2021年の元日に厳島神社を参拝し、その回廊を抜けたところにある大願寺にて、広島新四国八十八ヶ所霊場めぐりを始めることにした。他にも進行中の札所めぐりがいくつかある中で、さらいもう一つ加わる形である。
この広島新四国八十八ヶ所霊場は、日本各地にある四国八十八所の写し霊場と呼ばれるものの一つである。大正7年(1918年)に広島市を中心とした安芸地区に開かれた。こうした写し霊場の中で知られる知多や小豆島、篠栗より歴史は新しい。時代が下っているのは、広島、特に安芸の国がかつて「安芸門徒」と呼ばれるほど浄土真宗の勢力が強かった土地ということもあったのだろうか。
ただこの広島新四国、原爆投下のため一時巡拝不可能な状態となった。再興されたのが1973年、弘法大師生誕1200年を記念してのことである。現在は広島市、呉市、大竹市、廿日市市、東広島市、三原市、安芸郡に亘っている。宗派も真言宗の他に浄土宗、曹洞宗、臨済宗、浄土真宗と分かれている。第1番が宮島の大願寺、そして第88番も同じく宮島で、弥山の本堂である。この弥山本堂、そして第87番の大聖院は中国観音霊場めぐりの時に訪ねており、そういえばそういう札も掲げられていたなと思い出す。宮島から始まって広島近辺をぐるりと回り、最後は弥山に登る・・というコースである。合わせて、原爆の犠牲になった人たちの慰霊、そして全世界の平和祈願のために、平和公園の原爆慰霊碑が番外霊場と定めている。もっともここは弘法大師霊場とは直接関係ないため、朱印は置かれていない。こちらについては西国めぐりのような「くじ引き&サイコロ」で行き先を決めず、札所順に回ることにする。大願寺の次は大竹市の3ヶ所、そして廿日市市~広島市と回っていくのだが、巡拝図を見ると、札所の並びは結構入り乱れている。すぐ横に何十も離れた番号の札所があることも珍しくない。戦後に霊場を再興するにあたり、札所を返上した寺もあって再度編成したが、その後もたびたび札所の入れ替えが行われている。直近では2019年に3ヶ所が入れ替わったという。
西国三十三所や四国八十八所のように長い歴史があり、また一つの観光ルート(という言い方が適切かは微妙だが)、札所じたいも有名な寺院が多いならまだしも、小規模な寺で維持が大変だったり、無人の寺もあるという。そのために札所番号を返上することになったのかな。南無大師「返上」金剛・・・。
広島新四国のホームページなどを見ると、札所をエリアごとに8つのコースに分けて、それぞれ1日で回る霊場会主催のバスツアーが行われているようだ(2020年はコロナ禍のため中止)。そのルートを見ると札所順番にはこだわらず、効率よい道取りをしているように見える。ただ、今回私が訪ねるにあたっては、とりあえず現在の札所番号順に行くことにした。そのため、同じところを行き来する場面も出てくることになる。手を合わせていろいろ心に思いを致すのが主旨ではあるが、一方ではこうした札所を訪ねることをとおして、広島市内、そして近郊の町並みに触れようというのもある。実際住んでみて日常生活のパターンが定まってくると、訪れるところも徐々に固定化されるように思う。前回住んでいた時にはまったく行くことがなかったところも多く、そうしたところの町歩きも兼ねてのことである。
・・・ということで、先日の1月31日、およそ1ヶ月ぶりに次の第2番である法泉寺を訪ねた。目指すのは山陽線で大竹市に入った玖波・・・。