まつたけ秘帖

徒然なるままmy daily & cinema,TV drama,カープ日記

もしも彼氏が冤罪で

2019-04-12 | 北米映画 15~21
 「ビール・ストリートの恋人たち」
 幼なじみのティッシュとファニーは深く愛し合い、結婚も間近に控えて幸せの絶頂にいた。しかし突然、ファニーが身に覚えのないレイプ事件の犯人として逮捕されてしまう。妊娠していたティッシュは、獄中のファニーを献身的に支え、彼を救い出そうとするが…
 オスカーを受賞した「ムーンライト」のバリー・ジェンキンス監督待望の新作です。ムーンライト同様、シビアで理不尽な社会の中で、傷つき苦悩しながらも愛に生きる若い黒人の物語です。それにしても。レイプ冤罪だなんて、ただでさえ差別に苦しめられているというのに、神さまはどれほど試練を与えれば気がすむのでしょう。ファニーへの濡れ衣も、ちゃんと調べれば無実だとすぐに判明するのに、黒人だからそんなのよくある話、みたいなアメリカって本当に恐ろしい国。あんな非道で悲惨な目に、いつ自分が遭うかわからないと戦々恐々して暮らさねばならない黒人の苦患は、日本人がいくら様々な映画や小説にふれても想像を絶します。

 全編にわたって、悲しみと絶望が澱のように沈殿しているのですが、若い恋人たちの愛が夢のようなムードで描かれてもいます。差別って怖いな~許せないな~というネガティヴな感想よりも、若いっていいな~こんなにも深く強く愛し愛されるなんて素晴らしいな~という賛嘆や羨望を強く感じました。ティッシュとファニーの筒井筒な恋は微笑ましく初々しく、そしてひとつになりたいという想いは切なく情熱的で。ただ並んで歩いてるだけのシーンが多いのですが、すごく満ち足りていて幸せそうで、まさに二人のため世界はあるの~♪なんですよ。交わす言葉も少ないのですが、愛に言葉はあまり重要ではなく、心で通じ合ってる風情が素敵でした。ラブシーンも、若者にしかない官能的な美しさでした。

 ティッシュとファニーのキャラも、若者らしく一途で純真で不器用なところが愛しかったです。ティッシュは可憐で受け身な女の子に見えて、何があってもファニーへの愛を信じ揺るがない挫けない強さが凛々しかったです。ファニーの優しさ繊細さは、愛される女を蕩けさせるほどso sweet!ちょっとダメ男なところも女の母性本能をくすぐります。無職なのに結婚や家探しとか、のんきすぎるのではと思わないでもなかったけど、そんな小さいことは気にしない、幸せな未来しか思い描かないのも若さの特権でしょうか。

 ↑ デートシーンの中では、雨の中を赤い傘さして歩くシーンが特にロマンティックで好き
 ティッシュとファニー、ちょっと恋に酔いすぎたのか、あまりも二人だけの世界でフワフワキラキラしてしまい、自分たちがどんなに厳しく危険な環境にいるのか忘れてしまったせいで、好事魔多しになってしまった。もうちょっとしっかりしてたら、と思いつつ、世故にたけて何でもソツなくこなす若者の話なんてつまんない、スキだらけで愚かなほどにキラキラドリーミーな若者のほうが、見ていて魅せられます。

 悪魔のような白人よりも、善き白人のほうが多く登場していたのが、とても救いになりました。白人だって、みんながみんな黒人を虐げてるわけではないんですよね。心優しい白人の中では特に、新しい部屋の大家さんが善い人でした。どうしてそんなに黒人によくしてくれるのかと訝しむファニーに、愛し合ってる人が好きだからと答える大家さん。うう~ん、いい台詞ですね!ちょっとホロっとなりました。
 黒人側にも腹ただしい連中はいて、ファニーの母親&妹二人の偏狭さと意地の悪さは、差別以上にムカつきます。いくら愛する男と結婚できても、もれなくあんな姑と小姑がついてくるなんて、私なら先が思いやられすぎてゲンナリするわ~。ティッシュのママ&姉が、ティッシュを侮辱する姑&小姑にガツンと喝を入れるシーンが痛快でした。女同士のキャットファイトが深刻ながらも笑えた。ティッシュの愛情深く気風のいいママ役のレジーナ・キングは、この映画でオスカーの助演女優賞を受賞。いい役、好演、だけど、演技的には「女王陛下のお気に入り」のエマ・ストーンとレイチェル・ワイズのほうが、インパクト&クオリティは格段に上です。

 表面は慎ましいけど心は強い、というちょっと古風な日本女性みたいなティッシュを演じたキキ・レインは、パワフルで自己主張が強い黒人女性の中にあって、おとなしやかではかなげなところが返って独特な魅力に。不安そうな表情や瞳が印象的でした。ファニー役のステファン・ジェームズは、カッコカワいいイケメン!優しそうでナイーヴそうなところが役に合ってました。ラブシーンで見せる肉体美も眼福です。でもファニーは別に肉体労働もスポーツもしてない芸術家肌の青年なのに、なぜあんなに肉体美?キキちゃんもちゃんと脱いでましたが、愛し合うシーンで生まれたままの姿になるのは当然。不自然な隠し方をするウソくさいセックスシーンなら、ないほうがいいです。
 善い白人役で、ディエゴ・ルナとデイヴ・フランコがチョイ役ながら爽やかな好演。ムーンライト同様、映像の美しさもこの映画の魅力。どこかアンニュイで冷ややかだったムーンライトに比べると、色彩は華やかになってました。ティッシュら女性たちのファッションが可愛くておしゃれ!今にもミュージカルになるのでは?な音楽の使い方、センスも抜群です。

 ↑ 若手黒人俳優の中では、今後の活躍が最も期待されるステファン。とにかくカッコカワイくて何着てもオシャレに見える!新作は何と!これまた大好きなチャドウィック・ボーズマン主演作“21 Bridges”!二人を同じ画面で見られるなんて、幸せすぎる!日本公開が楽しみ(^^♪
コメント
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