まつなる的雑文~光輝く明日に向かえ

まつなる兄さんのよしなしごと、旅歩き、野球、寺社巡りを書きます。頼りなく豊かなこの国に、何を賭け、何を夢見よう?

龍泉洞見物

2019年09月22日 | 旅行記B・東北

8月17日、旅の最終日である。台風10号は前日夜に北海道の西で温帯低気圧に変わった。その影響かこの日は岩手県でも30度超え、35度近くまで気温が上がるのではないかとの予報である。

ただ天気はよい。これなら前日悪天候だった北山崎や黒崎灯台、またその手前にあり前日閉館時間を過ぎていた田野畑村の資料館に行ってもいいように思えた。しかしせっかく来たのだから龍泉洞には行きたいし、その後に行くとしたら時間が足りない。もう、行程だから仕方がない。

ゆっくり起床して朝食である。旅館の和定食ということで美味しくいただく。

龍泉洞へはホテルからクルマで5分ほどで行くことができる。見学が8時半からということでそれに合わせての出発である。観覧料は大人1000円だが、ホテルのフロントでは宿泊者向けに団体割引料金の観覧券があり、750円で購入できる。地元のシンボルとも言えるスポットだけにPRも兼ねているのだろう。

龍泉洞に向かう前に、前日暗くなってからのぞいた町並みに立ち寄る。町を包むようにそびえる山は宇霊羅山。「ウレイラ」とはアイヌ語で「霧のかかる峰」という意味だそうだ。龍泉洞はこの山の地下に広がっている。

また町並みにも昔ながらの建物や、龍泉洞の水が湧き出るスポットもある。ちょっとぶらつくにはいい感じのところである。前日もう少し早く来ていればこうしたところもいろいろ見ることができただろう。

町を離れ、山道を走って龍泉洞の駐車場に着く。まだ営業時間が始まったばかりだが大勢の観光客の姿が見える。やはりそれだけ名勝地ということだ。龍泉洞の名前にちなんだ龍の彫刻を見た後で、洞内に入る。洞内の気温は年間を通して10~11度という。外がすでに30度を超えようかという気温だけにより涼しく感じられる。

龍泉洞は現在確認されているだけで長さが3600メートルあり、このうちの700メートルが観光ルートとして公開されている。しかし現在も洞内の調査は続けられており、全長は5000メートル以上あるのではないかと推測されている。

洞内にはコウモリも生息していて、その巣穴もあるそうだ。コウモリにもさまざまな種類があり、龍泉洞では5種類が生息しているという。あまり見たいとは思わないが、コウモリのほうも観光客の前には姿は見せないようだ。

長い歴史の中でさまざまな形の岩がつくられている。亀に似たものや観音像、ビーナス像を彷彿とさせるものもある。観音像には賽銭箱があり、ビーナス像はわざわざ「洞穴ビーナス」とタイトルがつけられた額縁がある。こうした案内板があるからそう見えるのだが、何もない状態で岩の名前をつけることができるセンスというのはすばらしいと思う。

そして龍泉洞で特に見どころといえる地底湖に出る。現在は第三地底湖まで公開されているが、その奥には非公開の第四地底湖があり、さらにはまだ調査・解明されていない地底湖が複数あるとされている。この辺りの深い森林から集まったのが龍泉洞の地底湖であるが、照明の効果もあった神秘的なブルーに輝いている。底が見えそうで見えない。特に第三地底湖は水深が100メートル近くあるという。こういう地底湖では生物が棲むことはできるのだろうか(プランクトンくらいはいるだろうが)。

龍泉洞は、東日本大震災の時は地底が揺れたことで沈殿物が浮き上がり、透明度が一時的に失われたものの洞内に特段の影響はなく、1ヶ月半後には営業を再開した。しかし2016年の台風10号では地底湖の水が増水し、洞穴の入口から大量の水が流れ出て、洞内の照明灯も破損した。このため半年ほど休業となった。台風10号は岩泉に大きな被害を与えたと前の記事でも触れたが、こういうところにも影響していたとは。

ここで折り返しとなり、一気に階段を上がって出口に向かう。途中には洞内の冷気を利用したワインセラーが設けられている。そういえば前日の夕食の食前酒でこのブドウ酒があったような。

いったん外に出る。先ほどからそれほど時間は経っていないが余計に暑く感じる。川と県道を渡った向かい側にある龍泉新洞科学館に向かう。県道の拡張工事の時に見つかったそうで、鍾乳洞がよく発達していて学術的に貴重なことからそのまま科学館にしたものである。道路を拡張したら鍾乳洞が出て来たとは、地面を掘ったら遺跡や土器が出てくるというどこかの町とよく似た話である。

先ほどの龍泉洞は観光スポットということで洞内の撮影も自由だったが、こちらは科学館というためか内部の撮影は不可。そのため画像はないが、鍾乳洞が形成される現在進行形を見ることができる。下からタケノコのように伸びる石筍と、上からつらら状に垂れ下がる石が長い年月をかけてつながると石柱となるが、その途中の様子も見られる。さらに、人類の祖先が洞穴に住みついて原始生活を営んだ痕跡も残されている。土器や石器も出て来たし、食用の動物の骨も見つかったとある。さらには洞窟に描いたという壁画の痕跡も見られる。

特に自然科学、地学に興味のある人には面白く感じられるところだが、先ほどの龍泉洞とセットの観覧料であるにもかかわらず、科学館に入ってくる人はほとんどいなかった。

売店に立ち寄る。龍泉洞のミネラルウォーターやビール、地酒も並ぶ。もちろんビールを飲むことはできないので運転のお供にミネラルウォーターと、持ち帰り用として地酒「龍泉八重桜」を買い求める。これで内陸の観光もすることができた。

さてここからは仙台に向けての折り返しである。普通にカーナビでルート検索すると盛岡まで出て東北自動車道を通るルートが推奨される。盛岡まで出るのも時間がかかりそうだが、まあそうなのだろう。距離で見れば前日のルートを戻る形で国道45号線まで出て、並走する三陸自動車道を走ることになる。ただそこはあえて、岩泉に泊まった理由でもある岩泉線の廃線跡に沿っていったん茂市に出ることにする。距レンタカーの返却はこの日の16時ということにしているが、カーナビで時刻検索をするとそれをオーバーする。まあ、実際三陸自動車道は開通しているがカーナビが未対応だったり、あとは長い距離なのでスムーズに走れば時間を巻くこともできるかと思う。

町の中心部に戻り、岩泉駅跡にクルマを走らせる・・・。

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