や東京ドームなどから寄贈された「絆シート」というのもある。スタンドとグラウンドも近く、どの席に座っても見やすい傾斜である。ラグビーの試合も迫力あるものに映るだろう。現地で観戦することはできないが、どんな様子だったか、ニュースを通してでも見てみたい(大勢の観客で賑わいますように)。

前日通った鵜住居駅に着く。ラグビーにちなんで「トライステーション」という愛称がつけられている。また駅前は「うのすまい・トモス」という交流施設になっている。

その中心にあるのが「釜石祈りのパーク」で、震災犠牲者の追悼施設となっている。先ほど「釜石の奇跡」で市内の小中学生のほぼ全員が無事だったと書いたが、全体で見れば1000人を超す犠牲者が出た。やはり悲劇は悲劇である。今年の3月に完成した碑文には震災の教訓として「命を守る」市民憲章として、「備える」「逃げる」「戻らない」「語り継ぐ」を掲げている。これはどこの被災地にも言えることだし、津波に限らず台風や豪雨災害にもつながる話だと思う。

その横に資料を展示する交流館があり、開館予定の9時になったので入ろうとするが鍵が閉まっている。先ほど、周囲を清掃していたスタッフの方もいたので休業ということはないだろうが、しばらくしても開く様子がない。まあ、まだまだこの先の行程も長いし、鵜住居ではスタジアムの中を見ることもできたということであきらめて先に進む。

釜石市を抜け、隣町の大槌町に入る・・・。

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